実務家弁護士の法解釈のギモン

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特許の間接侵害(4)

2010-06-01 10:09:34 | その他の法律
 とりあえずは,1号と4号(すなわち,平成14年改正前の特許法101条)を前提とするが,私が思うに,当該特許に「のみ」用いる物の譲渡等を特許侵害と見なす実質的な理由を直感的に考えると,そのような物を譲渡等しているとすれば,通常その譲渡先その他の場所で,特許侵害がなされているとしか考えられないのであり,そのような場合に直接侵害がどこで行われているかが仮に立証できなくても,間接侵害として特許侵害と見なそうとしたのではないかと思われるのである。したがって,間接侵害が規定された法意は,前回ブログで指摘した⑤のような事案を典型的に想定しているのではないかと思われるのである。
 いかにも,素人的直感に頼る法意の解釈であるが,特許法の専門家ではない,特許法の素人だからこそ,素直な解釈ができるのではないかと思っている。

 問題は,この法意から演繹的に導かれる結果であるが,特許に「のみ」用いる物を譲渡したとしても,例外的に特許侵害が行われていないことが判明した場合には,どこかで直接侵害が行われているという仮説が崩れる以上,当然直接侵害でもなければ,間接侵害としてもいけないのである。つまり,前のブログで述べた①から③のような事例は,やはり間接侵害としてはいけないと思うのである。
 そもそも,直接侵害ではないことがはっきりしているのに,間接侵害として差し止めや損害賠償の対象となる実質的理由はないはずである(ただし,平成18年改正後は,③は特許侵害となることに間違いはない。)。

 以上のような結論は,独立説,従属説とも,その説を貫徹することなく修正を加えてきていることからも明らかなように,方向性としては間違っていないのではないかと思っている。
 しかし,そうであれば,独立説・従属説という学説より,修正を加える必要の少ない法律論が存在しないか。私はあると思っている。つまり,特許法101条は,「みなす」として文言上は間接侵害について特許侵害を擬制しているが,これを「推定する」と読み替えて理解するのである。いわば,法律上の推定説である。つまり,原則としては間接侵害の事例は特許侵害とされるが,間接侵害と主張された側で特許侵害をしていないことを立証すれば,責任を免れると解するのである。

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