実務家弁護士の法解釈のギモン

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手形学説ー実務から見る創造説のおかしさ(5)

2018-09-19 12:58:53 | その他の法律
 さらに言えば、株券については、有因証券であるし、株券を発行する前には、株主を権利者とする株式という権利が既に発生している。そうだとすれば、株券作成により株式という権利が発生するという考えは採用し得ない。典型的な創造説は、無因証券である手形や小切手だからこそ採用しうる考えである。
 もっとも、創造説に近づけて、既に権利として発生している株式が、株券作成時に株券に結合されると考えることも不可能ではないかもしれない。しかし、そのように考えると、株券作成から株券の交付までの間、一時的に株券作成者であり作成時に現に株券を所持する会社が、株式に対する事実上の支配を得てしまうことになる。あまり好ましい状況とは思われない。
 なので、株券の場合は、株券が権利者である株主の手元に届いて、はじめて株式という権利が株券に結合すると考えるべきであるように思う。したがって、株券として作成した紙切れを株主に交付することによって、はじめて有価証券としての株券として成立すると考えるべきであるように思う。
 社債券についても、有因証券である以上、社債権者に交付されてはじめて有価証券としての社債券として成立すると考えるべきだろう。そのことは、記名社債であろうと無記名社債であろうと、変わらないだろう。

 株券や社債券については、学者によるもっと充実した研究があるとは思う。ここに書いたことは、あくまで私の思いつきである。

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