実務家弁護士の法解釈のギモン

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改正相続法-遺留分侵害額請求の法的性質(6)

2019-01-23 11:39:47 | 家族法
 確かに、これまでの判例が明示するところでは、遺留分減殺請求権を形成権として構成し、遺留分減殺請求権の行使により遺贈の目的物に当然に共有持分が発生するという理解をしているが、純粋な相続分の指定のみがなされた遺言や、割合的包括遺贈が遺留分を侵害する場合において減殺請求権が行使された後の事後処理は、実務では遺留分権利者を含めた形での遺産分割協議により行っていたようである。
 なぜなら、相続分の指定のみの遺言や、割合的包括遺贈の遺言では、どの遺産がどの相続人(受遺者)に帰属するのかが決まっていないので、いくら形成権だと行ってみても、遺留分権者の遺留分減殺請求後も、共有持分の発生等の議論ができず、せいぜい相続分の発生が形成されるとしか言いようがないからである。

 そして、最高裁の判例の中にも、明示的にこの趣旨を判示したわけではないが、手続の流れからして、以上のことを当然の前提としているとしか考えられない判例も存在するのである。