実務家弁護士の法解釈のギモン

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担保権実行に債務名義はいらない?(4)

2010-05-06 13:28:46 | 民事執行法
 総じて,担保権実行手続は,判決手続に擬して理解でき,担保権実行の申立は,訴状の提出,実体異議,実体抗告は答弁の提出の場であって,立証責任も判決手続と同じように法律要件分類的に考えるべきであろう。
 したがって,実体異議,実体抗告の審理で被担保債権の存否が問題となれば,その立証責任は債務者側ではなく申立債権者側が負うというべきである。そう考えないと,厳格な判決手続よりも決定手続である担保権実行手続の方が,申立債権者にとって有利となってしまうからである。判決手続よりも債権者側に有利な手続として理解する必要はないであろう。
 そして,例えば実体異議,実体抗告の中で被担保債権の存在を債権者側が立証できなければ,担保権実行手続は一旦は取り消される。しかし,その判断は既判力をもって確定しているわけではないので,債権者は別途,判決手続をもって担保権の存在について争うことは出来るのであって,勝訴すれば,その判決書が担保権の存在を証する文書となる。今度は,既判力をもって確定されるので,再度の担保権実行手続に対する実体異議,実体抗告でも,口頭弁論終結前の事実関係についての主張は遮断されることになる。

 以上の点は,私が唯一論文らしい論文の体裁を取った,「物上代位による差押えの申立において提出すべき文書-どの事実を立証する文書が必要か-」(遠藤光男元最高裁判所判事喜寿記念論文集,論集編-実務法学における現代的諸問題)にもう少し詳しく論じているので,興味のある人は,こちらも参照されたい。