Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Gary Netherland

2010-04-07 | SSW
■Gary Netherland / Return To The Sea■

  「海へ帰る」というタイトルに惹かれて購入したアルバムは、予想を裏切る平凡な MOR アルバムでした。 もう少し AOR テイストがあればとか、むしろシンプルなアコースティック路線であればと思いますが、それは後の祭りというものです。 しかし、何度か聴くたびにそのメロウなぬるま湯感覚が妙に気持ち良く感じられてきました。 この感覚は、40 歳を過ぎて初めて『Barry Manilowは実はいいんだ!』と告白する時のような恥ずかしさを伴います。 

  本作の主人公 Gary Netherland がオランダ人かどうかは知りませんが、無邪気に砂浜を駆ける姿とタイトルで勢い余って手にとってしまいました。 1981 年のカリフォルニアから生み出されたレコードです。 カリフォルニアの変人としては、古くは Eric Relph から Jon Tabakin といった一定の評価を得ている名盤から、Joseph NicolettiMichael Gillotti といった珍盤まで紹介してきましたが、それらの作品と比較すると見劣りするのは仕方ありません。 しかし、どんなアルバムにも捨てがたい曲があるもので、これがレコード愛好家を悩ませる種ともなっていると思います。

  たとえばオープニングの「We’re Both Still Young」はそのひとつ。 落ち着いたピアノのイントロからミディアムな展開、抑揚の効いたメロディーとボーカルはまさに MOR の典型と言えるバラードです。 このような曲を悪く言えるほど人に厳しくないのは自分の性格かもしれません。 つづく「My Darling」もスタンダードのような楽曲。 本当に Gary Netherland のオリジナルなのかと疑いたくなるこの曲は、薄く入るシンセの音色がドラマティックな広がりを演出します。 ジョンデンバーのカントリーロードを思わせる「Fervent Eyes」を挟んでタイトル曲の「Return To The Sea」は波の音から始まります。 スロウで洗練されたアレンジのこの曲も MOR 的な魅力満載のサウンド。 こうした音楽を肯定できる歳になったことを実感してしまいます。 つづく「Right Now」も深みのあるバラードで、こうして聴くとA面はさほど悪くないということを再確認しました。

  しかし B 面はその調子が続きません。 唯一、素晴らしいのがゲストボーカルの Kathy Berry とのデュエットソング「Pick Me Up Tonite」です。 この曲は、Kathy Berry の美しい歌い出しから、他の曲と一線を画す予感がするのですが、実際に頭一つ抜きんでている印象です。 それは前後の「You’re Not The One To Talk」、「Hot Blooded Woman」そして「Chart Fever」といった曲の出来が悪いために余計に引き立っているのからかもしれません。 いずれにしても、この「Pick Me Up Tonite」が終わり次第レコードの針をあげてもまったく問題がないと断言してもいいでしょう。

  それにしてもカリフォルニアの人は海が好きですね。 テンション高めのジャケットからは全くその内容を予見できませんでした。 後世に残る名盤ではないけれど、けして手放すことはできない不思議な愛着を覚えるアルバムです。

■Gary Netherland / Return To The Sea■

Side 1
We’re Both Still Young
My Darling
Fervent Eyes
Return To The sea
Right Now

Side 2
I Need All Your Love
You’re Not The One To Talk
Pick Me Up Tonite
Hot Blooded Woman
Chart Fever

Produced by Ellen Burton and Gary Netherland
Arranged by Bob Berry
Recorded at Tiki Sound (San Jose, CA) and Music Annex (MenloPark, CA)

All songs written by Gary Netherland

Gary Netrherland : lead vocals, guitar
Bob Berry : drums, keyboards, guitars
Gene Perrault : bass guitar
Kathy Berry : backing vocals
Ellen Burton : vocals om ‘Pick Me Up Tonite’

Arkey Enterprises AR-1066


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