前回までの議論に対しては,取消の効果については無効の場合も含めて民法119条以下で規定し,解除の効果については民法545条以下で規定するなど,それぞれ独自に規定を設けており,意識的に別々の効果を規定しているのだから,両社を同じように考えることなどできないという反論もあるだろうし,むしろ,そのような考えの方が当然だったかもしれない。が,よく見ると,一方には規定はあって他方には規定がないという部分(例えば,取消における追認や期間制限などは,解除には規定がない。)はあるが,全体としてそれぞれの規定の内容の多くが必ずしも矛盾していないことに気づく。大変に興味深い点である。唯一,矛盾している点があるとすれば,制限行為能力者の返還義務(現受利益の返還)であろうか。解除の場合の返還義務は原状回復義務なので,この点だけは,矛盾していると言わざるを得ない。が,それ以外は矛盾していないか,あるいは一方にしか規定がないという規定ばかりなのである。
もし,前回までの議論を前提に,条文が以上のような内容であることを総合的に考えると,取消の効果の規定と,解除の効果の規定を相互乗り入れさせて考えることができるのではないか。つまり,民法120条以下の規定の中で解除の方に規定がなければ,解除の効果としても民法120条以下を類推適用する,あるいは,民法545条以下の規定の中で取消の方に規定がなければ,取消の効果としても解除の規定を類推適用する。という考えがあり得そうな気がするのである。もしこのように考えれば,解除の場合に,追認や期間制限の規定が類推適用でき,取消の場合に原状回復義務を類推適用できる。制限行為能力者の法律行為の取消による返還義務だけは,原状回復義務の特則と考えればよい。
なお,第三者保護規定については,債務不履行解除には存在し,取消の方にはその種の規定はない。しかし,詐欺取消など(特殊な規定を挙げると,夫婦間契約の取消も含めるとができるか)個別に第三者保護規定を設けている趣旨からすると,第三者保護についてだけは,解除の規定を取消の場合に類推すべきではなく,債務不履行解除の場合と詐欺取消など,その種の規定が存在する場合のみ認め,その他の場合は基本的には認めないと考えるべきであろう。
以上が,最近の民法の教科書のうち,不当利得の部分を読んだ限りでの私の感想的な見解である。もっと専門的に研究すれば,取消と解除の異同を含め,いろんな議論や文献があるのだろうし,既に議論し尽くされている部分かもしれない。しかし,専門家ではない私にはそれらを研究する時間も能力もない。あくまでも研究家ではない実務家の戯言である。
もし,前回までの議論を前提に,条文が以上のような内容であることを総合的に考えると,取消の効果の規定と,解除の効果の規定を相互乗り入れさせて考えることができるのではないか。つまり,民法120条以下の規定の中で解除の方に規定がなければ,解除の効果としても民法120条以下を類推適用する,あるいは,民法545条以下の規定の中で取消の方に規定がなければ,取消の効果としても解除の規定を類推適用する。という考えがあり得そうな気がするのである。もしこのように考えれば,解除の場合に,追認や期間制限の規定が類推適用でき,取消の場合に原状回復義務を類推適用できる。制限行為能力者の法律行為の取消による返還義務だけは,原状回復義務の特則と考えればよい。
なお,第三者保護規定については,債務不履行解除には存在し,取消の方にはその種の規定はない。しかし,詐欺取消など(特殊な規定を挙げると,夫婦間契約の取消も含めるとができるか)個別に第三者保護規定を設けている趣旨からすると,第三者保護についてだけは,解除の規定を取消の場合に類推すべきではなく,債務不履行解除の場合と詐欺取消など,その種の規定が存在する場合のみ認め,その他の場合は基本的には認めないと考えるべきであろう。
以上が,最近の民法の教科書のうち,不当利得の部分を読んだ限りでの私の感想的な見解である。もっと専門的に研究すれば,取消と解除の異同を含め,いろんな議論や文献があるのだろうし,既に議論し尽くされている部分かもしれない。しかし,専門家ではない私にはそれらを研究する時間も能力もない。あくまでも研究家ではない実務家の戯言である。