■David Pomeranz / The Truth Of Us■
今年もあと 3週間あまり。 今年の CD 化大賞は何だろうと考えていたところ、発見したのが David Pomeranz のこのアルバム。 「ついに」というか、「ようやく」というべきか、AOR ファンには歓喜の初 CD 化ですね。 しかも紙ジャケット仕様とのことです。
David Pomeranz はその甘いメロディーとマイルドなボーカルで日本では人気のアーティストなのですが、ファーストからこの The Truth Of Us までの 4作品がいずれも未 CD 化という珍しい存在でした。 そんななか、1979 年にワーナー傘下の Pacific Records から発売された人気の本作がめでたく CD 化となりました。 ちなみに、David Pomeranz は近年はフィリピンで活動しているらしく、90年代後半に活動を再開してからリリースしている新作もアジアでの発売となっているようです。 そのなかでもお勧めは、「Born For You」というベスト盤。 過去の作品の再録を含む内容ですが、僕の愛聴盤となっています。
さて、話をこのアルバムに戻しましょう。 このアルバムは、70 年代後半の AOR ブームもあって、国内盤も発売されていました。 その時の邦題が「涙のくちづけ」です。 いいタイトルですね。 当時、田中康夫のヒット小説「なんとなくクリスタル」が松竹から映画化されましたが、そのサントラ盤に「The Old Songs」が収録されたりしたこともあって、David Pomeranz はメロウな AOR ファンに愛されたアーティストです。 そんなこともあって、今回の初 CD 化は、最高のクリスマスプレゼントとなることでしょう。
アルバムを語るとき、まずは「The Old Songs」から始めなくてはならないでしょう。 センチメンタル系のバラードとしては AOR 屈指の名曲なのですが、この曲の素晴らしさは聴けば聴くほどに味わいを増してくるところでしょう。 優れた楽曲がまれに垣間見せてくれるマジックがこの曲には宿っているように思います。 Barry Manilow にもカバーされましたが、ボーカルの繊細さはオリジナルを凌ぐことはありません。 「昔の歌は昔の思い出もよみがえらせてくれる。 そして、別れてしまった彼女も僕のもとにとどまってくれるかもしれない」と歌う歌詞はまさに「わたせせいぞう」の描く世界そのままです。 別れた恋人への甘く切ない気持ちが、若き日の David Pomeranz の歌声とともに永遠にレコードに刻み込まれています。 この名曲を皮切りに、A 面はピアノ系のリリカルなナンバー「Ask Me To Say “I Do’” (And I Will)」、前述の「Born For You」でも再録されたバラード「This Is What I Dreamed」、1930 年代の華やかなアメリカへのオマージュといった趣の「My Buddy And Guy」と続いていきます。
B 面ではアルバムタイトルの「The Truth Of Us」が切ない系のバラードです。 「僕たちの真実は嘘をつきながら暮らしていたこと」と歌うサビのフレーズが、このアルバムのジャケットデザインと重なって見えますね。 彼女からの熱いキスを受けながらも、なぜかクールな視線の David Pomeranz。 ここから、見事な邦題「涙のくちづけ」が連想されたのでしょう。 ほんのりジャズテイストの「Fat」、やさしいバラードの「Old Home Town」、ちょっとハードな「Hit That Target」につづいて、アルバムのラスト「Cloud Of Music」へと流れていきます。 このラストはピアノを中心に音数の少ないふんわりした曲となっています。 まさにタイトルどおりといったところでしょう。
このアルバムは 1997 年のテレビドラマ「成田離婚」で、離婚するカップルが記念のレコードとしてプレゼントするようなシーンがあったそうです。 僕は全く見ていなかったので、どのようなシチュエーションで、どのくらいはっきりとジャケットが映ったのかは分りませんが、その当時はコアな AOR ファンの間でこのアルバムの CD 化の要望が高まったことを良く覚えています。 しかし、当時は「The Old Songs」がドラマのサントラ盤に収録されただけで、アルバムの再発には至らなかったのです。 よっぽど権利関係が複雑なのだろうと思っていましたが、それからほぼ 10 年経過した 2006 年 12 月 20日についに「涙のさいはつ」となりました。 関係した方に感謝したいですね。
最後に僕はこのアルバムを輸入盤と国内盤(帯つき)の両方を持っていますが、国内盤の帯には、こんなキャッチコピーが記されています。 ちょっと照れくさいですが、最後にそのコピーをご紹介して今日のアルバム紹介を終えたいと思います。
『ひとつひとつの夢に 思い思いの影をつけてみたら 僕たちだけのアルバムができた…』
■David Pomeranz / The Truth Of Us■
Side-1
The Old Songs
Ask Me To Say “I Do’” (And I Will)
This Is What I Dreamed
My Buddy And Guy
Side-2
The Truth Of Us
Fat
Old Home Town
Hit That Target
Cloud Of Music
Produced by David Pomeranz and Roy Halee
Engineered by Roy Halee
All songs written by David Pomeranz
Except ‘The Old Songs’ and ‘Cloud Of Music’ by David Pomeranz and Buddy Kaye
David Pomeranz : acoustic piano , harmonium , percussion , synthesizer , tambourine , electric piano , vocals , harmony vocals
Carlos Vega : drums
Veyler Hildebrand : bass
Bobby Cochran : acoustic guitar , electric guitar
Lee Ritenour : electric guitar
Tim May : electric guitar
Tom Seufert : electric guitar
Steve Carnale :electric guitar
Gabriel Katona : prophet-5 synthesizer
Vincent De Rosa : French horn
Paulihno Da Costa : percussion
Earle Dumler : english horn
Everett Bryson : congas , percussion
Larry Brown : percussion
Christopher Smith : harmonica
Steve Madaio : flugelhorn
Roy Poper : piccolo trumpet
Background vocals : David Pomeranz , Dianne Steinberg , Lori Lieberman , Althea Pomeranz , Lorna Wright , Tom Seufert
Claps : Tom Seufert , David Pomeranz , Roy Halee , Roy Braverman , Althea Pomeranz , Don Kerr ,
Strings Arranged and conducted by David Campbell
Pacific Records PC 4302
今年もあと 3週間あまり。 今年の CD 化大賞は何だろうと考えていたところ、発見したのが David Pomeranz のこのアルバム。 「ついに」というか、「ようやく」というべきか、AOR ファンには歓喜の初 CD 化ですね。 しかも紙ジャケット仕様とのことです。
David Pomeranz はその甘いメロディーとマイルドなボーカルで日本では人気のアーティストなのですが、ファーストからこの The Truth Of Us までの 4作品がいずれも未 CD 化という珍しい存在でした。 そんななか、1979 年にワーナー傘下の Pacific Records から発売された人気の本作がめでたく CD 化となりました。 ちなみに、David Pomeranz は近年はフィリピンで活動しているらしく、90年代後半に活動を再開してからリリースしている新作もアジアでの発売となっているようです。 そのなかでもお勧めは、「Born For You」というベスト盤。 過去の作品の再録を含む内容ですが、僕の愛聴盤となっています。
さて、話をこのアルバムに戻しましょう。 このアルバムは、70 年代後半の AOR ブームもあって、国内盤も発売されていました。 その時の邦題が「涙のくちづけ」です。 いいタイトルですね。 当時、田中康夫のヒット小説「なんとなくクリスタル」が松竹から映画化されましたが、そのサントラ盤に「The Old Songs」が収録されたりしたこともあって、David Pomeranz はメロウな AOR ファンに愛されたアーティストです。 そんなこともあって、今回の初 CD 化は、最高のクリスマスプレゼントとなることでしょう。
アルバムを語るとき、まずは「The Old Songs」から始めなくてはならないでしょう。 センチメンタル系のバラードとしては AOR 屈指の名曲なのですが、この曲の素晴らしさは聴けば聴くほどに味わいを増してくるところでしょう。 優れた楽曲がまれに垣間見せてくれるマジックがこの曲には宿っているように思います。 Barry Manilow にもカバーされましたが、ボーカルの繊細さはオリジナルを凌ぐことはありません。 「昔の歌は昔の思い出もよみがえらせてくれる。 そして、別れてしまった彼女も僕のもとにとどまってくれるかもしれない」と歌う歌詞はまさに「わたせせいぞう」の描く世界そのままです。 別れた恋人への甘く切ない気持ちが、若き日の David Pomeranz の歌声とともに永遠にレコードに刻み込まれています。 この名曲を皮切りに、A 面はピアノ系のリリカルなナンバー「Ask Me To Say “I Do’” (And I Will)」、前述の「Born For You」でも再録されたバラード「This Is What I Dreamed」、1930 年代の華やかなアメリカへのオマージュといった趣の「My Buddy And Guy」と続いていきます。
B 面ではアルバムタイトルの「The Truth Of Us」が切ない系のバラードです。 「僕たちの真実は嘘をつきながら暮らしていたこと」と歌うサビのフレーズが、このアルバムのジャケットデザインと重なって見えますね。 彼女からの熱いキスを受けながらも、なぜかクールな視線の David Pomeranz。 ここから、見事な邦題「涙のくちづけ」が連想されたのでしょう。 ほんのりジャズテイストの「Fat」、やさしいバラードの「Old Home Town」、ちょっとハードな「Hit That Target」につづいて、アルバムのラスト「Cloud Of Music」へと流れていきます。 このラストはピアノを中心に音数の少ないふんわりした曲となっています。 まさにタイトルどおりといったところでしょう。
このアルバムは 1997 年のテレビドラマ「成田離婚」で、離婚するカップルが記念のレコードとしてプレゼントするようなシーンがあったそうです。 僕は全く見ていなかったので、どのようなシチュエーションで、どのくらいはっきりとジャケットが映ったのかは分りませんが、その当時はコアな AOR ファンの間でこのアルバムの CD 化の要望が高まったことを良く覚えています。 しかし、当時は「The Old Songs」がドラマのサントラ盤に収録されただけで、アルバムの再発には至らなかったのです。 よっぽど権利関係が複雑なのだろうと思っていましたが、それからほぼ 10 年経過した 2006 年 12 月 20日についに「涙のさいはつ」となりました。 関係した方に感謝したいですね。
最後に僕はこのアルバムを輸入盤と国内盤(帯つき)の両方を持っていますが、国内盤の帯には、こんなキャッチコピーが記されています。 ちょっと照れくさいですが、最後にそのコピーをご紹介して今日のアルバム紹介を終えたいと思います。
『ひとつひとつの夢に 思い思いの影をつけてみたら 僕たちだけのアルバムができた…』
■David Pomeranz / The Truth Of Us■
Side-1
The Old Songs
Ask Me To Say “I Do’” (And I Will)
This Is What I Dreamed
My Buddy And Guy
Side-2
The Truth Of Us
Fat
Old Home Town
Hit That Target
Cloud Of Music
Produced by David Pomeranz and Roy Halee
Engineered by Roy Halee
All songs written by David Pomeranz
Except ‘The Old Songs’ and ‘Cloud Of Music’ by David Pomeranz and Buddy Kaye
David Pomeranz : acoustic piano , harmonium , percussion , synthesizer , tambourine , electric piano , vocals , harmony vocals
Carlos Vega : drums
Veyler Hildebrand : bass
Bobby Cochran : acoustic guitar , electric guitar
Lee Ritenour : electric guitar
Tim May : electric guitar
Tom Seufert : electric guitar
Steve Carnale :electric guitar
Gabriel Katona : prophet-5 synthesizer
Vincent De Rosa : French horn
Paulihno Da Costa : percussion
Earle Dumler : english horn
Everett Bryson : congas , percussion
Larry Brown : percussion
Christopher Smith : harmonica
Steve Madaio : flugelhorn
Roy Poper : piccolo trumpet
Background vocals : David Pomeranz , Dianne Steinberg , Lori Lieberman , Althea Pomeranz , Lorna Wright , Tom Seufert
Claps : Tom Seufert , David Pomeranz , Roy Halee , Roy Braverman , Althea Pomeranz , Don Kerr ,
Strings Arranged and conducted by David Campbell
Pacific Records PC 4302