Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Eric Relph

2006-07-30 | SSW
■Eric Relph / Pretty Darlin’■

 もうすぐ梅雨明け、行きたいなリゾート。 ということで、この季節の夕暮れ、サンセットビーチで聴いてみたい名盤をご紹介します。
 1978 年、カリフォルニア州オレンジカウンティにあるラグーナ・ビーチにある自主制作レーベルから届けられた Eric Relph の唯一のアルバムは、メロウ&グルーヴィーな SSW ものとして、オークションなどの常連商品となっています。
 
 この幻想的で妙な違和感のあるジャケットからも、かなり興味をそそられるのですが、不思議なことにアルバムのサウンドも、同じように個性的なものになっています。
 アルバム全 10 曲は、いわゆる Eric Relph 的な独特の味わいを持つ曲と、個性に乏しく標準的な仕上がりになってしまった曲とに大別できます。 A 面では、「Pretty Darlin’」、「Forty Miles」、「Treat Me Kind」がお薦めです。 タイトル曲「Pretty Darlin’」はアルバムの印象を決定づける名曲で、エコーのかかった幻想的なアルペジオから始まり、ゆるいボッサ調のリズムが加わってくると、波間を漂うかのようなドリーミーなサウンドが展開されます。 この曲だけで、Eric Relph をハワイの SSW と勘違いしてしまう人もいそうなほどです。 「Forty Miles」もメロウなイントロから始まるフローティグ系の曲。 アコギのイントロから始まり、コンガがアイランド・テイストを盛り上げる「Treat Me Kind」も名曲。 アルバムを通して言えるのですが、素朴なバック・コーラスが癒し系の入浴剤みたいな効果を与えています。 一方、「Oh Why」はメロトロンが聴けるところがポイント。 「Spirit Train」は、サザンロック調のサウンドですが、できれば外してほしかったという気持ちになってしまいます。

 B 面も同じように「Gold Or Silver」と「Stoned Louis」が秀逸。 どちらも Eric Relph ワールドというべき浮遊感とメロウさを兼ね備えており、エステサロンのBGMにしたいような気分になります。 「Down The Road」と「Hands Off Baby」は、逆にらしさが感じられない、ノーマルな曲調です。 前者はウェストコースト風ですが、後者は B 級のロックンロールかのよう。 ラストの「Ah Dey Aum」は、Eric のギターソロによるインスト曲。 メロウさはなく、バロック的なアルペジオが繰る広げられる異色作になっています。

 風呂上りに喉をうるおしてから、久しぶりにアルバムを通して聴きましたが、若干の捨て曲があるものの、Eric Relph の独特のサウンドは捨てがたいものであることを再認識しました。 CD 化は当然されていないのですが、Evy Pollen は自主制作レーベルなので、マスターテープの存在すら怪しそうな気配ですね。 

 さて、参加ミュージシャンで注目すべきは、Bill Champlin でしょう。 Sons Of Champlin のリーダーとしても有名ですが、彼のソロアルバム「独身貴族」が AOR の名盤として日本では人気です。 現在は、Chicago のメンバーでもある Bill Champlin が「独身貴族」と同時期の 1978 年に「Pretty Darlin’」でギターを弾いているとは信じがたい気分です。 もう一人、プロデューサーとしてもクレジットされているMichael Allsup は、Three Dog Night の後期のメンバーだった人でした。

 1978 年、カリフォルニアから届けられた突然変異的なアルバム。 このアルバムの 2 年前には Eagles の Hotel California が発売されています。 そんなことを考えながら聴くと、さらに不思議な気分に浸れます。



■Eric Relph / Pretty Darlin’■

Side-1
Pretty Darlin’
Oh Why
Spirit Train *
Forty Miles
Treat Me Kind

Side-2
Gold Or Silver
Down The Road
Hands Off Baby *
Stoned Louis
Ah Dey Aum

Produced by Eric Relph and Michael Allsup
All Songs Written by Eric Relph
* Lyrics by Grayds Vincent

Eric Relph : guitars and lead vocals
Bill Slater : bass
Ray Price : drums
Danny Krieger : slide guitar
Steve D’Avanzo : piano
Eric Morton : flute
Michael Allsup : Melltoron on ‘Oh Why’
Dave O’Niell : congas
Bill Champlin : guitar and piano on ‘Hands Off Baby’ , guitar on ‘Pretty Darlin’’

Harmonies : Mike Rosato , Bill Manaserro , Dave ‘Niell , Eric Relph . Sarah Miller , Eric Morton , Jay Kessler , Linda Rogers , Mike Allsup and Greg

Engineered by Michael Allsup

Recorded and Mixed at Timbre Sound , Santa Monica , California
Front & Back Cover by Bill Odgen

Evy Pollen Records ER 1-2-49