実務家弁護士の法解釈のギモン

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一般社団,一般財団法人法(9)

2009-09-24 17:37:09 | 一般法人
 準則主義(3)

 設立の準則主義を採用したため、法人の設立手続きそのものは、従前の公益法人よりは厳格な手続きが用意されており、株式会社の発起設立と、非常によく似ている。具体的な手続の中身は、条文を見て頂くしかなかろう。
 設立に関して一点だけ指摘しておく。
 一般財団法人の成立の付随的効果の一つとして、設立者の拠出財産は、一般財団法人成立の時から当該一般財団法人に帰属する(164条1項)。ただし、遺言による拠出の場合、遺言が効力を生じた時から一般財団法人に帰属したものとみなされる(164条2項)。この164条2項は、改正前民法42条2項と同じ規定である。改正前民法のこの規定の趣旨は、一般的には果実その他の利益が設立者の意思に反して相続人の得るところとなるのを阻止しようという趣旨であると説明されるが、法人設立が遺言者死亡時に遡及すると解する学説もあるようである(以上の議論は、新版注釈民法(2)218頁参照)。一般財団法人においては、準則主義の下、法人格取得時期が例外なく設立登記時とされている(163条)以上、法人設立が遡及するという説明はおそらく不可能となるであろう。そして、趣旨としては一般に説明されているとおりだとしても、結局、法人格を取得していない設立登記より前に拠出財産が一般財団法人に帰属する理論的な説明は出来ていないように思える。解釈論上は、遺言の効力発生と同時に、権利能力なき財団たる「設立中の財団」(会社法における、設立中の会社の議論と同じで、設立中の財団は、設立後の一般財団法人と同一性を有する)が形成され、そこに拠出財産が帰属すると説明することが可能ではないだろうか。