実務家弁護士の法解釈のギモン

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ストックオプションの付与と有利発行(4)

2009-08-12 11:11:50 | 会社法
 そもそも、オプション価格理論は、日本の制度でいう新株予約権のための理論そのものではなく、市場取引として成立しているオプション取引(しかも、株式のオプションだけではない)に関する理論であって、買う権利、売る権利の売買の際の客観的な適正売買価格算出のための理論だと理解している。そうすると、売買されることが想定されないストックオプションとしての新株予約権について、オプション価格理論は当てはまらないのではないかと思うのである。現に、前回の記事で述べたとおり新株予約権を譲渡することによって現金化することは想定されない。ストックオプションとしての譲渡制限新株予約権そのものには、客観的価値はないとしか言いようがないと思うのである。したがって、私は、ストックオプションとして譲渡制限新株予約権を無償で付与するのは、有利発行に当たらないと解すべきではないかと思うのである。
 私は、経済理論を法解釈に応用していく必要を強く感じている方であり、オプション価格理論の新株予約権への応用も当然必要なことだと思われる。しかし、どのような方法での新株予約権の発行であっても、すべてオプション価格理論を適用するような、経済理論の無批判な取り込みに対しては、また警戒を感じるのである。何のためのオプション価格理論なのかを考えれば、ストックオプションとしての(譲渡制限)新株予約権の発行の場合は、オプション価格理論は適用できないという結論が導き出せると思うのだが、違うだろうか。

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