大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本―「大世界史―現代を生き抜く最強の教科書」(池上彰・佐藤優:文春新書)

2015-11-03 16:46:47 | 日記
「自分はこれまでどう生きてきたのか。今どんなところに立っているのか。これからどう生きるのか。要するに、『歴史』を知るとは、生きていくために『自分』を知ることなのです。」(池上)「一人の人間が、人生の中で経験できることには限りがある。しかし、歴史を学ぶことによって、自分では実際には経験できないことを代理経験できる論理だけでは推し量れない、現実の社会や人間を理解するための手がかりになるからです。・・・この代理経験は、いわば世の中の理不尽さを経験することでもあります。しかしだからこそ、社会や他人を理解し、共に生きるための感覚を養ってくれるのです。」(佐藤)「日本の歴史だけでなく、世界の歴史のなかに位置付けなければ、『日本人としての自分』も、今どこにいるのかわからなくなる」(池上)
現代社会の「解説者」として出づっぱりの二人による「世界史」に関する対談は、このような視点でなされています。自分自身を社会のなかに位置付ける、それも日本だけでなく世界の中で考える、さらに現在だけでなく歴史の中で見るようにする、ということの大事さが説かれており、このことはとても狭い「業界」の中にいる私たちにとっても必要であることをあらためて考えさせてくれます。(「現代を生き抜く最強の教科書」というサブタイトルは、上記の問題意識からつけられているのでしょうが、このセンスはいただけません。)

具体的な内容としては、「中東こそ大転換の震源地」「オスマン帝国の逆襲」「習近平の中国は明王朝」「ドイツ帝国の復活が問題だ」「『アメリカvsロシア』の地政学」「『右』も『左』も沖縄を知らない」「『イスラム国』が核を持つ日」「ウェストファリア条約から始まる」の各章からなっています。章のタイトルからはわかりにくいところもありますが、中東・トルコ・中国・ドイツ(EU)・米露・「イスラム国」と言った現在の大きな政治課題を歴史の中に簡潔に描き出しています。また、その中で、日本の課題である「沖縄」の世界史的な意味を考えることの必要性を示しています。目の前の問題についてもそこだけを見るのではなく、まさに「世界史」のなかに位置付け、歴史に学んで考えることの大事さが、現在直面する課題との関係で説かれており、他の問題を見るに当たっても参考になります。

なお余談的なことですが、佐藤優が(議員などへのブリーフィングにあたって)「『先生の御説はごもっともです。しかし、こういう風にしますと先生の真意がより伝わるのではないでしょうか』と言って、話をひっくり返すよとは、普段からやっていました」と言い、池上彰が「たいしたものですね。私などは、つい、『えっ、そんなことも知らないの』といった態度をとってしまいます」と返しているところに・・・「わかりやすく話してくれる池上さん」と「傲岸不遜な佐藤優」というイメージ(私だけ?)に反する面白さを感じました。学ぶべきことなのかもしれません・・・・もう無理ですが・・・。