実務家弁護士の法解釈のギモン

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裁判上の担保の法的性質と権利行使方法(6)

2013-06-03 11:40:31 | 最新判例
 実は、私が実際に行った担保に絡む事案で、はたと困ってしまった事案がある。それは民事保全における担保である。
 事案を単純化すると、金銭請求の本訴を提起すると同時に、債務者の銀行預金を押さえるために仮差押えの申立もしたのである。仮差押えは認められたが、わずかな銀行預金しか存在せずほとんど空振りに近かったので、すぐに仮差押えの申立を取り下げ、同時に権利行使催告による担保取消の申立をしたのである。
 ところが、裁判所は金銭請求の本訴が完結していないとして担保取消の申立を認めなかったのである。私は、仮差押えの申立を取り下げたのであるから、それだけで当然に権利行使催告による担保取消が可能であると考えていたのだが、裁判所はそうではないというのである。本訴を提起していなければよいのだが、本訴が提起されている以上ダメだというのである。一体これはどういうことか。私は困ってしまった。

 民事訴訟法79条3項の権利行使催告による担保取消の規定は、「訴訟の完結後」と規定されている。これを裁判所は金銭請求の本訴を意味していると理解するのである。
 たしかに、訴訟費用の担保に関する権利行使催告の担保取消であれば、当該訴訟が完結しなければ、権利行使催告による取消を認めることができるはずがない。
 しかし、ことは民事保全における担保の問題であり、訴訟費用の担保の問題ではない。そして、民事保全法4条2項では、単に担保取消に関する79条を無条件に準用しているだけであるから、私は、同条3項でいう「訴訟の完結後」とは、民事保全の完結後と読み替えて理解すべきものと思っていたのである。
 そのため、民事保全が取り下げられ、あるいは取り消されれば、当然に権利行使催告による担保取消が可能だと思っていたし、今までの弁護士経験上、民事保全を取り下げた後の権利行使催告による担保取消に苦労をしたことはなかった。
 が、今振り返ればそれはすべて本訴提起前の民事保全の取り下げの事案だったかもしれない。

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