トリオTS-510の修理記録(その5:送信部)(平成27年3月16日)
受信部の修復については、平成26年10月25日に完了しておりますが、送信部については冬季の厳しい寒さのためため修復作業を中断しておりました。
3月となり春の暖かさも次第と感じられるいい季節となりました。
縁側での修復作業も可能となったので、やっと重たい腰を上げてTS-510の送信部の修復作業を開始することとしました。
送信機の電気的試験の前に、正面のパネルにある送信機のプレートとロードのダイヤルのすべりが悪く、プレートダイヤルを廻すとロードのダイヤルも廻る事態となってました。
軸が二重構造となっていますが、どうも錆などでスムーズな回転ができていないようです。
軸の中に注油することで、スムーズな回転となり、ダイヤル回転の問題は解消しました。
次に本題の電気的試験に入りますが、トランシーバーの性格上、送信部のほとんどの機能は受信部の試験で確認できています。
このため、空中線のかわりにダミーをセットし、いきなりSWをSENDに倒します。
そうするとIPは0㎜Aを示し、はなから終段にてトラブル発生です。
数回SWを送・受信に切り換えていると、やっと20㎜Aの電流が流れ始めました。
数十年送信部も動作していなかった関係と思いますが、リレーなどの接点不良などが原因と思われます。
ここで、終段のアイドリング電流として、BAISを60㎜Aへ調整する必要があります。
手順どおり、BAISのVRを調整してみましたが、MAX20㎜Aまでで、それ以上の電流をあげることができません。
モードをCWにしてもIPに変化はありません。
ついでに、メータをRFモードにしてもSWR計をみても送信電力はありません。
まー最初から送信動作が正常とは思っていませんが、かなり故障原因は深刻のようです。
まず、BAIS電流が60㎜Aまで調整できないこと。
もう一つは、送信電力が全く発生していないこと。
当面の問題は、この2点です。
基本に立ち返って、送信部の真空管の各部の電圧測定することとしましたが、準備作業しているとソリッド抵抗器が1つ破断しているのを目視にて発見しました。
故障個所送信部ドライバー段の陽極側のソリッド抵抗器(R4 100Ω)でした。
これではドライバー段で送信信号は途切れることになり、終段での送信電力はありません。
早速、ソリッド抵抗器の交換作業をおこないました。
今度は、送信電力は発生しましたが、10W程度のままです。
原因は終段のBAISが低いままのためのようです。
トリオTS-510では、新たに増幅型ALCを採用していますが、どうもこのトランジスター(2SC856)の動作が怪しそうです。
ただし、このトランジスターの筐体が錆ておりコレクターマークの判読ができず、どの端子がC、E、Bがわかりません。
トランジスターの端子と部品のの接続状況から端子を推定する必要がありますが、狭い場所に密集したかたちで配線されており、判読に時間がかかりそうです。
とりあえず、トランジスター(2SC856)を購入することとしました。
WANTED オークションにて購入
映像出力増幅用シリコントランジスタ 日立 2SC856
映像出力増幅用としてリリースされた高耐圧トランジスタです。
日立が開発したLTP技術が遺憾なく発揮されています。
1975年頃に保守品種指定され、1979年頃に廃品種となりました。
一般に映像増幅用品種は高周波汎用のトランジスタであれば何でも良い、と考えがちです。
しかし実際にはDC帯から5MHz位までを平坦に増幅する広帯域アンプとしていくつかの要求項目があります。
1)ゲインが高いこと
2)コレクタ容量の小さなこと
3)直線性が良いこと(歪みが少ないこと)
こういった基準を満たす品種が晴れてその座に君臨できるわけです。
【諸元】
製造元:株式会社日立製作所
構 造:シリコンNPN三重拡散LTP型
【最大定格】
コレクタ・ベース間電圧: 150V
コレクタ電流 : 50mA
コレクタ損失 : 300mW
トランジョン周波数 : 180MHz
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