読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

ウルトラマンと人間との相互理解を、エキサイティングかつ感動的に描いた『シン・ウルトラマン』

2022-05-15 20:35:00 | 映画のお噂


『シン・ウルトラマン』(2022年 日本)
監督=樋口真嗣 
総監修・脚本=庵野秀明 准監督=尾上克郎
製作代表=山本英俊 製作=塚越隆行・市川南・庵野秀明
撮影=市川修・鈴木啓造 音楽=宮内國郎・鷺巣詩郎
出演=斎藤工・長澤まさみ・有岡大貴・早見あかり・山本耕史・田中哲司・西島秀俊
(5月15日、アミュプラザ宮崎・ワンダーアティックシネマにて鑑賞)


日本の各地に出現し、社会に甚大な被害と脅威をもたらす存在となった巨大不明生物=禍威獣(カイジュウ)。その対策にあたるべく、5名の専門家によって組織された「禍威獣特設対策室」、通称「禍特対」(カトクタイ)の一員である神永新二は、電気を吸収して自らを透明化する禍威獣・ネロンガの襲来から逃げ遅れた少年を身を挺して守る。すると、突如飛来してきた赤い球から、銀色の巨人が姿を現した・・・!

あの大ヒット作『シン・ゴジラ』(2016年)を手がけた、樋口真嗣監督と庵野秀明さんが再びタッグを組んで創り上げた『シン・ウルトラマン』。コロナ騒ぎによって公開が伸び伸びとなっておりましたが、ようやくおととい(5月13日)から公開の運びとなりました。公開後最初の日曜日となる本日(5月15日)、ワクワクしつつ観に行ってまいりました。
待たされた甲斐はあったといえましょう。いやあもう実に面白かったのなんの!!
オリジナルの初代『ウルトラマン』(1966〜67年)から選ばれた5つのエピソードをベースにしながらも、それらを現在の視点や社会状況から再構築して、リアルで見応えのある映画にまとめ上げた樋口監督や庵野さんには、ただただ拍手喝采したい思いであります。

スタッフ陣はもちろんのこと、キャスト陣も好演でした。
ウルトラマンに憑依される主人公・神永を演じた斎藤工さんや、その「バディ」的存在である浅見を演じた長澤まさみさん、天才的な物理学者にしてオタクでもある滝を演じた有岡大貴さん、明るく前向きな生物学者・船縁を演じた早見あかりさん、そして凛々しさと人間味を併せ持ったリーダー・田村を演じた西島秀俊さん・・・それら「禍特対」のメンバー5人は、とても個性豊かで魅力的。彼ら彼女らに導かれることで、物語にスッと入っていけました。
キャスト陣ではほかに、地球侵略を目論む外星人「メフィラス」の人間体を演じた山本耕史さんも良かったですねえ。腹に一物も二物もありそうな風でありながらも、紳士的でどこか憎めない感じがする絶妙な芝居で(神永=ウルトラマンを懐柔しようとするくだりは傑作でした)、実に上手いなあと思いました。

登場するウルトラマンや「禍威獣」の表現のほとんどはCGでしたが、着ぐるみを使った特撮では不可能なダイナミックな動きが盛りこまれていたりして、総じて良くできていたように思いました。
最新の技術が駆使される一方で、オリジナルでウルトラマンのスーツアクターを演じた古谷敏さんの動きをモーション・キャプチャーで取り込んでCGのウルトラマンの動きに活かしたり、光学作画の第一人者である飯塚定雄さん(オリジナルの『ウルトラマン』でもスペシウム光線などを作画したほか、東宝特撮映画の光学作画でも活躍された特撮界のレジェンドです)が描いた手描きのスペシウム光線をデジタルで取り込んだり・・・と、過去の技を現代の技術に活かす工夫もなされているあたりが、アナログ特撮を愛する人間としては嬉しいところでありました。
過去のシリーズを観ている人間が、思わずニヤリとしてしまうような小ネタ(立て続けに出現したパゴスとネロンガ、そしてガボラの類似点に言及するくだりなど)が散りばめられているところも、まことに楽しかったですねえ。

SF特撮映画としてはもちろん、異質な存在同士の相互理解の物語という側面にも、惹かれるものがありました。
わりと早いうちから、ウルトラマンと人間が親密な関係となるオリジナルのシリーズとは対照的に、本作におけるウルトラマンと人間との関係性には一定の距離感が存在します。人間の側は、ウルトラマンが自分たちにとって「味方」なのか「敵」なのかを見極められずにおりますし(そのくせ、自分たちに有利となるように利用しようとしたりもするのですが)、ウルトラマンのほうも人間たちを守りながら、その人間たちをどこか冷めた視点で捉えていたりします。
それが、「禍特対」の個性豊かな面々との関わりの中で徐々に変化していき、最後に現れた強大な敵に、ウルトラマンと人間たちが知恵と力を合わせて立ち向かおうとする終盤の展開は、なかなかエキサイティングかつ感動的でありました。
異なる存在といかに共存すべきなのかという問題は、目下の日本、そして世界にとっても大きなテーマとなっています。そのことを思うと、本作に込められたメッセージがじんわりと、心に響いてまいります。
(ちなみに、最後に現れる「強大な敵」が、オリジナルとはまったく違った設定のもとで出現したのには、「おお、そうきたか〜」と唸らされました)
まあ欲を言えば、もう少し掘り下げてほしかった部分もないわけではありませんでしたが、わたしとしては大いに満足できる作品でありました。

『シン・ゴジラ』同様、深読みしようと思えばいくらでもできそうな作品ではありますが、それはアタマが良くて知識も豊富な評論家や「知識人」にでもお任せするといたしましょう。わたしとしては、一本の映画として面白かっただけで十分であります。

鑑賞後は映画の余韻に浸りつつ、映画館のあるアミュプラザ宮崎の近くにある居酒屋さんで昼食かたがた、久しぶりの昼呑みを楽しんだのでありました。揚げたてアツアツの唐揚げが美味かったねえ。









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2 コメント

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Unknown (ウルトラマンZ)
2022-05-16 00:15:33
同じくシンウルトラマンに感動・感激した一人。
ただ惜しむらくは、メフィラスがウルトラマンとの戦いを止めた理由が、オリジナル版とは違い別の理由だったこと。「よそう。宇宙人同士戦っても仕方ない。私が欲しかったのは地球人の心だったんだ」多分こんなセリフだったと思うけど、これは外して欲しくなかった。
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Unknown (miyazaki8007kankodo)
2022-05-16 07:37:01
まさにわたしも同感でして、メフィラスが唐突に戦いを止めた理由を、もう少し掘り下げてもらいたかったなあ、と。映画における、ややあっけない片付けかたは少しだけ残念でしたね。映画のラストも、もう一芝居だけあっても良さそうだった気が。とはいえ、映画自体にはとても満足しております。
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