Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Jon Tabakin

2006-05-31 | Soft Rock
■Jon Tabakin / Jon Tabakin■

 ‘A good melody is like a good friend.’

 今日は、裏ジャケットのクレジットにこっそりとこんなメッセージをしのばせた Jon Tabakin のアルバムを紹介したいと思います。 このメッセージを読むと、大学生の頃の自分の失言を思い出します。 その頃、大学のゼミ仲間では音楽の嗜好のあう同期が多く集まっていて、そんななか僕はシラフで「つまんない女の子とデートしているよりは、いいアルバムを何枚か聴いているほうがいいな」みたいな趣旨の発言をしました。 それが小さい輪のなかで反響を呼び、「女性よりレコードに価値を見出す男」みたいにからかわれたのです。 そんなにひどいことを言ったつもりでもなかったのですけど、言い方が悪かったのかな、と今でも思ったりします。

 さて、それはさておき、この Jon Tabakin のレコードは、今までほとんど紹介されたことがないレア盤だと思います。 特に最近ではアメリカの中古市場で 100 枚しかプレスされていないという情報が流れてしまったせいで、e-bay などでも三桁ドルが相場になってしまっているようです。 プレス枚数が非常に少ない自主制作盤であることは間違いないと思いますが、100 枚というのはウソだと思いますね。 僕は、このレコードを 20 ドルくらいで買いましたし、5 年頃前には神保町の某レコード店で 3,000 円前後で売られているのを目撃しています。

 このアルバムを初めて手にしたとき、この顔とメガネからして、Randy Newman風、もしくは Randy Edelman 風な SSW に違いないと思ったものです。 ところが、1 曲目でそんな予想は撃沈。 まったく予期しなかったソフトロックなアルバムだったのです。 
 1 曲目 「It’s Never Too Late To Smile」で SSW 風の予想はキレイに裏切られます。 イントロも無く一気に始まるボーカルに猫だましを喰らい、その曲の良さに一気に押し切られてしまいました。 この左右のチャンネルで絶妙に異なるボーカルテイクを重ね合わせ、ビーチボーイズ風のコーラスを味つけしてしまう展開にはゾクゾクします。 曲のタイトルで何かあるなとは直感するものの、アルバムの幕開けにふさわしい素晴らしい仕上がりです。 つづく、「Your Eyes」は、軽いボサノバ・タッチのイントロで始まる憂いを帯びたミディアム・ナンバー。 左右のユニゾン風ボーカル録音はここでも聴かれます。 この曲は 1 曲目と違いボーカルの勢いに流されないサウンドなので、バックの音が良く聴こえます。 そして、Jon Tabakin が多彩な楽器を操るミュージシャンではあるものの、凄腕でもないということが判明します。 気恥ずかしいほどのテンションの高さで始まる「I’ve Got Bad News」は、パワーポップに近いサウンド。 一転、ソフトバラードの「Where Are The Angels」では、予定調和な展開とは分かっていてもその甘い展開にハマッてしまいます。 サビの重なるエンディングではフェードアウトがちょっと早すぎて惜しいですね。 これもサビで始まる「The Day Were Long , The Nights Were Sweet」は、スローなブギ調(昔、そんな曲ありましたね)の曲。 途中でアップな曲調に展開しますが、また戻ってきます。 A 面ラストの「Home Is Us Together」は、軽いサーフ調の曲。 すでにおなかいっぱいになって A 面が終了します。

 B 面では、ニルソン風のミディアム「It’s The Little Things」で始まり、派手なシンバルの連打がテンションの高さを象徴するような「I’m Gonna Love You」と続きます。 ボーカルパートで押し通すタイプの曲「Let’s Do It Again」では途中で数秒間、聴くことができるギターソロのたどたどしさが印象に残ります。 この 3 曲は、A 面の個性豊かな曲に比べては地味に聴こえてしまいます。 それはメロディと展開において、ちょっとアイディア不足なのが要因でしょう。 ガットギターの静かなイントロで始まる「I Never Realized」は、一聴では平坦なバラードに聴こえてしまいますが、ラストの落としのサビの部分の味わいが決め手。 ここは何度も聴かないと良さが伝わらないように意図されているかのようです。 続く、「I’m Takin’ My Time」は子供向け娯楽番組のテーマのようなノリに聴こえてしまいますが、次第に落ち着きを取り戻します。 後半で聴けるチープなオルガン・ソロが聴き所でしょう。 そして、ラストの「You Mean Much More To Me」は、Jon Tabakin 得意のイントロなし即歌スタイルのミディアム・ナンバー。 途中曲調がハードにソフトにと切り替わってアイディア豊かな楽曲です。 そして、I Love You というメッセージともにフェードアウトしたかと思うと、またフェードイン。 そんな子供だましなのですが、僕は久しぶりに聴いたのですっかり忘れており、やられてしまいました。 

 そんな内容のこのアルバムですが、自主制作レベルではクオリティの高い名盤だろうと思います。 どんな形容が相応しいかをあれこれ考えたのですが、とてもマイナーな比喩で言うならば、Mark Eric と Robert Lester Folsom を足して 2 で割ったようなサウンドではないかと思います。 こんな例えでは伝わらないと思うのですが、他に形容するフレーズが思いつきません。

 Jon Tabakin は、10 代の頃からカリフォルニア大学の学生時代にかけて、ピアノ・ギター・ベース・オルガン・ボーカルそして作曲を学んできたとジャケットに書かれています。 おそらく独学でしょう。 そして 1975 年、自身のレーベルだと思われる Larrow Records から満を持して世に送り出されたのがこの作品。 彼のファーストにして唯一のアルバムなのです。 Jon Tabakin についてインターネットで検索してみましたが、このアルバム以降の足取りは一切つかめませんでした。 何となく勝手にお金持ちなのではないかと想像しているので、西海岸で会社経営でもしていそうなのですが。



■Jon Tabakin / Jon Tabakin■

Side-1
It’s Never Too Late To Smile
Your Eyes
I’ve Got Bad News
Where Are The Angels
The Day Were Long , The Nights Were Sweet
Home Is Us Together

Side-2
It’s The Little Things
I’m Gonna Love You
Let’s Do It Again
I Never Realized
I’m Takin’ My Time
You Mean Much More To Me

Music and Lyrics by Jon Tabakin

Many Thanks for the help of
Bruce McCoy : drums
Tari Tanbakin : photos
Bill Taylor : album design
Hank , Roger and Randy , at United Audio
A very special thanks to Geroge Garabedian

Larrow Records LR 100