実務家弁護士の法解釈のギモン

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手形学説ー実務から見る創造説のおかしさ(3)

2018-09-05 11:05:34 | その他の法律
 最近のNHKの番組で、「チコちゃんに叱られる」という番組がある。チコちゃんの質問に答えられなかったり間違えたりすると、チコちゃんから「ボーッと生きてんじゃねーよ!」と言われて叱られる。
 しかし、面白い考え方が浮かぶときとは、実は、ボーッとしているときだったりする。最近、ボーッとテレビを見ているときに、なぜか、ふと次のような考えが浮かんできた。

 手形上の権利は、振出人が手形を作成した段階でやはり成立する。創造説である。ただし、その場合の手形権利者は、振出人ではなく受取人である。文言証券である手形の記載がそうなっているのだから、受取人が権利者としか理解し得ない。受取人を手形権利者とする手形を、手形の作成という振出人の単独行為で発生させることができると考えるのである。
 しかし、受取人が何ら関わっていない段階なので、手形権利は受取人には直ちに帰属しない。言ってみれば、効果不帰属状態であり、無権代理人の法律行為の効果と似ている。もっとも、振出人が手形を作成する状況をよく考えてみると、債権者である受取人のために債務者たるべき振出人が手形権利を作出するのであるから、振出人が受取人のために自己契約をしている状況とも言いうるのではないか。ただし、受取人からの授権がないから、手形上の権利は受取人に帰属しない。これを受取人に帰属させるのが手形の交付である。受取人が手形を受け取ることが、自己契約における相手方の追認のようなものである。
 以上のように考えることは出来ないのだろうか。

 技巧的な考えであることは承知の上である。しかし、所詮、創造説そのものが技巧的であるから、それをもう少し手形要件に即した形で考え直しただけのことである。

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