実務家弁護士の法解釈のギモン

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議員定数不均衡訴訟の法理(4)

2012-12-04 09:57:02 | その他の法律
 最高裁の判断手法を正当化する別の観点からの指摘として、選挙無効訴訟は機関訴訟なのだから具体的権利侵害がなくてもいいのだという言い方もあるかもしれない。
 しかし、選挙無効訴訟が機関訴訟だと言われる所以は、訴えを起こした当該選挙人の選挙権そのものが侵害されていなくても訴えを提起できるとしている点にあるだけであり、選挙無効訴訟そのものが、本来的に神奈川県選挙区で違法があったから東京都選挙区も無効にしうるという構造にはなっていないことは、既に述べているとおりである。
 あくまでも、神奈川県選挙区で違法があった場合に、その違法が神奈川県選挙区の個別の選挙人の選挙権自体を侵害していなくても、その選挙人も神奈川県選挙区選挙の無効を求めて訴えを提起できるというだけである。これが選挙無効訴訟の構造である。

 こうした選挙無効訴訟に付随して憲法違反を主張する以上、いくら憲法訴訟だからと言っても、あるいは定数配分規定全体が違憲無効だからと言っても、さらには機関訴訟だからと言っても、どこの選挙区でも選挙無効訴訟を提起できるということにはならないような気がしてならないのである。

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