読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

アミュプラザみやざき「みやざきワイン博覧会2023」で、深まりゆく秋を満喫いたしました。

2023-10-22 20:32:00 | 美味しいお酒と食べもの、そして食文化本のお噂
アミュプラザみやざき前のアミュひろばにて、先週の20日から3日間にわたり開催された「みやざきワイン博覧会」。宮崎県内のワイナリーが一堂に会し、美味しい食べものとともにワインをたっぷり味わえるという、呑み助にはまことに嬉しいイベントであります。最終日であるきょうのお昼、わたくしめも行ってまいりました。
宮崎の美味しいものをフィーチャーするイベントを、積極的に開催しておられるアミュプラザみやざき。8月には、宮崎県下のクラフトビールと美味しいものを満喫する「みやざきクラフトビール博覧会」という、これまた呑み助垂涎のイベントも開催しておりました。・・・もちろんわたくし、そちらのほうにも馳せ参じました。
(下の画像2枚はその「クラフトビール博覧会」のときのものでございます)



「みやざきワイン博覧会」に集まったワイナリーは6ヶ所。そのうち最低でも4ヶ所は味わいたいという目標のもと、午前11時のオープンとともに会場に入りました。
会場内には、参加した6ワイナリーのブースが並び、グラス売りはもちろんボトルでの販売も行っておりました。そして、さまざまな食べものを販売するブースやキッチンカーも。
まずはなにか食べものを・・・ということで、「炭焼串酒場 ばんさん」というお店のブースであらびきソーセージを購入。お店の若いおねえさんたちがなかなか楽しい人たちで、わたしのカオを見ながら「めっちゃ嬉しそうですね〜」などとおっしゃいます。よほど、期待感に満ちあふれた表情になっていたのでありましょう(苦笑)。宮崎市の繁華街にある、わたしがよく通う大衆酒場のすぐそばにあるお店とのことで、一度寄ってみたい気になりましたねえ。
そして1杯目のワインを。まずは、宮崎ワインの代表格といえる「都農ワイン」のブースに立ち寄り、「今年の新酒ですよ」と教えていただいた「マスカットベーリーA」を選びました。

美しいルビー色と、スッキリとした辛口の味わいがまことにみずみずしく、まさに秋を感じる至福の一杯。ソーセージをおともにしつつ、じっくりと堪能いたしました。
お次は、宮崎県北の「五ヶ瀬ワイナリー」から「ナイアガラ」を。

ほのかな甘みがなんともフルーティで、飲み飽きることなく何杯でも飲めそうな逸品。これまた、至福のひとときを与えてくれました。
よーし、これはまだまだいけそうだぞ、ということで3杯目を。綾町の大手酒造メーカー・雲海酒造の「雲海ワイン」から「デラウェア」をチョイス。

甘味と酸味のバランスがいい「デラウェア」は、雲海ワインの中でもお気に入りの銘柄。明るい金色がまた、いい感じなんですよねえ。
ここいらで2つめのおつまみとして、こちらも宮崎市の繁華街にあるバル「Coco Bowls」のブースで、赤身肉のローストビーフ・赤ワインソースを買ってまいりました。

脂っこさがなくて食べやすく、それでいて噛めば旨味がじわじわと口いっぱいに広がってきて、ワインのおともにピッタリであります。
気を良くしつつ4杯目を。雲海ワインと同じく、綾町にある「香月ワインズ」のブースに立ち寄ると、そこにはなんとブドウならぬ日向夏を使ったワインが。これは面白いということで、飲んでみました。

有機栽培された日向夏を使い、無濾過で仕上げたという日向夏ワインは、酸味の中にほろ苦さを感じる、日向夏の果実そのままの爽快なみずみずしさが詰まっていて、なかなかいけました。
綾町にはこういうワイナリーもあったんですねえ、とブースにいた方に話しかけると、「小規模生産でやってるもんで、あまり知られてなくて・・・」とおっしゃいました。大手だけでなく、「香月ワインズ」のような小規模ワイナリーの存在を知ることができるのも、こういうイベントのありがたいところであります。
4杯飲んでだいぶいい気分になってまいりましたが、まだ飲めそうだったので5杯目に移行することに。宮崎県西部の都城市にある「都城ワイナリー」から、「クマソタケル」という名の赤ワインをチョイスいたしました。

神話の舞台である霧島に近い土地柄ということで、神話に登場する神々からネーミングされている「都城ワイナリー」のワイン。この「クマソタケル」は、ブドウの美味しさが濃厚に感じられるどっしりとした飲み口。まさに、神々の恵みを実感できる一杯でありました。
えーい、こうなったら全ワイナリーを飲み干そう!ということで、残り一つのワイナリーである「小林生駒高原葡萄酒工房」の「シャルドネ」を、締めの一杯としていただきました。やはり県の西部にあるこちらも、今回初めて知ったワイナリーであります。

キリッとした辛口でありながら、ほのかな酸味とともにフルーティさも感じられるシャルドネは、締めの一杯にピッタリでありました。
・・・ということで、参加6ワイナリーのすべてを制覇いたしました!これも、出かける前に飲んでおいた「液キャベ」のおかげかもしれませぬ(笑)。
最終日の「ワイン博覧会」の会場はけっこう賑わっておりました。周りのほとんどが、カップルや友人同士のグループという中で、悠々と真っ昼間の「ぼっち飲み」を楽しんだわたくしでありました。

帰宅する前になにか食べていこう、ということで、駅の構内にある「豊吉うどん」に立ち寄り、たぬきうどんを食しました。いりこだしの旨味が効いた、昔ながらの宮崎うどんが、ほろ酔い気分のお腹を心地よく満たしてくれました。


美味しいワインと食べもので、深まりゆく秋をたっぷりと満喫することができた、休日のお昼でありました・・・。

『ソース焼きそばの謎』 知的好奇心と食欲を刺激してくれる、食文化本の快著

2023-08-09 21:19:00 | 美味しいお酒と食べもの、そして食文化本のお噂

『ソース焼きそばの謎』
塩崎省吾著、早川書房(ハヤカワ新書)、2023年


鉄板焼き料理の代表格にして、お祭りの屋台における定番の食べものでもあり、そしてカップ麺売り場の人気商品としても身近な存在であるソース焼きそば。それがいつ、どこで生み出され、どのように広まっていったのかを解き明かしていく食文化本です。
著者である塩崎省吾さんは、国内外1000軒以上の焼きそばを食べ歩き、その成果をブログ「焼きそば名店探訪録」にまとめておられる、まさに焼きそば探究の第一人者といえそうなお方です。6月より早川書房から刊行が始まった、「ハヤカワ新書」の創刊第2弾の一冊として刊行されました。
表紙いっぱいのソース焼きそばの写真が、まことにインパクト十分ではありますが、実はこちらは本来の表紙の上に巻かれた「全面帯」。ほら、新刊本の下のほうに巻かれている、宣伝文句や推薦文やらが書かれている、別名「コシマキ」とも呼ばれている「帯」ってのがあるでしょう。あれが表紙一面を覆うカタチになっているのが「全面帯」であります。で、ソース焼きそばがでーんと載っている本書の「全面帯」の下には、ハヤカワ新書の統一デザインである本来の表紙が隠れております。


さて、ソース焼きそばといえば、おそらく多くの人が「戦後に生まれた食べもの」というイメージを持っているのではないでしょうか。かくいうわたしも、ソース焼きそばは戦後まもない頃のヤミ市がルーツなのではないか、というふうに漠然と考えておりました。
ところが、まだ戦前である昭和11年に出版された露天商売開業マニュアル本の中には、古本や小間物、おでんや牛めし、ホットドッグなどといった多種多様な品目に混じって、焼きそばの屋台、それも現在のソース焼きそばとほとんど変わらないものを提供する屋台の開業ノウハウが細かく記されておりました。そこから著者の塩崎さんは、昭和10年頃にはすでにソース焼きそばが存在していた、という仮説を提示します。
では、一体いつ、どこでソース焼きそばは生まれ、どのようにして広まっていったのか・・・?本書は膨大な資料をもとに検証を重ね、ソース焼きそばをめぐる俗説を反証すべく仮説を立て、それを立証していきます。その過程は、まさにミステリーの謎解きといった趣き。ここでキーワードとなっているのが「関税自主権」と「東武鉄道」なのですが、それらをめぐる謎解きも本書の面白さですので、ここでその詳細を記すようなヤボはいたしません。ぜひとも、本書に直接あたっていただきたいと思います。
その謎解きから浮かび上がってくるさまざまな興味深い事実は、読むものの好奇心を掻き立ててくれます。たとえば・・・

「お好み焼きはもともと和洋中のいろいろな料理の模倣、もしくはパロディとして生み出されたものであり、お好み焼きのバリエーションとして作られるようになった焼きそば(ゆえに、味つけは醤油ではなく、お好み焼き同様ソースが使われるようになった)も、そもそもは中国料理の「炒麺」のパロディとして誕生したものだった」

「焼きそばを卵の薄焼きでくるむ「オムそば」も、すでに戦前から存在していた」

「戦後まもない時期に生産されていたソースは、加熱すると添加されていた人工甘味料が変質して苦くなってしまったので、そこからソースを焼きそばに後がけするというスタイルが生み出された」

・・・などなど。小麦粉の需給事情や、小麦粉をめぐる国家間の駆け引きが、焼きそばを含む小麦粉食に与えた影響を検証していくくだりも興味深く、大いに勉強になりました。

本書の後半では、全都道府県におけるソース焼きそば事情が詳細に記されています。そこからは、ソース焼きそばが各地に広まっていくなかで、さまざまなバリエーションが生み出されていたり、地域によってソース焼きそばの普及の度合いには濃淡があったり・・・といった事実が浮き彫りにされていて、ひとつの食文化が伝播していくモデルケースとしても、まことに興味尽きないものがありました。
また、それぞれの都道府県に存在する(あるいは存在した)老舗の焼きそば店・お好み焼き店も網羅されていて、それらのお店で親しまれている多種多様なソース焼きそばの写真も、本書にはカラーでたっぷりと収録されております。具はキャベツかモヤシだけという、昔ながらのシンプルなものから、「富士宮やきそば」や「横手やきそば」などのご当地焼きそば、焼きそばの上にミートソースがかかった「イタリアン」といった変わり種。さらに、中華麺の代わりにうどんを使った「焼きうどん」や、それにホルモンを加えた「ホルモン焼きうどん」・・・。見ていると片っ端から食べたくなってしまいました。
ちなみに、わが宮崎県からは昭和28年創業という宮崎市のお店「にくてんの老舗かわさき」が紹介されているのですが、ここはなんと兵庫県神戸市長田区において「にくてん」と呼ばれているお好み焼き文化を伝えるお店なんだとか。こういうところにもまた、地域を飛び越えた意外な食文化の結びつきが見られて、まことに興味尽きないものがございます。
「かわさき」さんの公式サイトを覗いてみると、焼きそばはもちろんその「にくてん」もなかなか美味しそうであります。一度食べに行ってみようかなあ。

子どもの頃からずっと、身近な食べものとして親しんできたソース焼きそば。その背後に興味深い歴史とエピソードが、それこそ濃厚なソースのごとくたくさん絡みついていることを、この一冊で知ることができました。
知的好奇心と食欲を大いに刺激してくれる、食文化本の快著であります。

先月(7月)末、宮崎市の夏を代表するイベント「まつり えれこっちゃみやざき」が、市街地の中心部で開催されました。コロナ莫迦騒ぎ禍を経て、4年ぶりとなる正式開催。空白の年月のあいだに溜まっていた憂さを晴らすかのように、街はたくさんの人たちで大いに賑わい、楽しさであふれておりました。
わたしもお祭り見物とともに、屋台での買い食いを満喫いたしました。食したのは、もちろんソース焼きそば。つめた〜い生ビールも一緒であります。

お祭りの屋台のソース焼きそばと、つめた〜い生ビールの組み合わせ・・・やっぱり最高ですなあ。


平日の昼呑みって、最高だねえ。

2023-07-22 07:02:00 | 美味しいお酒と食べもの、そして食文化本のお噂
かなり久しぶりに平日がお休みとなった、7月18日(火)のこと。せっかくの平日休みなんだから、ここはぜひとも昼呑みに行くしかない!てなことで、暑いなか宮崎市の中心街へと出かけました。
所用を2つ片づけたあと、暑さで少々ボーッとなりつつ、汗を拭き拭き目指したのが、宮崎市の中心街にある焼き鳥のお店「やたがらす」さんであります。

宮崎ではまだ少ない昼呑みを楽しめるお店ということで、ここ2年ほどときどきお邪魔しては、美味しい焼き鳥とともにお酒を楽しませていただいております。
とはいっても、これまでずっと仕事が休みになる日曜や祝日にお邪魔しておりましたので、平日にお邪魔するのはこの日が初めてのこと。はたして開いているのか・・・と思いつつお店に行ってみると、いつものように12時には開店しておりました。入ってみればすでに先客もひとり。いいねえ、と嬉しくなりつつ、さっそく生ビールを注文いたしました。

普段なら仕事中であるはずの平日の真っ昼間から、しかも暑〜い中を歩いてきたあとに呑む、冷た〜い生ビールのうまいこと美味いこと。もう、生きててよかった〜〜!という至福感が、お腹の底からしゅわしゅわと湧きあがってくるのを感じましたねえ。

「おまかせコース」(3500円)を注文し、最初に出てきた先付の野菜料理をつまむうちに、ビールはあっという間にノドの奥へと消えていきましたので、2杯目にハイボールを注文。それに続けて出てきたのは、地鶏のたたきであります。


柔らかくてクセのない肉質の地鶏を使ったたたきは、口に入れるととろけるように旨味が広がって、まさに至福の美味しさ。ビールに続いてハイボールもぐいぐいと進んでいきます。
そして、目の前で炭火によって焼き上げられる焼き鳥が6品。焼きたてアツアツのを出されるそばから食らいつくたびに、鶏の旨味が口の中いっぱいに溢れ出してきて、生きるエネルギーがオノレの貧弱な体に蓄積されていくような気分になってまいります。






焼き鳥とともに、季節の野菜も3品。この日出てきたのは、オクラとヤングコーンを焼いたものに、アスパラガスの天ぷらでした。なかでも、柔らかくて甘味たっぷりのアスパラの天ぷらは最高で、正直あまりアスパラが好きではなかったわたしですら、アスパラってこんなに美味しかったんだ!という感激を覚えましたねえ。



焼酎文化圏のわが宮崎にあって、日本酒をいろいろと取り揃えてくれているのも「やたがらす」さんの素敵なところ。ハイボールのあとに呑んだのは、宮城県の日本酒「萩の鶴」の純米吟醸であります。かすかな酸味を帯びた爽快な呑み口が涼やかで、まさに暑い時期にはうってつけの美味しさ。海辺で寝そべる猫のイラストも、可愛らしくって和みますねえ。


そして最後に注文したのは、わたしが大好きな銘柄である埼玉の銘酒「神亀」純米酒。これを置いていてくださっているというのが、またしみじみと嬉しいのでありますよ。


気がつけば、お店のカウンターにはわたしの他に4人のお客さまが入っていて、そこそこの賑わいを見せておりました。平日の昼間であっても、こうしてお客さまが入っているというあたり、このお店の実力のほどが窺えるというものでありましょう。
その中のお一人、わたしのお隣に座っておられた男性が、まことに愛想が良くてフレンドリーなお方で、たちまちのうちに意気投合いたしました。近くにある飲食店の店長さんで、このところ忙しくってここに来るのは半年ぶりなんですよー、とおっしゃっておられました。
あれこれと話しているとき、その店長さんのLINEに着信が。お店のスタッフの一人がコロナの陽性になった、ということを告げる内容でした。店長さん、水を差されたというような表情をしつつ、こうおっしゃいました。
「もうとっくに5類になってるっていうのに、なんでいまだにコロナコロナって過剰反応してんだよ!って思いますよ。もう毒性だってたいしたことないはずですし。ボク、しばらく前からもうずっとノーマスクですよ」
いやもうほんとにおっしゃる通りですよ!と、わたしは激しく同意いたしました。感染症法における扱いが「2類」から「5類」に引き下げられてからすでに2ヶ月以上が経つというのに(ちなみにわたしも、5月8日以降は医療機関以外では基本マスクは着用しておりません)、何のアップデートも進歩もないまんま、あいも変わらずコロナを過剰に特別視しては、どうのこうのと騒ぎ立てるような風潮が残っていることには、もう呆れるのを通り越して軽蔑の念しか覚えません。われわれ日本人は、もう少し賢くて思慮分別もある優秀な民族だと思っていたのですが・・・。
限りある短い人生を、コロナばかり気にしてムダに費やすくらいなら、こうして美味しいものを食べたり呑んだりしながら、楽しく充実した生きかたをしたいものだと、あらためて思ったのでありますよ。
今度はぜひとも、この店長さんのお店で美味しい時間を過ごすことにしようかなあ・・・そう思ったのでありました。さあ、お楽しみはまだまだこれからだぞ〜〜!

美味しいお酒と食べもの、そして人との嬉しい出会い・・・。平日の昼呑みは、最高の時間をもたらしてくれたのでありました。


宮崎には珍しい「日本酒バー」で、日本酒と美味しい肴を満喫した三連休初日の夜

2022-03-20 20:27:00 | 美味しいお酒と食べもの、そして食文化本のお噂
飲食の自由を奪うばかりで、「感染拡大防止」にはなんの効果も意味もなかった、いまいましい「マンボウ」こと「まん延防止等重点措置」の適用が、わが宮崎県では今月の6日にようやく終わりとなりました。
「マンボウ」が終わって最初の週末となった先々週末、さっそく外呑みを楽しんできたわたしでしたが、三連休の初日となる昨夜(19日)もまた、2週続けての外呑みを楽しんで参りました。
前回の外呑みでは、久しぶりとなる馴染みの大衆酒場で、生ビールと焼酎を呑みながらくつろぎのひとときを過ごしたのですが、今回は気になっていたけれどもまだ立ち寄ったことのなかったお店に入ってみよう、ということにしました。とはいえ小心者ゆえ(苦笑)、初めてのお店に一人で入るということにはいささかの勇気を必要といたします。
思い切って別のお店に入ってみようかなあ・・・それともやっぱり通い慣れたいつものお店にしとこうかなあ・・・しばしの逡巡ののち、思い切って入ることにしたのが、日本酒バー「糀素弓」(はなそゆみ)さんでした。
焼酎文化圏の宮崎では珍しい、日本酒を主体としたお店。前から興味を持ってはいたのですが、なかなか入るきっかけが掴めないままでした。日本酒を扱うお店らしく、店先には「杉玉」(もしくは「酒林」)が下がっております。
思い切って中に入ると、カウンターのほかに小さなテーブル席があるだけのシックでコンパクトな店内。お店をお一人で切り盛りしておられる女将さんはとても愛嬌のあるお方で、初めて入ったわたしにもとても気さくに、親切に接してくださいました。店内にテレビなんぞ置いていないところも好印象であります。
その時々によって異なる銘柄の日本酒を揃えておられるそうで、その日に扱う銘柄がホワイトボードに列記してあります。さあてまずは何をいただこうかなあ・・・としばし迷った末、手はじめに福島県二本松市の「奥の松 二本松限定純米酒」を注文いたしました。

とてもフルーティな呑み口の中に、お米の旨みをしっかりと感じる実に美味しいお酒。最初の一杯にこれを選んで大正解だったなあ、と嬉しくなりました。
メニューを見ると、お酒を引き立ててくれる肴の種類もけっこう豊富です。その中から、まずはシンプルなところで「板わさ」を注文。

板わさでお酒もずんずん進んだところで、次に注文した一杯は宮城県の「浦霞」純米生原酒。さきほどの「奥の松」同様、またも大きな地震に襲われた東北を応援するという意味もありました。キリッとした辛口ながらも飲みやすく、気分のいいお酒であります。

このあたりで二つめの肴として、新潟県の分厚い油揚げを使った「栃屋のあぶらげ焼」の黒豚味噌入りハーフサイズを注文。なるほどたしかにすごい厚みで食べ応えがありました。あいだに挟まった黒豚味噌の旨味がまた、お酒を進ませてくれました。

お酒が進んであっという間になくなったので、三杯目として再び福島県二本松市の「大七」純米生酛を。こちらはさきほどの「奥の松 二本松限定純米酒」とは対照的などっしりとした呑み口。日本酒というのは実に多彩な美味しさがあるんだなあということを、あらためて実感させられます。

この日はなんと、「奥の松」の営業マンの方がお見えになっておりました。その方から、まだ出来たばかりだという「奥の松 純米大吟醸」のお裾分けにあずかることができました。フルーティな美味しさにさらなる磨きがかかり、清涼感あふれる呑み口に魅了されました。これならいくらでも無限に呑めそうな感じがいたしますねえ。

そして、ひとまずの締めとして注文したのは、新潟県の「緑川」。こちらは久しぶりに呑んだのですが、安定した美味しさでホッとさせてくれました。一緒に注文した「チーズ豆腐」は冷奴そのものの食感ながらも味はたしかにチーズ、という面白い肴で、日本酒ともいい相性でありました。


ここにきてさらに、この日来られていたご常連と思しきお客さんがお持ち込みになったお酒のお裾分けが。北海道は函館市の蔵元「郷宝」の純米吟醸。「彗星」というロマンチックな名前のお米を使ったお酒で、かすかな酸味の中に旨味が感じられていい呑み心地の一杯でした。北海道にもこんな美味しいお酒があったとは!


今回初めて入った「糀素弓」さんでしたが、実に楽しく充実した時間を過ごすことができました。
美味しいお酒と肴の数々もさることながら、カウンターを通しての女将さんやお客さんとの交流という、コロナ騒ぎの中で忘れかけていた酒場ならではの楽しさもたっぷりと味わえたことは、とても嬉しいことでした。尊敬する居酒屋の師・太田和彦さんによる良きお店の定義「いい酒、いい人、いい肴」の三拍子を兼ね備えたお店ではないかと、しみじみ思いました。日本酒の持つ多彩な美味しさを再認識できたことも、大きな収穫でありました。
これからも時々、「糀素弓」さんには立ち寄ることにしなければな。

2軒目となる行きつけのバーに寄る前に、繁華街をブラつきました。宮崎市の呑み屋街であるニシタチ、中央通り界隈は若い世代を中心にたくさんの人が歩いていて、週末にして三連休初日の夜らしい賑やかさに包まれておりました。




「コロナ禍」ならぬコロナ騒ぎ禍によって受けた呑み屋街のダメージは、そう簡単には回復できないように思われます。しかし、美味しいお酒や食べもの、そして人と人との楽しい交流を求める人の営みが続くかぎり、呑み屋街は一歩一歩立ち直っていくだろう・・・と、この夜の街の賑わいを見ながら思ったことでありました。



東北のうまい酒と肴で、ゆるゆるとウチ呑みを。

2022-03-06 16:58:00 | 美味しいお酒と食べもの、そして食文化本のお噂
昨日(3月5日)のこと。半ドン仕事の帰りがけに近所にあるスーパー「山形屋ストア」に立ち寄ると、毎年この時期にやっている「東北応援フェア」が始まっておりました。岩手・宮城・福島をはじめとする東北各県の美味しいものを集めたこのフェアは、わたしにとってこの時期の楽しみとなっております。
昨日の夕べは、その「東北応援フェア」で買ってきた福島県二本松市の日本酒「奥の松」と、宮城県塩釜市加工のサバ丸干しでウチ呑みを楽しみました。



酒どころ福島の名酒「奥の松 あだたら吟醸」(15度)は、キリッとした辛口の中に米の旨味がしっかり感じられる、わたしの好きな銘柄であります。そして塩釜加工のサバ丸干しは、食べごたえと旨味がたっぷりで、美味しいお酒をさらに美味しく、ぐいぐいと進ませてくれるのです。
サバ丸干しをあっという間に完食したので、勤務先の料理好きな同僚から分けてもらったポテトサラダの残りも引っ張り出しました。

ポテサラと日本酒という取り合わせはヘンだ、という向きもおられるかもしれませんが、このポテサラがまたお酒のアテにうってつけときてますし、こちらが美味しいと感じるのであればそれでいいのだよ(笑)。
かくして東北のうまいお酒と肴は、1週間の疲れをゆるゆるとほぐし、癒やしてくれたのでありました。

あの東日本大震災から、まもなく11年。あのとき感じた強い衝撃も、時を重ねていくうちに自分の中で薄れていくのを感じざるを得ません。
とはいえ、東北から遠く離れた自分にできることを、ささやかであっても続けていきたいという気持ちだけは、これからも忘れないようにしたいと思うのです。東北の美味しいものを買い求めることも、その一環であります。

宮崎県全域に出されていた、くそいまいましい「マンボウ」こと「まん延防止等重点措置」とやらもきょう(3月6日)でようやく終了。ということで今週末にはさっそく、久しぶりとなる呑み屋街での外呑みをたっぷりじっくり満喫するつもりであります。乞うご期待!・・・って期待してんのは自分なんだけど(笑)。