実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-契約解除と危険負担(3)

2015-07-15 10:32:41 | 債権各論
 改正案での解除の規定は、催告解除の場合と無催告解除ができる場合という整理のし直しが行われ、要件的にも多少の改正はあるが、おおざっぱには従前の解除の規定とそれほど大きい変化はない。当然、条文上、従前どおり法律要件として帰責性の必要性について言及はない。その上で、双方無責の場合の処理として危険負担の規定が残ったのである。
 債権法改正に関する経緯を知らないまま、現行法の条文と解釈を前提とした上で、以上のような改正案の解除の規定と危険負担の規定双方をにらめっこすると、現行法の解釈のように、債務者無責の場合は危険負担であり、解除はそれ以外(つまり債務者有責)の場合という棲み分けのまま改正されたようにも見えてしまうのである。

 これは、現行法でも解除の要件として債務者の帰責性が明文では記載されていないことに原因がある。それでも解釈上債務者の帰責性を要件とするとしていたものを、帰責性を要件としないように立法的に変更しようとする場合に、立法技術的にはどうするか、という問題になってくるのである。なかなかに難しいことはわかるであろう。
 それでも危険負担の規定が全面的に削除となれば、そこから読み取ることはできる。しかし、債務者無責の場合の債務者主義的な危険負担の規定が残ってしまったのである。
 だから、改正内容について、その経緯を知らないままに、現行法とその解釈を前提にそれとの比較で改正案の見た目だけを追うと、解除に帰責性を不要とする改正を行っていることが、非常に分かりにくくなってしまったのである。