読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

宮崎キネマ館、5月のドキュメンタリー映画3連打に瞠目せよ!

2014-04-29 22:33:10 | ドキュメンタリーのお噂
宮崎市内中心部にある映画館、宮崎キネマ館。小さいながらも通好みの良作を上映してくれるこの映画館は、ドキュメンタリー映画の上映にも前向きに取り組んでおられます。
そのキネマ館、来月5月にドキュメンタリー映画の話題作3作品を順次公開していくというので、ちょっと気持ちが高揚しております。なので、当ブログでもぜひ、このキネマ館ドキュメンタリー映画3連打について伝えておきたいと思います。

まず今週末、5月3日から上映が始まるのは、『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』です。先だってのアカデミー賞、長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品であります。

マイケル・ジャクソン、ミック・ジャガー、ブルース・スプリングスティーン、スティング、デヴィッド・ボウイなどなど、錚々たる顔ぶれと共演するような実力を持ちながらも、その存在がクローズアップされることもないバックシンガーの女性たち。運命に翻弄されながらも、歌と音楽を愛し続けた彼女たちにスポットライトを当てた作品です。
いわゆる「縁の下の力持ち」的な存在の、秘められたドラマと生き方というものには惹きつけられるものがありますので、本作にもすごく興味があります。観るのが楽しみです。

続いて、5月17日から始まるのが、『アクト・オブ・キリング』です。

1960年代にインドネシアで行われたという100万人規模の大虐殺。その実行者で、いまも「国民的英雄」として暮らしている人物たちに、映画の作り手はその虐殺を再演するように持ちかける。初めは嬉々としてそれを演じていた彼らであったが•••。
世界中の映画祭で大きな反響を呼び、日本においても話題を呼んでいるこの問題作が、まさかこの宮崎で公開されるとは、と驚いております。おそらく、観ることにエネルギーを要するであろう、恐ろしくも重いテーマの作品なのでしょうが、これはなんとしても観ておきたいと思っております。

そして、5月24日から上映されるのが、『ある精肉店のはなし』です。

大阪にある精肉店の家族を通して、命を食べて生きている人間という存在、そして命の本質を見つめていくという作品。監督は『祝(ほうり)の島』の纐纈(はなぶさ)あやさん。本作も、キネマ旬報文化映画ベストテンの2位に選ばれるなど、高い評価を得ている話題作であります。こちらもやはり、外すわけにはいきませぬ。
なお、公開初日には、纐纈監督を招いてのトークショーが開催されるとのことです。

これだけのプログラムを組むという宮崎キネマ館、やっぱりやるなあ、と拍手パチパチものなのでありますよ。こちらとしても、このチャンスを逃さないよう、3作品すべてを観ておきたいと思います。
上映の日程やスケジュールなどの詳細については、ぜひ宮崎キネマ館のサイトをチェックしてみてくださいませ。



【読了本】『スキマの植物図鑑』 逞しくてしたたかな、植物の生存戦略に感心させられる一冊

2014-04-29 21:24:10 | 本のお噂

『カラー版 スキマの植物図鑑』
塚谷裕一著、中央公論新社(中公新書)、2014年


ブロック塀や石垣の間、路肩のアスファルトの割れ目、電柱の根元•••。街中には、そんな「スキマ」に根を下ろして成長し、花を咲かせている植物たちが多くあります。ですが、普段はなかなか、そんな植物たちの存在を意識してみることはなかったりいたします。
そんな街中の「スキマ」で、目立たないながらも健気に、逞しく生きている植物たち110種を、オールカラーの写真とともに簡潔に紹介していくのが、本書『スキマの植物図鑑』です。

ちょうど今の時期にあちこちで目にすることができるであろうスミレ類をはじめ、ドクダミやヒメヒマワリ、ヒガンバナ、ススキ、ナンテンといったお馴染みの植物も多く取り上げられていますが、至るところで目にしているにもかかわらず、本書で初めてその名を知ったものもたくさんありました。
生粋の野草も多々あるのですが、中にはキンギョソウやフレンチマリーゴールド、ペチュニア、ゼラニウムなどの園芸植物や、ニガウリやトウガラシといった食用野菜が野生化し、スキマを見つけて根を下ろしているケースもありました。旺盛すぎる繁殖力で嫌われものになっているセイタカアワダチソウも、もともとは観賞用として導入された外来種なんだとか。
さらには、キリ(桐)やクロマツといった樹木が、電柱の根元や民家の雨樋といったスキマを住処に選んでいたりするのです。沖縄で撮影された、コンクリート塀の亀裂から芽生えているガジュマルの写真も。
植物たちが根を下ろす「スキマ」も実に多様です。塀のスキマや、道路のアスファルトの亀裂、屋根瓦、雨樋、果ては放置されたトラックの荷台を住処に選ぶツワモノまで。
面白いケースでは、普通なら砂浜に分布している種類にもかかわらず、海辺からやや離れた市街地のスキマに生えているハマエンドウなんてのも。ビックリしたのは、ブロック塀の中で固められたような状態になっている切り株から(ブロック塀と切り株の間にはコンクリートまで詰められている!)、塀とのスキマを縫うようにして芽を出しているエノキの写真でありました。なんという逞しさ!
一見、なんともか弱い外見でありながら、固いコンクリートやアスファルトにも負けずに根を下ろすという、植物のパワーには目を見張らされるものがありました。

広々とした場所で生えれば良さそうなものなのに、なんでわざわざそんなせせこましいスキマを住処に選ぶのか?そんな疑問がしてきたりもするのですが、実はスキマとは植物たちにとって「居心地の良い、幸福な場所」で「楽園」なのだ、と著者はいいます。
それはなぜなのか。著者は「あとがき」でその理由を説明します。いったんスキマに入り込めば、光合成をするために必要な太陽光を得るために、他の植物との間の競争をせずにすみ、「そのあたり一帯の陽光を独り占めできる利権を確保」できる、というのが、その大きな理由。その上、アスファルトにより水の蒸発が抑えられたり、雨水が割れ目に流れ込んだりもして、水も「独り占め」にできる、と。なるほど、それは確かに「天国」のような環境だよなあ。
競争を避けることにより得られる、天国のような環境•••。その話で思い出したのが、ビジネスの世界で言われている「ブルー・オーシャン戦略」であります。
「ブルー・オーシャン戦略」とは、血で血を洗うような戦いが繰り広げられている「レッド・オーシャン」(赤い海)のような既存の市場を抜け出し、未開拓の市場「ブルー・オーシャン」(青い海)を生み出すことで競争自体を無意味にする、という戦略のこと。それと似たような形で、植物たちも競争を避けることにより、快適に生きていくことができているというわけなのです。
(ブルー・オーシャン戦略については、W・チャン・キム+レネ・モボルニュ著『ブルー・オーシャン戦略』ランダムハウス講談社、2005年刊を参照)
植物の生き方は、人間のそれとはちょっと違う、ということを著者は言っておられるので、人間の生き方やらビジネスやらに安易になぞらえてしまうのもいささか気が引けるものがありますが、それでも植物たちのしたたかな生存戦略には、なんだかある種の示唆を感じてしまったのであります。
示唆を感じたといえば、あまりにも繁殖力が強くて丈夫であるがゆえに、「園芸植物から帰化植物へと地位が転落した」セイタカアワダチソウについて、著者はこのように書きます。

「園芸植物として、丈夫なことは良いことだが、度を越して繁殖力が旺盛というのは、かえってマイナスなのである。」

ううむ。これもなんだか、どこかニンゲン界においても教訓となりそうなお話なのではないか、と思ってしまうのでありますよ。
とはいえ何より、目立たないように生えている一つ一つの植物が、実はそれぞれに個性を持っている存在であることを、本書は教えてくれました。
そうかあ、みんなこんなにも個性的で面白くて、しかも逞しくて賢い存在だったんだなあ。それなのに、いままでろくに目もくれていなかったなあ•••すまぬすまぬ。
わたくし、本書に向かって思わず、首(こうべ)を垂れたい気持ちになってきたのでありました。

本書は新書ということで、行楽や散歩の友として持ち歩くにもちょうどいいサイズ。街歩きの新たな楽しみも広がりそうです。
今は花を眺めるのには良い時期ですし、本書を手にしながら、目立たないスキマで頑張って生きている植物たちを観察したくなってきました。




左巻健男さん、田中一樹さん、拙ブログのご紹介ありがとうございます!

2014-04-25 21:04:46 | 雑誌のお噂


先日、季刊『理科の探検』(RikaTan)春号の特集「ニセ科学を斬る!」を、拙ブログにてご紹介させていただきました。

4月20日更新記事
【雑誌閲読】季刊『理科の探検』(RikaTan)春号 特集「ニセ科学を斬る!」

この記事を、なんとRikaTan誌の作り手であるお二方が、それぞれのブログで紹介してくださいました。一人はRikaTanの編集長であり、理科教育や科学リテラシーをご専門にしておられる左巻健男さんであります。

samakitaの今日もガハハ
理科の探検(RikaTan)誌春号「ニセ科学」特集の感想:宮崎市の外商専業書店に勤務の閑古堂さん

わたくしの拙ブログを、かなりのスペースを使って紹介してくださっており、なんだかこっぱずかしくて恐縮してしまうのですが、すごくありがたいことでありました。
もうお一人は、RikaTanの編集委員であり、やはり理科教育をはじめとした教育方面に携わっておられる田中一樹さんです。

わや...だべ
著者・発行者を元気にさせてくれる書評

こちらも、記事につけられたタイトルに恐縮しつつも、とても嬉しい気持ちになりました。
一読して「これはぜひとも多くの方に読んでもらいたいからブログでしっかりと紹介せねばいかん!」という思いのまま、一気に書き綴った記事だっただけに、こうして取り上げていただいたことはわたくしにとっても嬉しいことでありました。
そして、わたくしのつたない記事が、雑誌の作り手の皆さまにとって少しでも励みになるようなものがあったとすれば、さらに嬉しく思います。

洪水のように情報が溢れ、流れていく中にあって、自分が伝えたいこと、シェアしたいことを皆さまに届けるということ自体、実はそうそう容易なことではないんだな、と実感しております。
それだけに、発信したことがこのような形で共有されたことには、わたくし自身にとっても大いに励みになりました。
ああ、地道に発信を続けていてよかったな、としみじみ感じるばかりです。

左巻さんと田中さんには、あらためてこの場をお借りして御礼申し上げます。どうもありがとうございます。
これを機会に、RikaTanとその特集がさらに広く読まれることになればいいなと願っております。







地方の一高校生が見た『知られざる世界』伝説 (下)

2014-04-25 21:04:18 | ドキュメンタリーのお噂

かつて、日本テレビ系列で放送されていた伝説のドキュメンタリー番組『知られざる世界』とはいかなる番組だったのか、ということを、わたくしの高校時代の日記を引用しつつ振り返っていこうという続きものの最終回であります。前回でおしまいにするハズが、3回も引きずるハメとなってしまいました。
こういう妙な続きもので3回もブログを書くとは、我ながらどういうことだか、と呆れるばかりでありますが、時にはこういう妙なことに情熱を燃やすような青春というのもまた良し、ではないかな、と(もう青春だとかいってるようなトシぢゃないだろ、オマエ)。
日記からの引用は、このような斜体文字 で記します(誤記も含めてすべて原文どおりです)。また、宮崎では日本テレビと同時ネットで放送されておりましたので、放送月日はすべて日曜日であります。

1986年(つづき)

8月3日
10時から「知られざる世界」を見た。カツオの四季の追跡レポート。一本釣りのサオさばきは見事であった。


8月10日
10時から「知られざる世界」を見た。先週のカツオに続いて今日はサンマの四季の追跡レポート。


8月17日
10時から「知られざる世界」を見た。食物が消化器で消化される過程を、消化器の働きを説明しながらカメラで追っていた。胃袋や腸などの内部をカメラでとらえた画面は、不思議といおうか不気味といおうか。


8月24日
10時から「知られざる世界」を見た。アメリカの一夫多妻主義者のこと。そのなかの一人なんざ、なんと子孫を400人もかかえていた。しかも、複数の妻たちが協同生活を営んでいるのである。どの妻も、意外とサバサバしているのには驚いた。ある一夫多妻主義者は、「次々と愛人を変える人はいけない。いっぺんに何人かと結婚したほうが良い」と言っていたが、どっちにしろ女好きであることに変わりないと思うのだが。余談だが、リポーターの友杉祐子さんが美人だった(何を見ているんだ、おれは!)。


そうか、リポーターのおねえさんが美人だったか、高校時代のオレよ(笑)。•••あゝ、あらためてこの企画、やるんじゃなかったかも、という後悔がフツフツと(苦笑)。それにしても、なんでわざわざこういうテーマ選んでたんだろうなあ、番組のほうも。

8月31日
10時から「知られざる世界」を見た。首都防災のこと。レポーターの人と数名の住民が、自分たちの避難場所へ行こうとして迷ってしまい、最後にレポーターだけが一時間以上かかってようやくそこに着いた、という一幕があった。これでは大いに困る。


9月7日
10時から「知られざる世界」を見た。火山に挑む科学者のこと。硫酸の火山湖にゴムボートを浮かべて調査する学者の姿も出たが、さぞ生きたここちがしないだろう。


「硫酸の火山湖」というのは、果たしてどこのだったのかなあ。肝心のそういう情報は記さずに、また妙なところの印象だけはしっかり記してやがるからなあ、ったく。

9月14日
10時から「知られざる世界」を見た。カッパに関するレポート。カッパというものは、しいたげられた昔の民衆の暗部から生まれたものという。


こういうカッパの背景というのも、深掘りしていくとなかなか面白そうなものがありそうなのですが•••これもどちらかというと民俗学方面だよなあ。

9月21日
10時から「知られざる世界」を見た。心臓について。心臓内をカメラでとらえた映像はすごかった。


なんかこういう「身体の内部をカメラで覗く」的な趣向がやけに多いような気が。これで3回目ですよ、半年余りで。

10月5日
10時から「知られざる世界」を見た。人間の表情について。


10月12日
10時から「知られざる世界」を見た。今回はいつもの科学からはなれて、女性を美しくする方法についてのレポート。


•••いやいや、ここまでを振り返ってもちょこちょこ、科学からはなれたテーマをやっとるぞ、この番組は。

10月19日
10時から「知られざる世界」を見た。日本の食卓に欠かせないアジやエビ、アサリといったものが、実は東南アジアでとれているのだ、という話。


おお、これはなんだか村井吉敬さんの『エビと日本人』(岩波新書)のようなテーマみたいですね。

10月26日
10時から「知られざる世界」を見た。「世界を食べる日本」の後編。ウニはもちろんのこと、日本髪のカツラやわりばしまでが東南アジア製とは初めて知った。


11月2日
10時から「知られざる世界」を見た。幻の香料ジャコウのこと。


11月9日
10時から「知られざる世界」を見た。ビルマのカレン族の独立戦争のこと。カレン軍がビルマ軍の不発弾を再利用しているのがなんともいえなかった。


ああそうだった、この頃はまだ「ミャンマー」なる国名ではなかったんでしたね。それにしても、これはもうすっかり科学からは離れてしまっているよなあ。

番組についての日記の記述は、これ以降見られなくなります。この1ヶ月あまり後、番組は11年9ヶ月にわたる歴史に終止符を打ったのでした。

こうして振り返ってみるとこの番組、科学を主なテーマにしていたとはいえ、個々の内容は実に雑多だったんだなあという印象を受けました。民俗学があったり超自然があったり、果ては社会派もありで。とはいえ、これはあくまでも番組末期のラインナップであり、これをもって番組の全体像を決めつけるわけにはいかないわけなのですが。
ただ一つ言えるのは、当時のわたくしはこの番組を観続けたことで、科学をはじめとするさまざまなテーマへの関心を広げることができたんだなあ、ということです。そのことは間違いなく、今のわたくしの基礎をつくる上で役に立ってくれたのではないか、としみじみ思うのです。

思えば、わたくしの小学生から高校生にかけての頃には、民放テレビでもけっこう、良質で面白いドキュメンタリー番組を放送していたものでした。
(上)のはじめのほうでも触れた『すばらしい世界旅行』や、やはり日本テレビ系列で放送されていた『驚異の世界』、MBS/TBS系列の『野生の王国』•••。これらの番組からも、多くの驚きや好奇心を与えてもらったように思います。
これらの番組も終了して久しく、同じ時間帯のテレビは今やバラエティばかりとなってしまっております。ちょっと寂しい限りであります。

上のような番組群を観て育ったためか、まだ知られていないような世界や自然の驚異を伝えるような博物学的なドキュメンタリーが、いわばドキュメンタリーの「王道」なのではないかとの思いが、わたくしの中にはあります。
もちろん、ドキュメンタリーにはさまざまなテーマや分野のものがあるわけであり、それぞれならではの見どころや興味深さがあります。
社会の問題や矛盾をするどく抉るような報道系・社会派のドキュメンタリーは、やはりドキュメンタリーにおいては外せない大事な分野でしょう(ちなみに、高校時代には『NHK特集』や、TBSの『報道特集』あたりも一生懸命観ていて、それらの内容についてもせっせと日記に綴っておりました)。また、人間の営みや喜怒哀楽をじっくりと見つめてつくられたヒューマンドキュメンタリーも魅力的です。
その中にあっても、ニンゲンにはまだまだ未知の世界があるのだよ、ということを驚きとともに教えてくれるような博物学的ドキュメンタリーには、今なお惹きつけられるものを感じるのです。
交通機関や通信手段の飛躍的な進歩により、人類にとってまったくの未知の世界というものは狭まっていることでしょう。とはいえ、見出されることなく眠っている未知の世界はまだまだあるはずです。いや、むしろテクノロジーが進歩することで、さらなる未知と驚異の世界を見出していくことができるのではないでしょうか。
博物学的ドキュメンタリーにも、まだまだ出番はあるぞ、と思うのであります。

博物学的なドキュメンタリーの価値と面白さが再認識されるとともに、この『知られざる世界』という番組についても、さらに多くのことが明らかになることを願いたいところであります。







地方の一高校生が見た『知られざる世界』伝説 (中)

2014-04-23 23:01:03 | ドキュメンタリーのお噂


かつて日本テレビ系列で放送されていた、主に科学的なテーマを扱っていたドキュメンタリー番組『知られざる世界』とは、一体どんな感じの番組だったのか?ということを、わたくしの高校時代の日記を引用しつつ振り返ってみよう、という記事の後半であります。
前半を書いていて、これは単に高校時代のオノレのバカぶりを白日の下に晒すだけのことなのではないのか、との思いがフツフツと湧いてきたのでありましたが、もうあれだけ書いたのだから今さら止めたところで仕方がありませんし、このまま最後まで突っ走っていこうと思います。
まあ、(上)同様どなたかのお役に立てるとも思えないような駄記事になるかとは存じますが、よろしければご笑覧いただければ幸いであります。
日記からの引用は、このような斜体文字 で記します(誤記も含めてすべて原文どおりです)。また、宮崎では日本テレビと同時ネットで放送されておりましたので、放送月日はすべて日曜日であります。

1986年(つづき)

3月8日
10時から「知られざる世界」を見た。人間の消化器のはたらきをわかりやすく解説していた。特に口の中や食道、胃の中をカメラで撮影した映像はすごかった。また、番組の中で、おいしそうなフランス料理が出てきて食いたくなった。


またも、せっかく番組を見ておきながら、別のことに気を取られたりしておるわ、フランス料理に(苦笑)。

3月16日
10時から「知られざる世界」を見た。男女の性について。精子は一日に2億匹生まれ、そのうちの一匹だけが生き残って卵子と結合する。この世界もなかなかキビしい。


3月23日
10時から「知られざる世界」を見た。韓国と日本のチャンスン(トーテムポールに似た道祖神のようなもの)伝説のレポート。東北かどっかの田舎で今もつくられているわら製のチャンスンは、あれがやたらでかかった。


「あれ」の部分には傍点打った上に、ごていねいに赤線まで引いてやんの(苦笑)。ほんっと、高校時代のオレってバカ。でも、これも科学というより民俗学という感じのテーマだよなあ。

3月30日
10時から「知られざる世界」を見た。オーストラリアの原住民アボリジンの現状のレポート。かつては狩猟民族だったアボリジンにも、近代化の波はおしよせていた。


「アボリジン」とはいうまでもなく「アボリジニ」のことですね。

4月6日
10時から「知られざる世界」を見た。西表島の動物たちのこと。ヤエヤマオオコウモリはかなりでかいコウモリで、こちらのほうはなんとなく愛敬があったが、洞窟の中にいた小さいコウモリは不気味だった。蟻道をつくるシロアリの生態もおもしろかった。


4月13日
10時から「知られざる世界」を見た。イギリスの高速道路のそばに住むいろいろな動物の生態の話。ノネズミやアナグマ、ヤゴ、トゲウオ、アリ、ハチ、ハエなどの小動物が、うまいぐあいに高速道路の環境に適応しているのが興味深く、おもしろく、また考えさせられた。トゲウオが、高架道路の下の運河(現在は使われておらず、水底にはゴミがいっぱいであった)の底にベッドをつくり産卵する様子はおもしろかった。


この、高速道路のそばに生きる動物たちを扱った回、なんだかもう1回観てみたいような気がしますね。面白そうです。

4月20日
10時から「知られざる世界」を見た。日本や太平洋側のアメリカ沿岸などの環太平洋火山帯は、以前南のほうにあったパシフィカ大陸が、だんだんと北上、分裂し、大陸にぶつかってできた、という興味深い話だった。マントル対流のあとや、海底だった場所が陸上にあるのはおもしろい。


5月4日
10時から「知られざる世界」を見た。ベニスの地盤沈下の話。近年のベニスは地盤沈下がひどく、一階はもはや住めなくなっているという。また、高波の害もひどく、去年は死者も出たという。もともとベニスの地盤はかなり軟弱だとか。そんなところに住むのが本当はまちがっているのだ。


「そんなところに住むのが本当はまちがっているのだ」って。言うに事欠いてそこまで言うこたないでしょ、ああた。

5月11日
10時から「知られざる世界」を見た。人間の体温調節についてのこと。


5月18日
10時から「知られざる世界」を見た。ネコの生態のこと。


5月25日
10時から「知られざる世界」を見た。温泉の効能を科学していた。リュウマチで歩くのがおぼつかなかったおばあさんが、温泉で2週間療養したらしっかりと歩けるようになっていたのはすごい。こういった温泉の効能は、ラジウムやゲルマニウムによるものという。


ううむ。いま思うに、2週間程度の療養で、そこまで劇的に変わるもんかねえ、という気が少々。

6月1日
10時から「知られざる世界」を見た。アメリカのステレという居住区は、2000年に地球に大異変が起こり人類の90%が滅亡する、というある博士の予言を信じる人々が百人余り集まってつくった居住区だが、生き残るためのさまざまな科学的施設があるほか、教育施設、小さい電話局などがあるというすごい所。前述の予言、ぶっそうな予言だが全く信じないわけにはいかないようだ。しかし、そんな事起こってほしくはない。


•••で、2000年に人類の90%が滅亡する、という「ぶっそうな予言」は見事にハズレて今に至るわけですが、大マジメに信じていた「ステレ」の住人の皆様は、今も達者に暮らしておられるのでありましょうか。

6月8日
10時から「知られざる世界」を見た。5日間にわたってタバコを吸いながら、タバコがやめられるという禁煙コースのレポート。せまい部屋の中で1時間ほど、タバコをたくさん、何本もふかすのである。中は煙でもうもう。なるほど、これを5日も続けりゃ、タバコもイヤになるだろう。5日コースが終ると、質素な「卒業式」をするところがなんともいえない。ぼくはタバコなんぞ吸うつもりはないので、そんな苦労はしなくてもすむ。


で、今に至るもわたくしはタバコを吸うことはなく、禁煙との闘いという苦労は味わわずにすんでおります。

6月15日
10時から「知られざる世界」を見た。ブラジルの心霊手術のレポート。ブラジルのある医者に、死んだこれまた医者の霊魂がのりうつって、週に一日だけ心霊手術を行うという。「人間と霊界を結ぶため」と称してケツや目に針を刺すところにはゾクっとした。痛くないのだろうか。心霊手術の場面はたしかにすごかったが、「これはひょっとしたら特殊メイクかもしれんな」とかんぐった。


ほーら出てきたぞ出てきたぞ、心霊手術が(笑)。とはいえ、面白がって観ながらもどこか「かんぐって」いるふしが窺えるあたり、何も知らないウブなショーネンだったわたくしも、ちっとは学習してきていたのでしょうか。
思えば、当時は特殊メイクを駆使したホラー映画、スプラッター映画がいろいろ溢れるようになっていた時期で、わたくしもそのテの映画をたくさん観ていました。それゆえ、「特殊メイク」なるコトバを持ち出していたのでありましょう。

6月22日
10時から「知られざる世界」を見た。植物と虫の静かな戦争について。葉を虫に喰われた木が、有害物質を出して自分を守るだけでなく、何らかの方法によって他の木々にも危険を知らせて、同じ有害物質を出させる、というメカニズムには大いに驚いた。


6月29日
10時から「知られざる世界」を見た。酔っぱらいの心理について。


7月6日
10時から「知られざる世界」を見た。富士山のさまざまな角度からのレポート。神社と国の間での山頂所有権紛争のことがあったが、雄大な自然のものである富士山の山頂を、あさましい人間どもが所有権うんぬんというのは実におこがましい。


「人間ども」は「実におこがましい」って。今にして思えば気恥ずかしくなるような、この上から目線。いわゆる若気の至りってやつだったのでありましょうから、どうか許してやってくださいませ。もう2度と言いませんから。

7月13日
10時から「知られざる世界」を見た。女性の下着の歴史。むかしのヨーロッパのコルセットは、主に上流階級が使っていたものだが、かなりきついものだったようで、腰の骨に変形をきたしたという。


7月20日
10時から「知られざる世界」を見た。アルプス山中に住むアカヤマアリの生態。彼らは、実にうまい仕組みで森を守っていた。しかし、ウジャウジャと群れをなすアリは少々気色悪かった。


7月27日
10時から「知られざる世界」を見た。カナダで開かれている交通万博のことと、そこでも話題になっているリニアモーターカーのこと。この交通万博には、前述のリニアモーターカー(450mをノロノロと走る)のほか、宇宙ステーションや、日本の都市における交通状況を表したミニチュア(この出来がすごい。ミニカー《トミカのようだった》が走り回り、新幹線などの鉄道もガーガー走っていた)などがあり、面白そうだった。


上の文章ではいささかわかりづらいのですが、おそらくは交通万博の日本パビリオンにおける展示のことを綴っていたものと思われます。それにしても、かつては夢のまた夢であったリニアモーターカーも、もう実用段階まできてるんだよなあ(遠い目)。

ああ、こうして書き出しているとまたも長くなってきましたね。これはあと1回費やさなければいけなくなりました。
あまり熱心には観ていなかった1985年から一転、86年はけっこう熱心に『知られざる世界』を観ていたようでした。この頃は、科学的な事柄に興味関心が向いてきていた時期で、それゆえ番組も熱心にフォローしていたということなのでしょう。
何はともあれ、この続きはまた次回に。