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2008.2.7 昆布の芳香

昔、私が、まだ勤めていた頃のことです。
職場では、連続休暇と言って、1年に1回、1週間連続で休みが
貰えました。

私は、旅行をしない人ですし、家に仏壇を守っていましたので、
その休みをお盆に合わせて取りたいと申し出ると、理由が理由
なので、毎年8月のお盆の1週間を休みにシフトして貰えました。
お盆の1週間は、他の企業もほとんど休みで、職場は閑散期なの
で、ちょうど、良かったこともあります。

そのお盆の1週間は、仏壇に精進料理を供えます。
普段は全く使わない、仏壇用の食器類を出して来ます。
漆塗りの足付きの小さなお膳の上に、やはり漆塗りの小さなお椀
やお皿や小鉢、そして小さなお箸が、一組になっているものです。
それらの食器は、杯ぐらいの大きさです。

それに入れる料理を作るのですが、全部極少量です。
ご飯、おつゆ、煮物、酢の物、和え物の5種類だったと思います。
もちろん、仏事ですから、生臭ものは使えませんので、私は昆布
だけで出汁を取り、それらの料理を煮ていました。

すると、兄夫婦がお墓参りの為に車で迎えに来てくれて、家の中
に入って来た途端、「うわ~、良いニオイ~!」と言ったのです。

私は、仏事なのでかつお節は使えない為、美味しいものをお供え
出来ないなと思いながら作っていました。
昆布が、そんなに素晴らしいものだと、気付いていませんでした。
出汁の良い香りは、かつお節が出すものと思っていました。

その時、夏なので食べ物はすぐ腐る為、どの料理も極々少量ずつ、
お供えする分だけを料理していました。
そんな少量の料理に使う出汁から立ちのぼる香気が、それほど迄、
素晴らしいものであったことに、私は衝撃的な感動を覚えました。
(それ迄の私は、昆布に香りがあることさえ知りませんでした。)

驚いた私は、改めて料理を味わってみると、素晴らしい美味です。
そうか!昆布の素晴らしさを、私は知らなかったんだと、始めて
思い知りました。

それから、今に至るまで、昆布の芳香に感動し、どれだけ癒され
てきたか分りません。
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