読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

鹿児島・オトナの遠足2017(1日目)旅のはじまりはやっぱり雨模様

2017-05-14 15:17:54 | 旅のお噂
緑が美しく、吹く風も心地よい4月から5月の時期は、わたしを鹿児島への旅に誘ってくれる時期でもあります。
別府と同じく、毎年決まってお邪魔している場所である鹿児島なのですが、その豊かな自然と歴史文化、それに滋味溢れる海の幸山の幸・・・そして焼酎を堪能するたびに嬉しい気分になり、また必ず行きたいという思いにさせてくれる、わたしの大好きな場所なのであります。
今年も5月の4日から6日にかけて鹿児島にお邪魔し、楽しい思い出をつくることができました。これから何回かにわたって、そのときのお噂を綴っていくことにいたします。


♪はじまりはいつも雨〜〜

大好きな場所である鹿児島ではあるのですが・・・わたしが鹿児島に出かけるときにはたいてい、天気のほうはイマイチでありまして・・・。出かける前にチェックしていた天気予報でも、滞在する4日から6日にかけての天気はずっと曇りマーク、そして傘マークがついているというありさまでした。
やきもきしつつ迎えた出発当日、わが宮崎市は朝からどんよりした雲に覆われ、そこからパラパラと雨が落ちてくるという天気でした。やれやれ、やっぱり今回もか・・・。
わたしのアタマの中では、
♪は〜じ〜〜ま〜り〜はい〜つ〜も雨〜〜
と歌うASKAさんの声が、繰り返し繰り返しリフレインで響いてきたのでありました。
でもまあ、いくらガッカリしようが嘆こうが、天気ばかりはどうにもなりません。ASKAさんだっていろいろとあったけれども活動を再開してガンバっているんだし。せめて暴風雨にはならないことを願いつつ、わたしは早朝6時少し前の鹿児島行き特急列車に乗り込みました。
そして席に着くと缶ビールをプチンと開け、朝食かたがた買っていたコンビニの焼きそばをつまみに飲み始めました。そう、これは旅するときには欠かすことのできない出発の朝の儀式。これをやると、ああこれからオレは旅に出るのだというヨロコビが、体の奥底からヒタヒタと・・・ほろ酔い気分とともに・・・湧き上がってくるのであります。

2時間近く列車に揺られていると、やがて車窓の左側に錦江湾を挟んで桜島が見えてまいりました。

・・・やっぱり。桜島の山頂あたりにはどんよりとした雲がかかっていて、あの整った美しい山容を十分に見ることはできませんでした。ああ今回も、愛しの桜島はオレにつれない態度をとるのだろうか・・・。ちょっとサビしい気分になりかけたわたしに一切構うことなく、列車は終点である鹿児島中央駅に予定通りの時刻に到着いたしました。

到着して駅の外に出てみると、空は曇ってはいるものの青空が覗いて薄日が射しているところもあったりして、これなら街歩きにも支障はなさそうだな・・・よしよしいいぞいいぞ、と嬉しくなったわたしなのでありました。


まずは天然温泉の銭湯でひとっ風呂

外に出るとさっそく、駅の西口から歩いてすぐのところにある銭湯「みょうばん温泉」に向かいました。実は温泉天国でもある鹿児島には、市内のあちこちに天然温泉を引いた銭湯が営業していて、地元の皆さんの憩いの場となっております。ここも、そのような天然温泉銭湯のひとつなのであります。

浴室に入ると、浴槽はは深さの異なるものが縦に3つ連なっていて、奥のほうにいくに従ってお湯の温度が熱くなっていくという面白い構造。わたしはまず、一番手前の浅くてぬるめの浴槽から順ぐりに入り、一番奥の深くて熱い浴槽に入ってみると・・・これがもうけっこうな熱さ。軟弱者のわたしはすぐに上がり、深さもお湯の温度も中くらいである真ん中の浴槽に浸かったのでありました。・・・今年1月の別府旅行で、アツアツの温泉にはだいぶ慣れてきたかなと思いきや、しばらくあつ湯から遠ざかるとこのありさま。やれんのう。ワシもまだまだ修行が足りんのう。
浴室を見渡すと、入浴している方々の多くはご近所の皆さんという感じに見受けられました。一番深くて熱い浴槽でじーっと半身浴をなさっておられたおじいさんは、おヘソから下がまっかっかになっておりました。オトコだねえ。薩摩っ子だねえ。
地元の皆さんがゆっくりと憩う、古き良き銭湯そのものといった雰囲気の中で、わたしもいい気分でお湯に浸かることができました。湯上がりに飲んだコーヒー牛乳が、ポカポカになったカラダとココロに沁み渡りました。



鹿児島のビッグネームにご挨拶

温泉でカラダを清めたあと、路面電車に乗って市の中心街へと移動して、鹿児島の歴史エリアへとやってまいりました。鹿児島を代表するビッグネームの皆さんにご挨拶するためでした。
路面電車を降りると、降りそうに思えなかった雨がパラパラと落ちてきてきているではございませんか。慌てて折りたたみの傘を開きつつ、やれやれ今回もやはり天候に振り回される旅となりそうだなあ、とちょっとタメ息。ですが、ここでめげるワケにはまいりません。ASKAさんを見習ってワシもガンバって前に進むのだ!・・・いえ、もうASKAさんは関係ないのでありますが。


まずお伺いしたのが、来年の大河ドラマの主人公に決まった「西郷(せご)どん」こと西郷隆盛さんと、以前の大河ドラマの主人公であった天璋院篤姫さま。鹿児島に来たらやはり、このお二方にご挨拶しておきたいのであります。
そして、同じく歴史エリアにある鹿児島市立美術館。その中庭の片隅にある、この石像にも久しぶりにご挨拶いたしました。島津家第18代・家久の奥方であった持明夫人を象った「じめさあ」(持明様)であります。

器量にはあまり恵まれなかったものの、その心優しさで幸せな家庭を築いたという持明夫人の人柄を偲んで、毎年10月5日の命日にはこの石像におしろいや口紅を塗るという習わしがあるんだとか。器量に恵まれた女性もそれなりの女性(失礼)も、鹿児島に来られたおりにはぜひとも訪ねていただきたいのであります。
鹿児島に来たら、もう一人ご挨拶しておきたいのが、名君島津斉彬公。公を祀る照國神社にもお詣りし、今回の旅が無事で楽しいものとなるよう、お願いしたのでありました。



昼食はやっぱり「熊襲亭」の正調薩摩料理のコースで決まり!

照國神社でのお詣りを済ませると、時刻はお昼になろうという頃合い。わたしは、鹿児島に来たら昼食はまずここで、と決めているお気に入りの薩摩料理のお店「熊襲亭」に入り、黒豚しゃぶしゃぶと薩摩の郷土料理が満喫できるコースを注文いたしました。





お料理の詳細については、2年前に訪問したときの拙ブログでのご報告(鹿児島・オトナの遠足2015 第1回 薩摩魂のこもった郷土料理の数々に、真っ昼間から進む酒)でたっぷり記しましたのでそちらに譲りますが、突き出しと前菜盛に始まり、キビナゴの刺身、揚げたてのさつま揚げ、さつま地鶏のたたき、黒豚のとんこつ、そしてメインの黒豚しゃぶしゃぶと、いずれもお酒を飲ます気まんまんの薩摩魂が込められた正調薩摩料理の数々に、今回も真っ昼間から生ビールと焼酎が進むこと進むこと。締めに味わった酒ずしのアルコホル分も相まって、さきほどパラパラと降っていた雨にタメ息をついていたこともすっかり忘れ、いい機嫌になったのでありました。
ここで薩摩の美味と美酒を満喫するたびに、ああおいどんは薩摩にやってきたのでごわすなあ・・・と、ぎこちない薩摩ことばとともに、嬉しさがじわじわと湧き上がってくるのであります。
お会計のとき、鹿児島に来るたびにここに寄らせてもらってるんですよー、などと申し上げると、お店の方は店名入りのタオルをくださったのであります。
滋味豊かでお酒も進む正調薩摩料理の美味しさとともに、一人客にも親切に接してくださるお心遣いも、しっかり健在だった「熊襲亭」さんなのでした。

お店を出てすぐそばにある天文館のアーケード街に入ると、子どもたちに向けた「お仕事体験フェスティバル」が開催されていました。警察や消防、自衛隊、海上保安庁などが車両やパネルを展示していて、多くの家族連れで賑わっておりました。
白バイに跨ったり、小さな消防服を着せてもらったりして写真に収まるちびっ子たちもいたりして、実に微笑ましいのでありますが、そんな中に、ちょっと謎のキャラクターが。

おそらくそのご尊顔から、ご当地名産の黒豚をモチーフにしているものと思われ。・・・しまった、名前聞いときゃよかったなあ。


鹿児島の豊かな文藝文化を伝える「かごしま近代文学館」

天文館界隈をしばし散策したわたしは再び歴史エリアへと向かい、城山のふもとに建つ「かごしま近代文学館」を訪ねました。海音寺潮五郎、林芙美子、椋鳩十、梅崎春生、島尾敏雄、そして向田邦子などなど、鹿児島ゆかりの文学者たちの足跡や人となりを伝える資料を展示する施設であります。

海音寺潮五郎の展示スペースでは、未完の大作『西郷隆盛』執筆の過程を示す肉筆の原稿を展示。史料を書き抜いて現代語に訳すところから始まり、原稿用紙に清書するまで4段階を経て、じっくりと執筆していたことがよくわかります。
また、作家仲間に書き送ったという書状には、自らの一日がとぼけたタッチの絵とともに記されていて、飄々としてお茶目な文豪の一面が伝わってきました。

林芙美子の展示スペースでは、『放浪記』や『浮雲』といった代表作に加えて、児童向け作品の執筆にも力を入れていたことを伝えていました。特に戦後になってからは、「子どものための文学が忘れられていた」という思いから、より情熱を持って取り組んでいたのだとか。
そういえば、まだわたしは芙美子の書いた児童向け文学を読んだことがありませんでした。ちょっと読んでみたくなったなあ。

『山の太郎グマ』『大造じいさんとガン』などなど、数多くの児童向け動物文学を送り続けた椋鳩十の展示スペースには、動物の生態や人との関わりなどを取材したノートやメモの現物が展示されていて、椋の作品群が緻密な取材から得られた知見を活かして書かれていたことが伝わってきます。
椋自筆の書もいくつか展示されていたのですが、その中で強く印象に残ったのは、こちら。

「活字の森をさまよい思考の泉のほとりにたゝずむ」

ううむ、これは実にいい言葉だなあ。

『桜島』や『幻化』などの純文学を生み出す一方、ユーモラスな小説やエッセイも書いていた梅崎春生の展示スペースにも、梅崎の面白い言葉が紹介されておりました。

「何故酒を飲むか。そこに酒があるからである。」

ううむ、これもさっきの椋鳩十の言葉とは違うイミでいい言葉じゃのう。

『死の棘』で知られる島尾敏雄の展示スペースでは、島尾の両親が福島県相馬郡小高町(現在は南相馬市)の出身であることを伝えるとともに、東北についてのアンケートに寄せた島尾の言葉が紹介されていました。

「私の今住んでいる奄美と照応させて、東北は日本全体を眺める基本的な視点」

島尾の出自から育まれたこのような視点が、彼の唱えた「ヤポネシア」概念のもととなったことを、今回あらためて知ることができました。

そして、とりわけ充実しているのは、2階に設けられた向田邦子についての特設展示室です。エッセイ、小説、シナリオといった向田の作品世界を、自筆原稿や遺品、肉声を記録した音声や映像の組み合わせにより、立体的に伝えています。
小学生時代に過ごした鹿児島を生涯愛し続けていたという向田。鹿児島について書かれたエッセイの一節を抜き出して鹿児島市内の地図上に重ねたパネルからは、彼女と鹿児島との深い関わりが伝わってきます。子どもの頃、地酒を使って作られる郷土料理「酒ずし」を食べることができなかった「ウラミ」から、ドラマ『寺内貫太郎一家』に酒ずしを食べる場面を書いた、という微笑ましいエピソードも、そこでは紹介されていました。
この展示室を見学していると、なんだか無性に向田さんのエッセイが読みたくなってくるわたし。今回もまた、そんな気持ちがしみじみと湧いてまいりました。

これまで3回ほど訪れている「かごしま近代文学館」ですが、今回の見学でもいろいろなことを知ることができて、面白く拝見することができました。鹿児島の文藝文化の豊かさを、あらためてつくづく実感した次第です。
ちなみに、近代文学館には「かごしまメルヘン館」という施設も併設されております。童話の世界を立体化したトリックアートやミニアスレチック、絵本の閲覧スペースが設けられたこちらは、連休中ということで多くの親子連れで賑わっているようでした。


お待ちかね!天文館界隈呑み歩き

宿泊の予約を入れていたホテルにチェックインしてシャワーを浴びると、時刻は街に灯りがともる頃。わたしの中では鹿児島での一番のお楽しみである天文館界隈での呑み歩き、第1ラウンドのスタートであります。わたしは、かごしま近代文学館で目にした梅崎春生先生の、
「何故酒を飲むか。そこに酒があるからである。」
というありがたいお言葉に背中を押されつつ、暮れなずむ天文館界隈へと足を踏み出したのであります。

まず立ち寄ったのは、天文館での呑み歩きのときには最初に入ることにしている、おでんと薩摩の家庭料理がメインの老舗居酒屋「味の四季」であります。


まずは生ビールとともに、南九州ではお馴染みである鶏肉の刺身「鶏刺し」を賞味いたしました。きれいな赤色の肉は噛むほどに旨味が口の中に広がって、生ビールをぐいぐいと進ませてくれました。
生ビールを飲み干したあとは、やっぱり薩摩の芋焼酎。

最初に呑んだ「あらわざ」の水割りは、スッキリした飲み口でグイグイといけました。そしてお次はその名も「篤姫」をロックで。

篤姫さまが生きていた時代に黄麹で醸されていたというこの焼酎、その名に恥じないような高貴な香りが鼻腔と口中を大いにくすぐってくれました。こちらは少しずつ、じっくりと味わいつつ呑みました。
薩摩の芋焼酎と合わせていただいたのが、このお店自慢のおでんの数々です。さつま揚げとロールキャベツ、それに田楽仕立てのお豆腐。

やはり南九州ならではといえる、甘めのしょうゆダシでじっくりと煮込まれたこのお店のおでんは、繊細な旨さがそれぞれの具材にしっかりとしみこんでいて、芋焼酎の美味しさをより一層引き立ててくれます。最初に注文したおでん3つはたちまち胃に収まり、さらに3つを追加いたしました。
このお店のカウンターで独り呑んでいると、
「ああ・・・オレはいままさに天文館に来て呑んでるんだなあ・・・」
という感慨が、五臓六腑の底からぐいぐいと湧き上がってくるのであります。・・・って、さっきからいろんなコトがヒタヒタじわじわしみじみぐいぐいと湧き上がっているのでありますが、全部ほんとのことなのだから仕方ありません。わしはウソや捏造、風評やデマなんぞは書かんのだ。
「あの・・・暑くないですか?エアコンつけときますね」
そうお声がけされて前を向くと、以前このお店にお邪魔したとき、エアコンの真下にいたわたしに「寒くないですか?」と声をかけてくださった若い女性の店員さんではありませんか。いまもしっかり、このお店で頑張っておられたんですね。嬉しいなあ。
料理の美味しさも、お店の方の嬉しいお心遣いも、変わることなく健在であった「味の四季」。お腹もココロも満たされたわたしはお勘定を支払い、多くのお客さんで賑わっているお店をあとにしたのであります。

大型連休の真っ最中ということもあってか、天文館の飲み屋街は大賑わいでありました。活気のある盛り場を歩いていると、それだけでこちらも楽しい気持ちになってくるのであります。

わたしはしばし、賑わう夜の天文館を散策してから、こちらも鹿児島に来たら立ち寄ることにしている、ちょっと隠れ家的な居酒屋さんにたどり着き、中を覗いてみれば、すでにもうお客さんでいっぱいとなっていて、残念ながら入ることはできませんでした。隠れ家的とはいえ、もう40年近く続いている地元ではお馴染みの老舗。やはり多くの人に親しまれているということで、これは仕方ございません。わたしはお店のママさんに、明日空いてるようならまた来ますと伝えてそのお店をあとにし、さらに別のお店に向かいました。やはり、天文館ではお気に入りのお店である「はる日」であります。

さまざまな飲食店が立ち並ぶ小路の中にあるこのお店は、あの酒場詩人・吉田類さんも立ち寄られた老舗の酒場。中に入ると、年季を感じさせる八角形のカウンター。そしてその中には、お店を一人で切り盛りされているはるひママ。変わることのない雰囲気にホッといたしました。はるひママも、1年に1回しか来ないわたくしめのことを、それなりに覚えてくれておいでのようで、そのことにもホッといたしました。
このお店に置いてある焼酎は「白金乃露」という銘柄のみ。この日はちょっと蒸し暑さを覚えていたこともあり、水割りで呑むことにいたしました。クセがなく呑みやすい「白金乃露」はお湯割りで呑んでも美味しいのですが、水割りにしてもスッキリした飲み口で実に心地良く、カラダにすーっと沁み渡ってまいりました。
いや〜、この焼酎は水割りでもけっこういけるもんですねえ、などとわたしが言うと、はるひママは「ふーん、そうなの。わたしは呑まないからよくはわからないんだけど」とおっしゃいました。そう、ママはまったくお呑みにはならないのでありますが、にもかかわらず・・・いや、だからこそ、なのでしょうか、われわれ酒呑みのお客への接し方はまことに自然体で、それがお店の雰囲気をゆったりした居心地のいいものにしてくれているように思います。
明日は串木野のほうに行こうと思ってまして・・・というわたしに、はるひママは「串木野?うーん・・・あすこはなんかいい所、あったかねえ」などとおっしゃいます。・・・これまた、実に自然体で率直な言いようではありましたが、鹿児島県内にお住いの方とそうでない人間との、受け止め方の違いということなのかもしれませんな。おりしも、店内のテレビでやっていたローカルニュースでは、薩摩半島南部にある枕崎市で「カツオ祭り」が開催されていることを伝えておりました。
・・・ああ、今の時期は枕崎市でカツオ三昧というのもいいかもしれんなあ、もうずいぶん長いこと行ってないしなあ、枕崎・・・。わたし、ちょっと気持ちが動きましたが、ここは当初の計画どおり、まだ一度も足を運んだことのなかった串木野に行くとするか、と思い直しました。
お店に入ったときにはわたし一人だけだった店内には、いつしか何人かのお客さんが。はるひママは、それぞれのお客さんとも自然体で接しつつ、こちらのコップの焼酎がなくなったと見てとるや、すかさずお代わりをつくってくださいます。このあたりのさばき方も変わることなくお見事。「白金乃露」の呑みやすさも相まって、ついつい杯が重なります。
このお店の空間で呑むことができる喜びを、わたしはあらためてじっくりと噛みしめたのでありました。

近ごろはめっきり、呑んだあとのラーメンからは遠ざかっているわたしですが、鹿児島に来たらやはり、締めにはラーメンを食べておきたいということで、宿泊しているホテルからも近い場所にある「のり一(いち)ラーメン」に立ち寄りました。


鹿児島のラーメンというと、こってりした豚骨系のスープが代表的なのですが、こちらのラーメンは鶏ガラのあっさりしたスープ。それでいて旨味もしっかりあって、呑んだあとの仕上げにはうってつけの美味しさです。スープに散らされた揚げ玉ねぎも、いい感じにコクを加えていたりしていて、わたしはついつい、スープをほとんど残さず飲み干してしまいました。
お店を出るとき、店先には何人かの方々が並んでいて、席が空くのを待っておられました。なかなかの人気店、のようでありました。

お腹もココロもしっかりと満たされたわたしはホテルに戻ると、ベッドにバタンと横たわり、そのまま眠りについたのでありました。

(2日目につづく)