minga日記

minga、東京ミュージックシーンで活動する女サックス吹きの日記

ホンジンガー・ゲリラセッション

2008年09月26日 | ライブとミュージシャンたち
「永田いる?今、店にホンジンガーが来てるんだけど、ちょっと来ない?」

ペーパームーンのいっきさんから電話があった。ホンジンガーといえば、セシル・テイラーのグループなどでも活動した、ヨーロッパフリーを代表するチェリスト。昨年「怪物ライブ」を観に行って抜きん出て素晴らしかったのを思い出す。トシキも今度国立で向島ゆり子(vln)さんとトリオで演奏する事になったので、顔合わせしたら、といういっきさんの親心か?英語が全くできないので、間がもたないから助けを呼んだのか(苦笑)?いつも面白そうなアーティストが来ると私達は呼び出される。キップ・ハンラハン(NYの音楽プロデューサー)も、(故)多田雄幸さん(ヨット乗り)とも、こうしてペーパームーンで出会ったのだから、何がなんでも行かなくては・・・。

しかし残念ながら、私はレッスンがある日なので、家で留守番をしていたら、今度はトシキが電話してきた。

「これからホンジンガーが演奏するから、サックス持って来ない?」

えええ?どういう展開?と思いながら、レッスンを急遽とりやめ「ペーパームーンにおいで」と生徒に連絡をとり、自分も楽器を持ってペーパームーンに駆けつけた。

店に入ると、いきなりホンジンガーさんはにこにこ優しい笑顔で握手。「さっきまであなたのCDを聴いていたんですよ。ビューティフル!」ああ、なんて嬉しいお言葉!

この日、彼は京都から昼間新幹線で戻ったのだが、車中でキップを無くし、東京駅で全額を払わされたそうだ。今回彼のツアーをプロデュースしているOff Noteのkさんがあまりに気の毒だ、という事でペーパームーンに連れていき、演奏をしてカンパを募ろう、という事になった・・・。そういう事なら、人肌脱ごうじゃないの。

20年くらい前、ペーター・コヴァルト(故、ドイツのベーシスト)とこの店でライブをやった時の事が蘇る。ヨーロッパのフリーのミュージシャン達は「いつ、どこでも、誰の挑戦も受けます!」的スタイルを非常に面白がる一匹狼たちが多い。この日も私とトシキ以外に、二胡を練習中の若者が一人、さらに後半にはレッスンの予定だった私の生徒Kもやってきて一緒にセッション。あっという間の2セット。いやあ、楽しかった。ホンジンガーのチェロの音色は美しく、しかも力強い。包容力があり、人間もめちゃめちゃ面白かった。

演奏が終わると、すっかり旧友のように打ち解けてしまうところが音楽の素晴らしい所だけど、アムステルダムにかつて住んでいたというだけで私たちは彼の話に興味深々。

「アーティストはみんなアムステルダムが好きだね。近藤も住んでいるし。デクスター(ゴードン)やドン(バイロン)もアムスでアートの勉強していたし。」
「○●が自由だから?」
「あはは。今はコーヒーショップの中で吸えないんだよ。みんな店の外に出て吸っているけどw。でも、○●が好きと言えば、昔、フェラ・クティ(アフリカのサックス吹き)が初めて海外公演を行う時、飛行場に○●を沢山詰めたビニール袋を両手にぶらさげて行って、税関でいきなり逮捕されたんだ。ルイ・アームストロングなんて、Tpのケースを2つ持って、片方には○●を沢山詰めこんで、一緒の飛行機に乗り合わせたニクソン(あの大統領の!)にひとつ持たせて税関を堂々と通ったんだよ。」

トシキが「で、あなたも相当好きなんでしょう?」と聞いたら
「いや、私はそれほどでもない。まあ、勧められて断った事は一度もないけどね。」ときっぱり。

お茶目なおじいさん、と思いきや、まだ59歳だった。意外と若いんですね。音楽家としては。失礼しました!

「若いといえば、オーネットに2ヶ月前、ジャズフェスで会ったけど、素晴らしかったな。」
「私達も一昨年くらいに、オーネットのライブを観ました。ステージを歩く姿はよぼよぼだったのに、サックスを吹き出したら途端に若々しくなって、驚きました。」
「うん、晩年のカザルスを観た時も、彼はオーケストラの指揮をしたんだけど、指揮台にあがるまで、介添えがいたのに、上がった途端しゃきっとして、飛んだり跳ねたりもの凄くエネルギッシュな指揮をしてみんな驚いたんだ。演奏が終わった途端力尽きて、また介添えの人たちが2人がかりでステージを降りていったけど。」
「そういう時って、音楽の神様が降りて来ているんでしょうね。」
「神様って言えば、オーネットが『神は犬だ』って!丁度そんな会話してたんだよ。」

そっか、Godの反対はDogか。なんだか深いなあ・・・。

楽しい会話がどんどん弾むと同時に焼酎をどんどんおかわりするホンジンガー。『俺はブロッツマンみたいな大酒飲みじゃないよ。』と言ってたが、いやいや、貴方もかなりの酒豪です。それにしても、京都からの新幹線チケットをなくして落ち込んでいる様子はみじんもなく、楽しそうに何度も何度も私達と乾杯をして「さあ、もう帰りましょう。」と友人に促されると、後ろ髪をひかれるように、渋々チェロを担いで帰って行く後ろ姿が可愛かった・・・・。

ホンジンガーさんは10/25まで様々なところでライブをする予定。犬と神が一緒に取り憑いたようなチェロ奏者は、一見(聴)の価値があります。今度はイタリアで会いたいですね!素敵な出会いに、そしてペーパームーンに感謝。



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2 コメント

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Unknown (アフリ)
2008-09-26 21:26:35
ほぉ~、知っていたら、駆けつけたかったわん、わん !
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Unknown (ゆか)
2008-09-26 22:59:25
かっこよすぎです
ドラマみたい。。。
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