実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-原始的不能の消滅?(3)

2015-03-03 11:30:58 | 債権総論
 原始的不能=無効を採用せず、瑕疵担保責任も債務不履行構成を採用する改正法の目指す方向性は分からないわけではない。原始的不能論が必ずしも世界的な潮流だったわけでもなさそうであり、方向性としてはやむを得ないのかもしれない。

 ただ、心配なのは、債務不履行に基づく損害賠償責任における「帰責事由」の問題が絡む。
 原始的不能という場合、伝統的な議論で契約締結状の過失が問題となるような場面のみが問題となるわけではなく、様々な場面が考えられるはずである。例えば、太平洋のど真ん中で海に落としてしまった宝石を拾い上げる契約のようなものが、社会通念上の原始的履行不能の例として、教科書事例的に説明されることがある。そうした様々な場面において、もし、帰責事由を広い意味での過失責任と捉えないとするならば、過酷な賠償義務が生じかねないのではないかという疑問が生じるのだが、どうなのだろう。あるいは、このような教科書事例的なことなど、実社会で起こるはずがないという暗黙の前提があるのだろうか。

 原始的不能=無効の放棄を採用し、かつ、もし帰責事由の無過失化が絡み合った場合、どのように機能していくことになるのだろうか。私には漠然とした不安感が残ってしまう。変なことにならなければいいのだが。