実務家弁護士の法解釈のギモン

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特許の間接侵害(2)

2010-05-25 16:01:43 | その他の法律
 間接侵害についての従前の議論,すなわち,1号と4号に相当する規定しか存在しなかった時代の間接侵害の議論として,独立説と従属説の対立が存在した。
 私の理解では,独立説は,間接侵害がなされた場合は,特許権の直接侵害がなされたか否かにかかわらず,これとは独立して特許侵害を認めようとする説で,従属説は間接侵害が特許侵害となる場合は,あくまでも直接侵害がなされることが前提となっている場合だとする説だと,理解している。
 具体的に,どのような場合に差が出てくるかというと,①実施権者の下請けとして当該特許にのみ用いられる部品を製造し,実施権者に販売した場合に,特許法101条1号や4号の間接侵害に該当するか否か,②特許の効力は,試験や研究のためにする特許発明の実施には及ばないところ(特許法69条1項),当該特許にのみ用いられる部品を,当該特許の試験研究のために製造販売した場合に間接侵害に該当するか否か,③特許発明品を輸出する行為は,平成18年改正前までは,日本の特許法の効力は及ばないと解されているところ(当該発明品の輸入先である海外特許で保護すべきということのようである),当該特許にのみ用いられる部品を,輸出する製品のために製造販売した場合に間接侵害に該当するか否か(ただし,輸出は,平成18年改正で特許権者でなければできないこととなった。),といったような場合に,独立説と従属説の考え方が分かれるらしい。
 独立説を徹底すると,上記①から③いずれも間接侵害に当たるが,従属説を徹底すると,直接侵害がなされていない以上,いずれも間接侵害に当たらないと説明される。
 また,独立説を前提に,④特許製品が容易に2つに分解でき,一般消費者でも容易に再び結合できるような製品だった場合に,特許製品をことさらに2つに分解して,一般消費者が結合して使用させることを意図して,分解した2つの商品をそれぞれ別個に販売するようなことを想定し,間接侵害は,このような場合を想定して規定されたのだと理解する考え方も存在するようである。
 独立説,従属説に関する最高裁の判例は存在しないようで,下級審判例の中には独立説を採るもの,従属説を採るものがないわけではないようだが,普通の議論とは,若干趣旨を異にしているようであり,あまり参考にならなそうな判例である。

 以上の議論は,間接侵害の規定が1号から6号まで増えた現在でも,一般的な教科書のレベルではあまり変化はなさそうである。