読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【閑古堂の映画千本ノック】7本目『関東大震災実況』8本目『関東大震災【伊奈精一版】』 日活映画人が捉えた関東大震災

2023-10-25 20:01:00 | ドキュメンタリーのお噂

『関東大震災実況』(1923年 日本)
染色、20分
製作会社:日活向島撮影所
撮影:髙坂利光(映画では「髙阪」と表記)、伊佐山三郎
国立映画アーカイブの特設サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」にて配信中

関東大震災を映像記録として残した人びとの中には、誕生してからまだ日の浅かった、草創期の映画産業を担っていた映画人たちもおりました。
現在も存続している日本最古の映画会社・日活は、関東大震災の10年近く前である1912年(明治45年/大正元年)に設立。「目玉の松ちゃん」こと尾上松之助を看板スターとして、時代劇を中心に京都で映画を製作。翌1913年には、東京の向島に新たな撮影所を設け、現代劇にも手を広げました。
『関東大震災実況』は、その向島撮影所のカメラマン2人により撮影、製作された震災記録映画です。フィルムに赤や青の色が着いてはいるものの、これはカラーフィルムではなく、モノクロフィルムに着色を施した「染色」と呼ばれる手法によるものです。

「日活向島撮影所 撮影技師 髙阪利光氏 伊佐山三郎氏 決死的撮影」との触れ込みから始まる本作品ですが、前半部は『關東大震大火實況』『関東大震災【返還映画版】』などといった、他作品でも使われていた映像が多く見られます。しかも、いくつかのカットは重複して映し出されたりもいたします。
国立映画アーカイブの「関東大震災映像デジタルアーカイブ」で公開されている震災記録映画をまとめて観ていると、別の作品で使われていた映像が他作品でも繰り返し流用され、使い回されていることに気づかされます。そのことで、当該映像のオリジナルがもともとどの作品だったのかが曖昧になっている上、映像が撮影された正確な場所や状況もわかりにくくなっており、映像が本来持っているはずの記録性が損なわれてしまっている面があることは否定できません。
そんな中にあっても、本作には注目に値する映像が含まれております。終盤に映し出される、隅田川から船に乗って撮影されたと思われる一連の映像では、崩壊した橋の鉄骨を伝ってなんとか渡ろうとする人の姿や、川面に浮かぶ無残な遺体、そして辛くも生き延びた人たちが橋の下を仮の宿としている様子などが映し出されていて、異なった角度と手法により震災直後の状況を捉えた貴重な記録となっております。


『関東大震災【伊奈精一版】』(1923年 日本)
染色、14分
撮影:伊奈精一
国立映画アーカイブの特設サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」にて配信中

『関東大震災【伊奈精一版】』と名づけられたフィルムを撮影した伊奈精一なる人物もまた、戦前の日活で活躍したという劇映画の監督であります。ただし厳密には、「日活入社以前に朝日新聞のニュースカメラマンとして活動していた時期に撮影したと見られる」(上記サイトの作品解説より)とのこと。本作も、フィルムを染色する手法によって仕上げられております。
本作の前半も、他作品でも使われていた映像の流用によって構成されておりますが、フィルムの状態が比較的良好だからなのか、映像自体はけっこう鮮明に見えます。多数の死者が出た、本所被服廠跡の惨状を捉えた一連の映像では、遺体を荼毘(だび)に付しているところを間近で撮影した、衝撃的なカットも含まれております(ご覧になる際にはご注意を)。
本作で注目すべきは、横浜の被災状況を記録した後半の部分。神奈川県庁と横浜市役所の仮事務所における混乱した様子や、破壊された港の埠頭、無残に焼け落ちた車が何台も並ぶホテルを捉えた映像なども貴重な記録ですが、とりわけ目を引かれたのが、焦土と化した街と、道を行き交う人びとの姿を、移動する車から撮影した映像。この時期に、このような手法によって撮られた映像があったということに、ちょっと驚かされました。

草創期の映画人たちによって捉えられた、関東大震災の映像記録2編。いずれも、独自の手法と工夫によって捉えられた映像が印象に残る作品であります。

【閑古堂の映画千本ノック】5本目『関東大震災【返還映画版】』 発災後間もない都内の被災状況をつぶさに記録した一本

2023-10-15 21:03:00 | ドキュメンタリーのお噂

『関東大震災【返還映画版】』(1923年 日本)
モノクロ、13分
監督:不詳
国立映画アーカイブの特設サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」にて配信中


大正十二年九月一日
 午前十一時五十八分三十二秒
突然起りし
 大地震‼︎
 大火災‼︎
と共に・・・・・・
 帝都三百年の文化
 一朝の夢と化す

猛火の裡に突かれ・・・・・・
激震を物ともせず・・・・・・
幾度か死を決して
遂に撮影完成せる
本映畫(画)

そんなものものしい口上から始まる、13分ほどの関東大震災の記録映画です。
とはいえ、現存する本作の映像は完全な形ではないようです。国立映画アーカイブの「関東大震災映像デジタルアーカイブ」に記されている本作の説明によれば、「メインタイトルやクレジットタイトルがなく、他の作品と重複するカットが多いため、現時点で作品を同定するまでに至っていない」(ゆえに、監督や製作会社などについても、現時点では不明のままです)とのこと。そのため、付されている題名も、あくまで「仮の」題名ということになります。その「仮の」題名にある【返還映画版】というのは、本作のフィルム素材がアメリカ議会図書館より返還されたことから来ているのでしょう。

本作で特徴的なのが、発災から間もない時間帯に撮影されたと思われる映像が多く含まれていることです。激しく燃え盛る家屋や商店を間近から撮影した映像や、煙が街を覆っている様子を捉えた映像からは、震災被害の大きさが伝わってくるようです(燃え盛る家屋の前を、犬が走っていく印象的なカットあり)。
震災に直面した人びとの姿も克明に映し出されています。家財道具を持ち出して避難する人びとによってぎっしりと埋め尽くされ、電車や車が動けない状況となっている大通りを俯瞰から捉えたカットなどからは、大火災に直面した人びとがパニックに陥っていたであろうことが窺えます。
その一方で、発災直後に撮影されたと思われる映像には、丸の内のビル街の向こうから煙が上がっているにも関わらず、撮影しているカメラに気づいて笑顔を見せながら通り過ぎていく女性の姿や、濛々と煙が上がる住宅街で談笑しているかのような2人の男性の姿もあり(いずれの映像も、前回の記事で触れたNHKスペシャル『映像記録 関東大震災』の中で印象的に使われておりました)、被害の全体像が見えていなかった発災直後はまだ、緊迫した状況には至っていなかったこともわかるのです。

フィルムの後半では、余燼がくすぶる焼け野原と化した東京各所の惨状が映し出されていきます。一面の焼け野原の中に虚しく佇む浅草十二階や三越百貨店、焼けて土台部分だけが残った路面電車を広瀬中佐の銅像が見下ろす須田町、立ち並んでいたはずの仲見世がすっかり焼け落ちてしまった浅草寺境内・・・。
そして、この震災で最大の死者が出た本所被服廠跡に、黒焦げになった遺体が累々と横たわっている悲惨な光景が10秒ほど映し出されると、映画はブツンと途切れるかのように唐突に終わるのです。おそらくはこの後に続く映像があったのではないかと思われますが、その行方はまだわからないままです。

このほかに、同じカットが重複して使われている箇所もあったりして、一本の映画としては不完全な形となっている本作ではありますが、関東大震災の映像記録として、貴重な一本であることは確かでしょう。

【閑古堂の映画千本ノック】4本目『關東大震大火實況』 関東大震災の被災状況と復興の動きを網羅的にまとめた記録映画の代表作

2023-10-12 19:30:00 | ドキュメンタリーのお噂

『關東大震大火實況』(1923年 日本)
モノクロ、63分
撮影監督:文部省社会教育課
撮影:東京シネマ商会
国立映画アーカイブの特設サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」にて配信中


今年(2023年)は、関東大震災の発災からちょうど100年ということで、発災した日である9月1日の前後を中心に、テレビ・新聞・出版などの各メディアはこぞって、関東大震災を振り返る特集や企画に飛びついておりました。
(それらの動きも、時期が過ぎるやパタリと見られなくなってしまった・・・というのもまた、熱しやすくも冷めやすいメディアの常ではあるのですが)
それらの中で、個人的に一番注目したのが、9月2日と3日の2日にわたって放送されたNHKスペシャル『映像記録 関東大震災 帝都壊滅の三日間』(前編・後編)。関東大震災を記録したモノクロのフィルム映像を高精細・カラー化して、当時の状況を追体験してもらおう、という試みでありました。
過去のモノクロ映像のカラー化というのは、いまやそれほど珍しいことでもなくなりましたが、高精細化されて細部のディテールまで鮮明になった映像の数々には目を見開かされました。この高精細化により、不鮮明であった映像から多くの情報が引き出され、これまではっきりしていなかった映像の撮影場所や日時を、かなりのところまで特定することができたのは、大きな収穫といえるでしょう。埋もれていた古い記録映像の活かし方を見せつけた企画でありました。

そのNスペ『映像記録 関東大震災』で高精細・カラー化された素材となった記録映像の多くは、現在国立映画アーカイブの特設サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」にて公開・配信されております。
ここでは、国立映画アーカイブが保存している震災関連の記録映画20本を全篇観ることができるのですが、今回取り上げる『關東大震大火實況』も、その中の一本であります。文部省(当時)社会教育課の指揮のもとに撮影・製作された全五巻、1時間ほどのこの映画は、関東大震災の映像記録としては最も知られている作品でしょう。
わたしがこの映画の存在を知ったのは14年前のこと。岩波書店から刊行された『シリーズ 日本のドキュメンタリー』(佐藤忠男編著、全5巻)の第1巻に添付されていたDVDに、古いドキュメンタリー映画のダイジェスト映像が収録されていて、その中に『關東大震大火實況』の映像の一部があったのです。このたび、「関東大震災映像デジタルアーカイブ」のおかげで、その全篇を観る機会に恵まれたというわけであります。

全五巻からなる『關東大震大火實況』。まず第一巻では、東京都内の被災状況がつぶさに記録されます。
地を走る地割れや崩壊した建物、燃え盛る街の様子、消防士らによる懸命の消火活動、そして空しく一面の焼け野原と化した街の光景・・・。中でも、土蔵と思われる建物が燃え盛り、崩れ落ちていくまでを、ほぼ固定したアングルで捉え続けた映像が印象に残りました。「皇道少年団」なる名称のボーイスカウトの少年たちによる、負傷者の救護や飲料水の提供といった活動の様子も紹介されています。

第二巻では、傷つき多くのものを失った中で、必死に生き抜こうとする被災者たちの姿を映し出します。尋ね人の張り紙で埋め尽くされた、上野公園の西郷隆盛の銅像。倒れてしまった石灯籠をかまど代わりにして飯を炊く男。故郷に帰ろうと列車や船に鈴なりになって乗りこむ人びと・・・。
この中には、焼け残った列車を借りの宿にしている家族の姿を捉えた映像が含まれているのですが、この家族こそ、のちに作詞作曲家、放送作家などとしてマルチに活躍することになる、子ども時代の三木鶏郎とその一家。この映像も、先のNスペ『映像記録 関東大震災』の中で取り上げられておりました。

第三巻では、被災した人たちに対する、さまざまな形での救護や支援活動の様子が綴られます。善後策を立てるべく閣議に集まる、時の内閣の大臣たち。全国各地はもちろん、海外からも集まる義援物資。病院で治療を受ける負傷者や、保護されている震災孤児たちの姿・・・道路を封鎖して、道ゆく人の検問にあたる自警団の姿も捉えられています。
文部省の指揮によって製作された映画ということで、悲惨な状況を映した映像はほとんど使われていない本作ですが、ここでは脚に重い火傷を負った負傷者の姿や、最大の死者が出た本所被服廠跡に山となった白骨を捉えた映像が含まれていて、震災の悲惨さを垣間見ることができます。

そして第四巻では、被害を受けた建物の取り壊し、仮設住宅の組み立てやインフラの復旧、生活の再建、子どもたちへの教育の再開といった、復興へ向けての動きがまとめられているほか、横浜における被害の状況も紹介されています。
ここでは、震災により途中から折れてしまっていた浅草十二階が、爆破により取り壊される過程の記録が含まれています。根元に爆薬が仕掛けられ、建物の残骸は濛々たる土煙とともに崩壊するのですが、壁の一部分は崩れることなく残ります。それがあたかも墓標のように見えて、強く印象に残ります。
第四巻の最後は、発災時刻の午前11時58分を指したまま止まってしまった、中央気象台の時計を映し出します。ここで映画としては終わってもおかしくはないところですが、このあとさらに第五巻となり、当時の皇族方による支援の動きが綴られていくのには、いささか唐突な感じを受けます。このあたり、文部省としては国民に向けて皇族の「聖恩」を強調しておきたかったのかなあ・・・という気がいたします。

文部省=国家による、いわば「公式記録映画」としての性格が色濃いこともあってか、いささか「きれいごと」を強調しているきらいのある『關東大震大火實況』。ですが、関東大震災の被災状況から復旧、復興への動きまでを網羅的に記録した、貴重な映像記録であることに変わりはないでしょう。
なお、国立映画アーカイブの「関東大震災映像デジタルアーカイブ」内では、本作の上映当時に使われた説明台本をもとに、活動弁士による説明と音楽を付した【弁士説明版】も公開されております。サイレントの映像だけではわかりにくい映像の中身が、活弁によって生き生きと観るものに伝わってきますので、観比べてみるのも一興ではないでしょうか。
動画『關東大震大火實況』【弁士説明版】→ https://kantodaishinsai.filmarchives.jp/special/m01_benshi.html

これからしばらくは、同アーカイブにて公開されている関東大震災関連の記録映画を(別の映画紹介を挟みつつ)何作か取り上げてみたいと考えております。

『THE MAKING』を(ほぼ)コンプリートで観てみた。 【その12】第141回〜第155回

2023-02-13 19:48:00 | ドキュメンタリーのお噂
さまざまな製品が製造されていく過程を、余分な要素を排したシンプルな構成で辿っていく科学技術教育番組シリーズ『THE MAKING』。300回を越えるそのレギュラー回(+スペシャル版)のうち、現在見ることができるすべての回を観た上で、ごくごく簡単な見どころ紹介と感想を綴っていくという続きもの記事、約3ヶ月のブランクがございましたが、久しぶりに12回目をお届けしたいと思います。


シリーズの詳しいご説明などは【その1】に譲ることにして、今回は第141回から第155回までを紹介していくことにいたします。サブタイトルに続いて「サイエンスチャンネル」の公式YouTubeチャンネルにアップされている該当回の画面を貼っております。ご覧になる際の参考にでもなれば幸いであります。
諸事情により、現在配信されていない回については、サブタイトルに続き「欠番」と記しております。また、現在配信されている回についても、配信元の都合により動画の公開がなされなくなる場合もあるかと思われますので、その節はどうぞご容赦くださいませ。

(141)ドラム缶ができるまで

スチール製(一般的な容量200リットルのやつ)とファイバー(木材の粉から作られたクラフト紙製)のドラム缶、それぞれの製造過程が紹介されています。スチールドラム缶ならではの胴体の出っ張り(輪帯)は、中から機械で押し広げてつけるんだねえ(「ビーディング」と呼ばれる工程)。輪帯には強度を保つとともに、タイヤのように転がりやすくする働きもあるのだとか。落下テストや水圧テストなど、さまざまな検査が入念に行われているところにも感心いたしました。

(142)たいこ(長胴太鼓)ができるまで

実に見どころが多く面白い、大型の長胴太鼓の製造過程です。
推定樹齢800年、直径3メートル、長さ4メートルもの原木を切り出していく過程からして、実に引きこまれるものがございました。特に圧巻だったのは、内側をくり抜いて円筒状にする「胴ぐり」のところ。両側からくり抜かれた木材の芯が、フォークリフトで押し出されるところでは、見ていて思わず声が出ました。「革ばり」のところで、張った皮を伸ばすために作業員4人が皮の上をぴょんぴょん跳ねている場面は、なんかユーモラスな光景で笑えました。

(143)さきイカができるまで

お酒の良き友、さきイカの製造過程。茹でて味つけしたあと、乾燥させて焼いたスルメイカの胴体部分を、回転するツメ(万が一巻き込まれでもしたらかなり痛そう)で引き裂いて、それをさらに乾燥させることで、あの独特の食感が生まれるんですねえ。・・・裂く前のこんがりと焼いただけのイカも十分うまそうだったけど(笑)。

(144)バウムクーヘンができるまで

見どころはなんといっても、バウムクーヘンならではの年輪模様が生み出されていく過程であります(「バウムクーヘン」という名前も、ドイツ語で「木の菓子」という意味)。円筒形に並べられ、回転する金属製のめん棒につけられた生地が炉の中で焼かれていき、それが少しずつ太くなっていくさまを、食い入るように見入ってしまいました。見ていると甘い香りが伝わってくるようで、なんだか無性にバウムクーヘンが食べたくなってくるのう。

(145)かりんとうができるまで

洋菓子バウムクーヘンのお次は、和風菓子であるかりんとうのできるまで。とはいえ、生地の段階ではパンとほとんど変わらない感じがいたしました(イーストを入れて発酵させてるし)。揚げは一回だけでなく、まずは表面だけをサッと揚げ、次の釜で表面に色がつくように揚げ、そして3つめの釜で芯までカラッと揚げるという具合に、三段階に分けて揚げていってるんだねえ。

(146)瓦(かわら)ができるまで

空気が入って、焼いた時に割れてしまうのを防ぐために、原料の粘土を2段階に分けてしっかりと練っているのがよくわかりました。瓦に水玉の模様をつけるとき、網に塗った釉薬を内側から空気を不規則に吹き付け、全部違う模様にしているのが面白いですねえ。焼くときには、台車の上に瓦をズラッと直立させてやっていて、よく倒れないもんだなあと妙なところに感心。

(147)こんにゃくができるまで

通常の板こんにゃくを中心に、玉こんにゃくやしらたきの作り方を紹介。原料となるこんにゃく芋は寒さや霜に弱いということで、冬季は畑から温室に移して保管したりして、3年かけて収穫するとか。しらたきの元となる白こんにゃくが、細い穴から押し出されるところはそれこそ白い滝のようで、なかなか絵になりますねえ。

(148)消防ホースができるまで

ポリエステル繊維の内側に、ウレタンによるコーティングを施して作られる消防ホース。放射状に張り巡らせたポリエステル繊維の糸を、中心部で織り上げていく自動織り機の映像は、なかなか美しくて目を見張りました。織っているときには熱が発生するので、風で冷却しながら織り上げるとか。ウレタンをコーティングされ、裏返しの状態になっているホースを、機械で圧力をかけて水とともに押し出してひっくり返すところも面白かったな。押し出されるとき「ヒュルルルルル〜」という感じの音が鳴ったりしてて。

(149)塩ができるまで

おなじみ「伯方の塩」の製造過程。原料となる海水を濾過して釜で煮詰め、水分を抜かれた塩を自然乾燥させるための簀の子に使われているのが、竹。金属だとすぐに錆びたり、木だとすぐ傷んでしまうのに対して、竹は丈夫な上に水はけが良いからだそうな。なるほど。そうやって4〜5日かけてゆっくりと乾燥させることで、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル分がバランスよく残るのだとか。

(150)たわしができるまで

スポンジたわしに亀の子たわし、金たわし、そしてトイレ用たわしといった、さまざまなタイプのたわしの製造工程が紹介されています。スポンジたわしのもととなるウレタンフォームが形成される実験のプロセス(ポリオールやイソシアネート、水などを混ぜて化学反応させることによって炭酸ガスが発生し、固まりながらふくらんでいく)が興味深かったですね。その一方で、手作り感漂う亀の子たわしの製造風景もよかったねえ。

(151)まんじゅうができるまで

福岡県の銘菓として知られるひよこ型まんじゅう「ひよ子」の製造過程であります。中身のあんこを生地で包んで押し出していく「包あん機」の仕組みや、ひよこ型に成形されたまんじゅうの向きを、製造ラインに合わせて後ろや前に向けたり横向きにしたりする工夫に感心いたしました。その一方で、余分な粉を払うブラシの絶妙な動きや、熱したニクロム線でひよこの目を焼きつける機械の名がズバリ「目付け機」だったのには、思わず笑いを誘われましたな。

(152)ブリキロボットができるまで

ゼンマイ仕掛けで動く、昭和レトロ感たっぷりのブリキロボットの製造過程。表面の塗装に使われる塗料は粘り気のあるものを使うことで、成形の時に表面が伸び縮みしても色がひび割れないようにしている・・・という、細かい工夫がいいですねえ。歯の数が違う2つの歯車と電池式モーターを用いての、ロボットのギミックを詳しく解説した後半部分も、なかなか勉強になります。

(153)冷凍ぎょうざができるまで

「大阪王将」ブランドの冷凍ぎょうざの製造工程。丸く打ち抜いた生地の中に具を乗せ、それをつぶすことなく、きれいにヒダをつけながら1分間に170個のぎょうざを包むまでの工程をこなす「成形機」が優れモノでした。でも、なによりも目を見張らされたのは、冷凍ぎょうざを入れる箱をものすごい速さで組み立てる人たちの驚異的な手技!機械もスゴいけど、人間もなかなかスゴいねえ。

(154)将棋盤ができるまで

撮影場所はなんと、わが宮崎県の照葉樹林の里・綾町。宮崎産のカヤの木は夏と冬の気温差により、くっきりした美しい木目がつくのだとか。そういえばたしかに、綾町には将棋盤などの木を用いた工芸品の製造販売所がいくつかあったなあ、ということを思い起こしました。
表面をていねいにカンナがけするところから始まり、第三者の助言を許さない(口無し)という意味から、くちなしの実をかたどって作られる脚の彫刻工程、そして盤面にマス目を入れていくところなど、手仕事の醍醐味を存分に味わうことができます。とりわけ、日本刀でマス目にうるしを盛る「太刀盛り」のところではBGMも消され、張り詰めるような緊張感がじんじんと伝わってまいります。

(155)コーンフレークができるまで

個人的には、朝食というよりチョコフレークのベースとして馴染みのある、コーンフレークの製造工程であります。砕いたコーンに圧力と蒸気を加えて炊き上げ、それを乾燥させた上でローラーでプレスし焼き上げることで、あの独特の食感が生まれるんですねえ。焼き上がったフレークがラインを流れるときのサラサラした音が、なんか耳に心地いいですねえ。

これまでご紹介した回については、以下のページにリンク集と内容のもくじをまとめておきました。新しくアップした内容を追加しながら更新していきますので、気になる回をお探しになるときにお役立ていただければ幸いであります。

【随時更新】「『THE MAKING』を(ほぼ)コンプリートで観てみた。」 全記事リンク集&内容もくじ

2023-02-13 19:46:00 | ドキュメンタリーのお噂
さまざまな製品が製造されていく過程を、余分な要素を排したシンプルな構成で辿っていく科学技術教育番組シリーズ『THE MAKING』。その全317回(+スペシャル版)のうち、現在見ることができるすべての回を観た上で、ごくごく簡単な見どころ紹介と感想を綴っていくという「『THE  MAKING』を(ほぼ)コンプリートで観てみた。」と題する続きもの記事を、2021年の12月から随時まとめてアップしていっております。
これまでは新しい記事をアップするたび、末尾にはそれまでアップした同タイトルの記事のリンクをまとめて貼るようにしておりました。しかし、回が重なることで当然、貼りつけるリンクの数も増えていくわけで、いささか煩雑な感じがしてまいりました。また、それぞれの記事にどういった内容の回が紹介されているのかがわからないと、ご覧になってくださる皆さまに対してもちょっと、不親切ではないかと思われてきました。
そこで、これまでアップしてきた『THE  MAKING』の紹介記事のリンクをひとつにまとめた上で、それぞれの記事にどういった内容の回が含まれているのかを、一覧として示すためのページを新たに設けることにいたしました。それが、こちらの記事というわけなのであります。今後、新たな紹介記事をアップした時には、そのリンクと内容一覧を追加した上で、このページも更新していくことにしたいと思います。
今後アップする『THE  MAKING』の紹介記事の末尾には、このページのリンクのみを貼ることにしたいと思います。関心を持っていただいた皆さまにおかれましては、このページに示したそれぞれの記事の内容一覧を「もくじ」にしていただき、興味ある回を視聴するためにご活用していただければ幸甚であります。


  (1)1万円札ができるまで(欠番)
  (2)マヨネーズのできるまで
  (3)一眼レフカメラのできるまで
  (4)清涼飲料のできるまで 〜ミルクティー〜
  (5)ホッチキスのできるまで(欠番)
  (6)鉛筆のできるまで(欠番)
  (7)段ボール箱のできるまで
  (8)板ガラス・鏡ができるまで
  (9)アルミなべのできるまで
  (10)雑誌ができるまで

     (11)レンズ付フィルムのリサイクル
  (12)口紅ができるまで
  (13)ピアノができるまで
  (14)くつ下ができるまで
  (15)発泡スチロールトレーのリサイクル
  (16)アルミ缶のリサイクル
  (17)自動車ができるまで
  (18)時計ができるまで
  (19)ミシンができるまで
  (20)セロハンテープのできるまで

      (21)万年筆ができるまで
  (22)ぬいぐるみができるまで
  (23)ランドセルができるまで
  (24)蛍光ランプができるまで
  (25)歯ブラシ・歯ミガキができるまで
  (26)トランペットができるまで
  (27)石けんができるまで
  (28)スニーカーができるまで
  (29)オルゴールができるまで
  (30)ストッキングができるまで

      (31)ティッシュペーパーができるまで
  (32)お菓子ができるまで(欠番)
  (33)コンビニエンスのお弁当ができるまで
  (34)缶詰ができるまで
  (35)おもちゃができるまで
  (36)自転車ができるまで
  (37)麺ができるまで
  (38)Tシャツができるまで
  (39)原子力発電所ができるまで(欠番)
  (40)パイができるまで

      (41)シャンプー・リンスができるまで
  (42)羽子板ができるまで
  (43)レトルト食品ができるまで
  (44)食品サンプルができるまで
  (45)消火器ができるまで
  (46)ペットボトル リサイクル
  (47)カップめんができるまで
  (48)墨ができるまで
  (49)ファスナーができるまで(欠番)
  (50)ハイテク野菜ができるまで(欠番)

      (51)乾電池ができるまで(欠番)
  (52)蚊取り線香ができるまで
  (53)新500円貨幣ができるまで(欠番)
  (54)化粧品ができるまで
  (55)ポテトチップができるまで
  (56)信号灯器ができるまで
  (57)ストローができるまで
  (58)ばね(自動車用)ができるまで
  (59)ブラインドができるまで(欠番)
  (60)スプーンとフォークができるまで
  (61)使い捨てマスクができるまで
  (62)コンタクトレンズができるまで
  (63)スチールボールができるまで
  (64)輪ゴムができるまで
  (65)フォークギターができるまで

      (66)チョコレート菓子ができるまで(欠番)
  (67)バットができるまで
  (68)ろうそくができるまで(欠番)
  (69)ハサミができるまで
  (70)救急バンソウコウができるまで
  (71)人工芝ができるまで
  (72)柿の種ができるまで(欠番)
  (73)耐火レンガができるまで
  (74)かまぼこができるまで
  (75)茶わんができるまで
  (76)ハーモニカができるまで
  (77)琴ができるまで
  (78)七輪ができるまで
  (79)判子(ハンコ)ができるまで
  (80)草刈機ができるまで

  (81)鍵盤ハーモニカができるまで
  (82)グミキャンディーができるまで
  (83)釣竿ができるまで
  (84)卓球ラケットができるまで
  (85)メガネフレームができるまで
  (86)野球グラブができるまで
  (87)手袋ができるまで
  (88)ボウリングの球ができるまで
  (89)金属バットができるまで
  (90)硬式野球ボールができるまで
  (91)しょう油ができるまで
  (92)プラモデルができるまで
  (93)電球ができるまで
  (94)スピーカができるまで(欠番)
  (95)ビデオテープができるまで

  (96)パン粉ができるまで
  (97)魔法瓶ができるまで
  (98)パスタができるまで
  (99)割りばしができるまで
  (100)レコードができるまで
  (101)マッチができるまで
  (102)リコーダーができるまで
  (103)かつお節ができるまで
  (104)ワイングラスができるまで
  (105)そろばんができるまで
  (106)かい中電灯ができるまで
  (107)紙コップができるまで
  (108)とび箱ができるまで
  (109)粒ガムができるまで(欠番)
  (110)毛布ができるまで

  (111)手のべそうめんができるまで
  (112)プチケーキができるまで
  (113)おもちができるまで
  (114)スティック菓子ができるまで
  (115)みかんの缶詰ができるまで
  (116)缶コーヒーができるまで
  (117)地球儀ができるまで
  (118)ボールペンができるまで
  (119)マシュマロができるまで(欠番)
  (120)清涼菓子ができるまで
  (121)バレーボールができるまで(欠番)
  (122)ガラスびんができるまで
  (123)ノートができるまで
  (124)ローラチェーンができるまで(欠番)
  (125)便器ができるまで

  (126)絹糸ができるまで
  (127)ジーンズができるまで
  (128)(牛乳パックのリサイクル)トイレットペーパーができるまで
  (129)自転車タイヤができるまで
  (130)ピンポン球ができるまで
  (131)たまごパックができるまで
  (132)ふりかけができるまで
  (133)ドレッシングができるまで
  (134)自動車用ホイールができるまで
  (135)石油ファンヒーターができるまで
  (136)トウフができるまで
  (137)グラスビーズができるまで(欠番)
  (138)冷凍たこ焼きができるまで
  (139)消しゴムができるまで
  (140)下水道管ができるまで

  (141)ドラム缶ができるまで
  (142)たいこ(長胴太鼓)ができるまで
  (143)さきイカができるまで
  (144)バウムクーヘンができるまで
  (145)かりんとうができるまで
  (146)瓦(かわら)ができるまで
  (147)こんにゃくができるまで
  (148)消防ホースができるまで
  (149)塩ができるまで
  (150)たわしができるまで
  (151)まんじゅうができるまで
  (152)ブリキロボットができるまで
  (153)冷凍ぎょうざができるまで
  (154)将棋盤ができるまで
  (155)コーンフレークができるまで