Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

David Pomeranz

2006-12-12 | AOR
■David Pomeranz / The Truth Of Us■

 今年もあと 3週間あまり。 今年の CD 化大賞は何だろうと考えていたところ、発見したのが David Pomeranz のこのアルバム。 「ついに」というか、「ようやく」というべきか、AOR ファンには歓喜の初 CD 化ですね。 しかも紙ジャケット仕様とのことです。
 David Pomeranz はその甘いメロディーとマイルドなボーカルで日本では人気のアーティストなのですが、ファーストからこの The Truth Of Us までの 4作品がいずれも未 CD 化という珍しい存在でした。 そんななか、1979 年にワーナー傘下の Pacific Records から発売された人気の本作がめでたく CD 化となりました。 ちなみに、David Pomeranz は近年はフィリピンで活動しているらしく、90年代後半に活動を再開してからリリースしている新作もアジアでの発売となっているようです。 そのなかでもお勧めは、「Born For You」というベスト盤。 過去の作品の再録を含む内容ですが、僕の愛聴盤となっています。

 さて、話をこのアルバムに戻しましょう。 このアルバムは、70 年代後半の AOR ブームもあって、国内盤も発売されていました。 その時の邦題が「涙のくちづけ」です。 いいタイトルですね。 当時、田中康夫のヒット小説「なんとなくクリスタル」が松竹から映画化されましたが、そのサントラ盤に「The Old Songs」が収録されたりしたこともあって、David Pomeranz はメロウな AOR ファンに愛されたアーティストです。 そんなこともあって、今回の初 CD 化は、最高のクリスマスプレゼントとなることでしょう。
 アルバムを語るとき、まずは「The Old Songs」から始めなくてはならないでしょう。 センチメンタル系のバラードとしては AOR 屈指の名曲なのですが、この曲の素晴らしさは聴けば聴くほどに味わいを増してくるところでしょう。 優れた楽曲がまれに垣間見せてくれるマジックがこの曲には宿っているように思います。 Barry Manilow にもカバーされましたが、ボーカルの繊細さはオリジナルを凌ぐことはありません。 「昔の歌は昔の思い出もよみがえらせてくれる。 そして、別れてしまった彼女も僕のもとにとどまってくれるかもしれない」と歌う歌詞はまさに「わたせせいぞう」の描く世界そのままです。 別れた恋人への甘く切ない気持ちが、若き日の David Pomeranz の歌声とともに永遠にレコードに刻み込まれています。 この名曲を皮切りに、A 面はピアノ系のリリカルなナンバー「Ask Me To Say “I Do’” (And I Will)」、前述の「Born For You」でも再録されたバラード「This Is What I Dreamed」、1930 年代の華やかなアメリカへのオマージュといった趣の「My Buddy And Guy」と続いていきます。 

 B 面ではアルバムタイトルの「The Truth Of Us」が切ない系のバラードです。 「僕たちの真実は嘘をつきながら暮らしていたこと」と歌うサビのフレーズが、このアルバムのジャケットデザインと重なって見えますね。 彼女からの熱いキスを受けながらも、なぜかクールな視線の David Pomeranz。 ここから、見事な邦題「涙のくちづけ」が連想されたのでしょう。 ほんのりジャズテイストの「Fat」、やさしいバラードの「Old Home Town」、ちょっとハードな「Hit That Target」につづいて、アルバムのラスト「Cloud Of Music」へと流れていきます。 このラストはピアノを中心に音数の少ないふんわりした曲となっています。 まさにタイトルどおりといったところでしょう。

 このアルバムは 1997 年のテレビドラマ「成田離婚」で、離婚するカップルが記念のレコードとしてプレゼントするようなシーンがあったそうです。 僕は全く見ていなかったので、どのようなシチュエーションで、どのくらいはっきりとジャケットが映ったのかは分りませんが、その当時はコアな AOR ファンの間でこのアルバムの CD 化の要望が高まったことを良く覚えています。 しかし、当時は「The Old Songs」がドラマのサントラ盤に収録されただけで、アルバムの再発には至らなかったのです。 よっぽど権利関係が複雑なのだろうと思っていましたが、それからほぼ 10 年経過した 2006 年 12 月 20日についに「涙のさいはつ」となりました。 関係した方に感謝したいですね。
 
 最後に僕はこのアルバムを輸入盤と国内盤(帯つき)の両方を持っていますが、国内盤の帯には、こんなキャッチコピーが記されています。 ちょっと照れくさいですが、最後にそのコピーをご紹介して今日のアルバム紹介を終えたいと思います。

 『ひとつひとつの夢に 思い思いの影をつけてみたら 僕たちだけのアルバムができた…』

 

■David Pomeranz / The Truth Of Us■

Side-1
The Old Songs
Ask Me To Say “I Do’” (And I Will)
This Is What I Dreamed
My Buddy And Guy

Side-2
The Truth Of Us
Fat
Old Home Town
Hit That Target
Cloud Of Music

Produced by David Pomeranz and Roy Halee
Engineered by Roy Halee
All songs written by David Pomeranz
Except ‘The Old Songs’ and ‘Cloud Of Music’ by David Pomeranz and Buddy Kaye

David Pomeranz : acoustic piano , harmonium , percussion , synthesizer , tambourine , electric piano , vocals , harmony vocals
Carlos Vega : drums
Veyler Hildebrand : bass
Bobby Cochran : acoustic guitar , electric guitar
Lee Ritenour : electric guitar
Tim May : electric guitar
Tom Seufert : electric guitar
Steve Carnale :electric guitar
Gabriel Katona : prophet-5 synthesizer
Vincent De Rosa : French horn
Paulihno Da Costa : percussion
Earle Dumler : english horn
Everett Bryson : congas , percussion
Larry Brown : percussion
Christopher Smith : harmonica
Steve Madaio : flugelhorn
Roy Poper : piccolo trumpet

Background vocals : David Pomeranz , Dianne Steinberg , Lori Lieberman , Althea Pomeranz , Lorna Wright , Tom Seufert
Claps : Tom Seufert , David Pomeranz , Roy Halee , Roy Braverman , Althea Pomeranz , Don Kerr ,
Strings Arranged and conducted by David Campbell

Pacific Records PC 4302


Franklin Micare

2006-07-10 | AOR
■Franklin Micare / Franklin Micare■

 前回の投稿で名前を出してしまったので、今日は Franklin Micare が 1978 年にリリースしたファーストアルバムをご紹介します。 ほとんどの人がこのアルバムを彼の唯一の作品だと考えていると思いますが、なんと今世紀に入ってからセカンドアルバムを発表しています。 その CD については、いったん後回しにしますね。

 一般的には AOR としてカテゴライズされることが多いこのアルバムですが、AOR というよりは普通にキャッチーで POP なアルバムです。 未だに CD 化されてはいないものの、中古レコード店でよく見かけますし、数百円で買えるようなものです。
 アルバムを語るのに重要な事項としては、ジャズ界の巨匠プロデューサーである Joel Dorn がプロデュースしている点があります。 あまりにもジャズ界での仕事が有名なために、ポピュラー界ではあまり多くの仕事をしていませんが、僕の愛聴盤である David Forman のアリスタ盤も彼のプロデュース作品です。 クレジットを見ると、Elliott Randall , Allan Schwartzberg , Will Lee などの NY セッションマンが参加しており、いい時代のニューヨークの匂いを感じることもできます。

 アルバムは、同じテイストの曲「Nobody」と「Delectable Love」でスタート。 このたたみかけるメロディ展開とインスト・パートのないアレンジを勝手に Micare 節と呼んでいますが、この曲調には若気の至りというか、ちょっと気恥ずかしさすら感じるものがあります。 ちなみに、後者には Kenny Vance がコーラスで参加しています。 つづく、「If You Love Me , Love Me Right」はアルバムで最も好きな曲のひとつ。 ここらでメロウなバラードが来ないと息切れしてしまうと思った矢先に始まるので、リスナー的には大満足でしょう。 トロピカルなアレンジと余裕のある歌いまわしも良いです。 Micare 一人による「Hot Jazz」は大人の味わい。 そして、テンプスの大名曲カバーとなる「I Can’t Help Myself」は、オーソドックスなアレンジにも Micare 節を感じます。
 B 面は、Micare 節の「Instant Electricity」、アフリカンっぽいリズムの「Rhythm」と続き、アルバムの中でも印象的なメロではピカいちともいえる「So Nice (Whatever It Is)」へと流れていきます。 この曲も典型的な Micare 節なのですが、Micare 節の特徴はクセのある短いリピートを多用する点にあるといえるでしょう。 とはいいつつ言葉では表現するのはこれが限界です。 ちょっとマイナー調の「The Feelin’ Of Love」には、女性コーラスのなかに、Googie Coppola の名前を発見。 ラストの A 面ラストと同様にカバー曲となる「Mack The Knife」。 これは、ニューヨークのライブハウス「Brandy’s」でのソロ・ライブ録音となっていますが、リラックスした雰囲気のなか、お客さんの手拍子や歌う本人の笑い声なども聴け、盛り上がっている様子が伝わってきます。

 こうして、アルバムを通して聴いてみると、Frankiln Micare の本質的にやりたい音楽は、僕が表現してきたMicare 節のポップソングではなく「Hot Jazz」や「Mack The Knife」のような、アダルトでジャズ寄りのサウンドだったのだと感じます。 ライブで聴かれる「Mack The Knife」と冒頭の「Nobody」が同じ人物とは思えません。 そうしたことから、Joel Dorn 、Franklin Micare そして多くのアレンジを手がけている Elloott Randall などの間で、微妙な力関係が生まれてこのようなアルバムになったのだと思います。 とはいえ、全体的な曲のクオリティも高いし、時々聴きたくなる「If You Love Me , Love Me Right」や「So Nice」があるので、このアルバムは大切な一枚になっています。

 さて、冒頭にセカンドアルバムの話をしましたが、そのタイトルは「You’re The Reason」というもので、半分くらいがスタンダードのカバーだったように思います。 普通に Bobby Caldwell が年をとったのと同じようなものです。 
 ところが、今日現在、苦労して買ったこのセカンドCDが行方不明になってしまっています。 パソコンにも入れていないので、ちょっと悲しいですが、それほど焦ってないのも事実で、じつはオーソドックスすぎて退屈な作品だったのです。
 ネットで検索したら、近影をみつけることができました。 その中に書かれていたキャッチ・コピーです。 真ん中の人は知りませんが、褒めすぎです。

Harry Connick Jr. meets Desi Arnez meets Van Morrison!



■Franklin Micare / Franklin Micare■

Side-1
Nobody
Delectable Love
If You Love Me , Love Me Right
Hot Jazz
I Can’t Help Myself

Side-2
Instant Electricity
Rhythm
So Nice (Whatever It Is)
The Feelin’ Of Love
Mack The Knife

Franklin Micare : vocal , acoustic guitar , electric guitar

Drums : Rick shlosser , Allan Schwartzberg , Gary Mure
Bass : Bob Babbit , Will Lee
Guitar : Elliot Randall , Bruce Foster , Jon Stroll
Piano , Keyboards : Pat Rebillot , Kenny Ascher , Kenny Ascher ,Larry Harlow
Percussion : Jimmy Maelen , Pablo Rosario , Bruce Foster
Conga : Jody Linscott , Milton Cardona , Rick Shlosser
Synthesizer : Philip Namanworth

Produced by Joel Dorn for the Masked Announcer
All Songs by Frankilin Micare
Except ‘ I Can’t Help Myself’ by Holland-Dozier-Holland
‘Mack The Knife’ by Weill-Brecht-Blitzstein

All Tunes Recorded and Remixed at Regent Sound Studios , New York

Private Stock Records PS7005

Jack McMahon

2006-07-02 | AOR
■Jack McMahon / Better Late■

 イングランドとブラジルが敗退してしまいました。 ほぼ徹夜状態で観戦しましたが、準決勝以降は 1日 1 試合なので、観戦するほうとしてはラクになりますね。
 さて今日ご紹介するのは、オレゴン州、ポートランド産のローカル AOR の隠れ名盤として知られる、Jack Mcmahon のファーストアルバムです。 1983 年という AOR 全盛期の最後期に発表されたこのアルバム、よく見ると僕の好きな品番 1001 だったのです。 今まであまり意識していませんでしたが。

 アルバムは、軽快なアップチューン「Don’t Look Back」で幕を開けます。 演奏も悪くないのですが、シンセの音色や手数の多いドラムなど垢抜けなさが残るあたりローカル産ならではの味わいです。 小鳥のさえずりから始まる「In The Islands」はトロピカルなテイスト。 ソリッドな「On The Ledge」をはさんで始まる「Fakin’ Romance」はアルバムの代表曲です。 グルーブ感のある演奏ときらびやかなピアノソロなど、今ふうに言えば、クラブ向きとも言えるサウンドです。  ミディアムなバラード「4 In The Morning」は、スティールギターがいい味を出していますが、僕には明け方の 4 時といううよりも夕暮れの 4 時のサウンドに聴こえます。
 B 面に入ると、レゲエっぽいアレンジの「The Way You Love Me Will Do」、オルガンの音がノスタルジックな「Oh Sister」、典型的な AOR 「What Kind Of Fool」と続きます。 そして歌い出しから狙っているなあと思わせるバラードの「I Don’t Wanna Cry」をラスト前に配置。 ラストは、リズムセクション、とくにベースが格好いい「Keep Some Love In Your Heart」となります。 この曲は例によってシンセ・ソロの音色はいまひとつですが、ギターソロも悪くなくドライブ向きに仕上がっています。

 こうして、アルバム全編を通して聴いてみると、バラエティに富んだ編成を考えているし、サウンドも垢抜けないところもありますが、悪くない。 そんなことで、ローカル AOR としては、クオリティはまずまずといえるでしょう。 しかし、じゃ、Steve Eaton のセカンドあたりと比較したらどうなのかと訊かれれば、Steve Eaton のほうが圧倒的にいいわけで、そんなことからして、熱心な AOR ファンのみにお勧めできる作品かと思います。

 ネットで調べたところ、Jack McMahon の公式ページを見つけました。 最新のアルバムも発表しているようですし、ライブも盛んに行っているようです。 そのサイトには、このアルバム「Better Late」が特に日本で受けていて 40 ドルくらいの価格になっていると書かれています。 その価格が妥当かどうかは微妙なところですね。



■Jack McMahon / Better Late■

Side-1
Don’t Look Back
In The Islands
On The Ledge
Fakin’ Romance
4 In The Morning

Side-2
The Way You Love Me Will Do
Oh Sister
What Kind Of Fool
I Don’t Wanna Cry
Keep Some Love In Your Heart

All Songs Written by Jack McMahon
Except ‘In The Islands’ by Jack McMahon and Patty O’Connor

Produced by Jack McMahon
Recorded at Recording Associates , Portland , Oregon

Carlton Jackson : drums
Denny Bixby : bass
Glen Holstrom : piano , synthesizer
Todd Carver : electric guitar
Jack McMahon : acoustic guitar , vocals
Tom Grant : synthesiuzer
Ron Stephens : pedal steel guitar
Brian Davis : percussions
Larry Pindar : sax
Ron Marraccini : drums on ‘4 In The Morning’
Gary Ogan : vocals

Encore Records 1001


Jeff Harrington

2006-06-11 | AOR
■Jeff Harrington / Jeff Harrington■

 ミネソタ・ミネアポリス出身、Michael Johnson とも親交のあることで知られている Jeff Harrington のセカンドアルバムをご紹介します。 このアルバムとファーストアルバム「Quiet Corner」が、めでたく Vivid Sound から CD 化されることになったので、取り上げることにしました。 ファーストの「Quiet Corner」はついに入手することができなかったので、この初 CD 化はうれしいですね。 7月19日に紙ジャケでの発売だそうです。

 さて、このセカンド「Jeff Harrington」は 1977 年に発売されたもので、ファーストよりは見かける機会が多かった作品。 なかなかつかみどころのない独特のワールドが繰り広げられており、大事に聴いてきたアルバムなのです。

 アルバムは全 8 曲。 曲数的には物足りなく感じますが、7 分を越える大作もあったりしてバラエティに富んだ内容です。 1 曲目「Smilin’ Again」は、チャッチーなメロディーに、Jeff Harrington のほんわかしたボーカルが重なり、まったりしたグルーヴ感を醸し出しています。 この曲にしか参加していないコーラスの Penny Birdsong という女性の名前はすごいですね。 つづく「Older Men」はアルバム中最もシンプルな編成によるミディアム・ナンバー。 Terry のギターとJeff のピアノが味わい深い名曲です。 
「Moonlight Shuffle」は、moog が二人もクレジットされている曲。 途中からファンキーなサウンドになったい戻ったりと、動と静のコントラストが特徴的な曲。 サックス・ソロのあたりは、ほとんど同時代のフュージョンです。 メロウな浮遊感が独特の「Caught You (with the ocean in your eye)」は、アルバムの代表曲。 アルバムを聴くたびに新鮮な気持ちにさせられます。 中盤の Rick Petersen の moog ソロや Tommy O’Donnell の fender rhodes ソロといったインストパートがボーカルパートよりも重要な役割を果たしています。 そういった曲の作り方に、卓越したセンスを感じざるを得ません。
 B面は、アルバムの中でも歌を一番じっくり聴かせるメディアム・ナンバー「How Many Lovers」でスタート。 この曲には、ギターとコーラスで Michael Johnson が参加しています。 ほぼ 4ビートのジャズのような「Kiss-A-Me-Ooo」は小洒落たセンスがアルバム全体のアクセントとなる曲。 Mike Elliott によるギターソロも上出来です。 ピアノの弾き語り風から始まる「Drunks And Fools」は 7分 48秒の大作。 曲の展開などはやや難解で、中期の Steely Dan の持つエッセンスに似たものを感じます。 中盤から後半のインストも盛り上がりますが、ここでは、Terry Grant とGlen Swanson のリズム・セクションの力量に支えられていることが分かります。 ラストの「You Will Repair」は可愛らしいフルートのメロディが印象的なメロウな曲。 次第にアップテンポになったり緩急自在な Jeff Harrington ワールドが展開します。

 久しぶりにアルバムを聴きましたが、このアルバムの屋台骨を支えているのが、全曲に参加している Terry Grant と Glen Swanson であることを再認識しました。 ユニークなアレンジメントもこの二人の貢献が大きいものだと思います。 そして、ミネアポリスにそんなにミュージシャンが多いのかと思ってしまうほど、ギターやキーボードなどは曲によってゲストを厳選しているあたりも、Jeff Harrington のこだわりを感じます。

 一部の熱心なファンの支持を集めていたこの名盤も、ついに CD 化されることになりました。 こんなアルバムを通勤途中に i-POD で聴くことのできる日も近いのです。



■Jeff Harrington / Jeff Harrington■

Side-1
Smilin’ Again
Older Men
Moonlight Shuffle
Caught You (with the ocean in your eye)

Side-2
How Many Lovers
Kiss-A-Me-Ooo
Drunks And Fools
You Will Repair

All Songs by Jeff Harrington except ` Kiss-A-Me-Ooo` and `Caught You` which were co-composed by Jeff Harrington and Terry Grant

Produced by Steve Wiese , Terry Grant , Jeff Harrington
Recorded And Mixed At Creation Audio Recordings , Minneapolis , Minnesota
Engineered by Steve Wiese

Thanks to Glen Swanson for his help with rhythm arrangements

Jeff Harrington : vocals , piano , fender rhodes , electric guitar , moog
Robert Rockwell : sax ,on ‘Smlin’ Again’ , ‘Moonlight Shuffle’ and ‘Drunks And Fools’ flute ,piccollo and horn arrangement on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Terry Grant : bass , electric guitar , vocals
Glen Swanson : drums

Larry McDonald : percussion on ‘Smilin’ Again’
Bruce Kurnow : harmonica on ‘Older Man’
Kinky Schnitzer : electric guitar on ‘Moonlight Shuffle’
Tommy O’Donnell : clavinet , Rhodes ,and ARP strings on ‘Moonlight Shuffle’ ,’Caught You’ and ‘Drunks And Fools’
Steve Wiese : vocals , moog on ‘Moonlight Shuffle’ , tambourine on ‘How Many Lovers’
Jerry Steckling : moog on ‘Moonlight Shuffle’
Rick Peterson : moog on ‘Caught You’
Michael Johnson : high stung guitar , vocals on ‘How Many Lovers’
Roger Dumas : ARP strings on ‘How Many Lovers’
Tom Bung : rhodes piano on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Billy Shiell : flugelhorn , trumpet on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Tony Novak : trombone on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Mike Elliott : electric guitar on ‘Kiss-A-Me-Ooo’
Lorin Walstad : electric guitar on ‘Drunks And Fools’
Mike Blaisus : flute on ‘You Will Repair’
Loring Johnson : electric guitar , vocal on ‘You Will Repair’

Patti Wickland : vocals on ‘Smilin’ Again’ and ‘Moonlight Shuffle’
Penny Birdsong : vocal on ‘Smilin’ Again’

Centerpiece Records 2601

The Movies

2006-05-28 | AOR
■The Movies / The Movies■

 Arista といえば、同レーベル史上で最も情けないジャケットだと思われる(ついでに言ってしまうとグループ名もですが)The Movies を忘れてはいけません。
 彼らの唯一と思われるアルバムは 1976 年のリリース。 一説にはセカンドアルバムもあるとのことですが、The Movies という同名のグループが複数存在するようで、セカンド説の真偽のほどはわかりません。 ジャンルを AOR としてしまいましたが、これは自分でやっていておかしいですが、ウソですね。 内容的には、POPS というジャンルがあったらそこに収納します。
 
 このアルバムを手にしたほとんどの日本人がそうであると推測されるように、僕はこのアルバムをジャケット買いではなく(当然ですが)、プロデューサーのVini Poncia の名前で買いました。 それも 10 年以上前に 500 円箱のなかから見つけた感じです。 もし、プロデューサーが無名の人、もしくは興味のない人物であったら、このアルバムを聴くことは無かったでしょう。
 そんなアルバムではありますが、こうして聴くことができたことを、ほんの少し感謝したい気分になったりします。 一番好きな曲は買ったときから今でも「Rainy Weather」なのですが、久しぶりに全曲通して聴いてみたところ、案外出来が悪くないということを感じました。 Arista に残された未 CD 化作品で一番 CD 化して欲しいのは、David Pomeranz の「It’s In Everyone Of Us」ですが、この The Movies もついでにどさくさに紛れて CD になったらいいなと思います。

 A 面では、「Rainy Weather」と「Satellite Touchdown」がお薦めです。 前者はポップな曲調にコーラスアレンジやサビの繰り返し方などがお気に入りの曲だったのですが、改めてクレジットを見て驚きました。 この曲には、5 月 2 日のブログで紹介した Prairie Madness のメンバーの Edward Mills が作曲で参加していました。 地味に作曲活動を続けていたのですね。 「Satellite Touchdown」は、いまや映画音楽界の巨匠とも言える James Newton Howard が ARP シンセサイザーで参加しています。 この曲は、部分的に軽いグルーヴ感が漂ったりしていい雰囲気を出してます。
 B 面では、最初の 3 曲のクオリティが高いです。 60 年代風なポップスに近い「Empty Room」は聴いてるほうがちょっと照れてしまいそう。 続く、「If I Can Just Get Through Tonight」は、Vini Poncia の元同僚でもある Peter Anders の作品です。 これもミディアムなポップソングですね。 イギリスのメロディックなロックバンド「Smokie」のベストアルバムに収録されていそうな曲です。 「You Think You’re Too Good To Be True」も前 2 曲からの流れを消さない曲調です。 ここまでくれば見事な B 面になってほしかったのですが、以降の 2 曲はちょっと肩透かし。 もったいない気持ちのままアルバムは幕を閉じます。

 まさに B 級ニッチポップの王道とも言える The Movies ですが、メンバーの仲も良かったのか、こんなジャケットになってしまったおかげで B 級から C 級の間をただようような存在になってしまいました。 ちなみに、ほとんどのリードボーカルは Michael Morgan が担当してますが、「American Beauty Rose 」と「Sugarloo」は Ted が、ラストの「Would You Believe」は Peter がリードをとっています。



■The Movies / The Movies■

Side-1
Dancin’ On Ice
Rainy Weather *
American Beauty Rose
Satellite Touchdown
Better Wages , Better Days **

Side-2
Empty Room
If I Can Just Get Through Tonight ***
You Think You’re Too Good To Be True **
Sugarloo
Would You Believe

Produced by Vini Poncia
Engineer : Bob Schaper

All Words and Music Are Written by Michael Morgan
Except * Music by Michael Morgan and C. Edward Mills
** Words and Music by Michael Morgan and Peter Barnes
*** Words and Music by Peter Anders

The Movies are :
Michael Morgan : acoustic piano , Electric Piano , mellotron , synthesizers , ‘Bruce’ harp , kazoo
Peter Barnes : acoustic guitar , electric guitars , mandolin , violin , chimes , shakers
Ted Medbury : drums , percussion , toys , harmonica

Guest Musicians
Davy Faragher : bass
James Newton Howard : arp synthesizer on ‘Satellite Touchdown’
Strings on ‘If I Can Just Get Through Tonight’ arranged and conducted by Barry Fasman

Arista Records AL 4085

Chris Ducey

2006-05-01 | AOR
■Chris Ducey / Duce Of Hearts■

 今日のレコード、ジャンルを AOR にしていますが、どちらかというと Pre-AOR 的な気持ちを込めてジャンル分けしたものですので、SSW でも良かったかとは思います。
 そんな Chris Ducey の唯一のソロ「Duce Of Hearts」は 1975 年に Warner Brothers からリリースされた未 CD 化作品です。
 普通の感覚では、こんなジャケットでは購入意欲が湧かないものですよね。 このレコードも昔は 500 円くらいの箱にふつうに入っていたものです。 しかし、10 年くらい前からアナログ市場に巻き起こった「David Foster買い」のようなムーブメントの影響で、比較的注目されるようになったアルバムです。 クレジットには、盟友 Jay Graydon も参加しており、「AIPLAY」より 5 年も前にこの 2 人が参加しているという現象面からも一部のマニアの間では重要アルバムと考えられたようです。 

 さて、そんな一枚ですが、このアルバムは 1 曲目「Duce Of Hearts」に尽きますね。 他の 8 曲が束になってかかっても、僕はこのアルバム表題曲 1 曲の価値の方を重んじます。 そんな理由から、アルバムを通して聴いたのは本当に久しぶり。 日頃は、1 曲目もしくは A 面のみで終了していましたので。 この「Duce Of Hearts」は本当に決定的な名曲で、Chris Ducey のボーカルは若かりし頃の Boz Scaggs のような魅力をもち、Ira Herscher の広がりのあるピアノと相まって、ダイナミックな曲に仕上がっています。 このような曲ばかりであったら、このアルバムはもっと有名になり、CD にもなったことでしょう。 しかし、そうは問屋が卸してはくれませんでした。
 2 曲目「Blue-Eyed Blues」は、やはりピアノのバックがきらびやかなミディアムな楽曲。 続く、「Carmelita’s Kharma」は、エキゾチックな感じの曲です。 1975 年にしてはかなり洗練されており、その洗練というつながりでいくと Steely Dan の「Pretzel Logic」の持っている雰囲気に近いものを感じます。 「Hula Rocka Hula」は、ボーカルが Van Morrison のように聴こえます。 A面ラストの「Drive Back The Shadows」は、最もスワンプな楽曲。 Jay Graydon のギターソロも聴くことができます。
 B 面は 4 曲しかないので、それだけで物足りません。 「March Of The Ants」は、どこがアリの行進なのかわからない、やや暗めの曲。 David Foster の弾くARP らしき音が聴ける「Seeds」も中期の Steely Dan 的なサウンドですが、曲が弱いです。 「Sundance」もちょっと考えすぎのような展開が、Jay Graydon のねちっこいギターでやや救われる楽曲です。 ラストの「Skyboat」は、5 分 59 秒もある大作。 ピアノの弾き語りのうえに哀愁を帯びたボーカルが重なり、次第にハードに展開していきます。 これもスワンピーな王道路線といってもいい楽曲でしょう。

 全 9 曲のこのアルバム、後世に残るような名盤とはいえませんが、僕は「Duce Of Hearts」 1 曲だけは、何度も聴き続けるでしょう。 この曲の唯一の欠点は、終わり方なのですが、そこもずいぶん前から気にならなくなってきました。 この路線で、1977 年あたりにもう 1 枚でもアルバムを残したら、大バケしてたのではないかと思わせる Chris Ducey ですが、その後の足取りは不明です。 音楽シーンから遠ざかったものと思われます。

 最後に参加ミュージシャンのクレジットに関して補足しておきます。 アルバムのクレジットには、David Foster は、D.Foster といったように名前が略されて印刷されています。 そこでこのブログでは、ネットで調べてフルネームを記入しております。 ちなみに、このアルバムのサウンド面で最も気になる参加ミュージシャンは、Ira Herscher だと思います。 残念ながら David Foster のアルバムへの貢献はほとんど認められません。  Ira Herscher は、Jack Conrad との共同プロデューサーでもある David Herscher とは兄弟のようですが、この二人ともそもそもラテン系のミュージシャンで、このアルバムのようなロック系の作品にはあまり登場しない人物のようです。

 次回は、Chris Ducey がこのアルバムの前に参加していたユニット「Prairie Madness」をご紹介する予定です。



■Chris Ducey / Duce Of Hearts■

Side-1
Duce Of Hearts
Blue-Eyed Blues
Carmelita’s Kharma
Hula Rocka Hula
Drive Back The Shadows

Side-2
March Of The Ants
Seeds
Sundance
Skyboat

Produced by Jack Conrad and David Herscher
Recorded at A&M and Warner Bors. Recording Studios L.A.
All Selections Written by Chris Ducey

Jay Graydon : guitar and ARP
Richard Bennett : slide guitar
Jack Conrad and David Herscher : bass
Jim Horn , Chuck Findley , Don Menza ; horns
David Foster : organ and ARP
Ira Herscher : piano
Ritchie Hayward , Russ Kunkel , Harvey Mason : drums
Steve Foreman : percussion

Warner Brothers BS2841

Richy Snyder

2006-03-15 | AOR
■Richy Snyder / Richy Snyder■

今日取り上げるのは久しぶりにAOR、1978年にRichy Snyder が発表した唯一のアルバム「Richy Snyder」です。 このアルバムでまず、注目されるのがジャケットに描かれている不思議なイラストです。 右側に、Richy 本人と思しき男性、その向かいには手をつなぐ長髪の女性。 しかし、なぜか顔は茶色に塗られていて表情がありません。 背景には、ASUKA という看板のある古びた建物。 これはホテルなのでしょうか? 真ん中には道路、奥のほうには海岸らしき風景が広がっています。 このイラスト、Richy の表情も含め、最初はちょっと気味が悪い感じだったのですが、今はアルバムの内容と不思議に絡み合ってとても好きなジャケットのひとつです。このイラストは、Ruby Mazur という人ものです。 ちょっと調べたら公式サイトがありました。 Steely Dan のファースト「Can't Buy A Thrill」もこの人の作品だったんですね。
 さてさて、アルバムの内容ですが、Richy Snyder の声がまず、日本人好みのAOR的なサウンドには合わないというか、ちょっと甲高く、かといって伸びがあるわけでもなく、かなり個性的な声なのです。 好き嫌いがはっきりと出そうなボーカルです。 参加しているミュージシャンは、クレジットを参照していただきたいのですが、かなりの有名どころですので、しっかりした East Coast のアダルトな AORサウンドが繰り広げられます。 
 アルバムは、いきなりこのアルバムを代表する名バラード「Starting All Over Again」から始まります。 こうしたバラードから始まるアルバムは、Phil Cody のアルバムにもありますが、ともに共通しているのは、声が微妙に震えていてそこが、やるせないというかせつない味わいを醸し出しているところでしょうか。
 聴き所は、ヴィブラフォンのソロがすばらしい「Don't It Feel Good」やギターのイントロがやさしいラブソングの「I Want You」といったメローな作品です。 しかし、ややアップテンポで、ちょっとエキゾチックな「King Of Siam」や、ちょっと滑稽な「Oora Oora」なども印象に残ります。 いずれにしても、バックの女性ボーカルが主張しぎずに目立っている曲がいいです。
 このアルバムは、AORガイドブックみたな本に取り上げられていないと思いますが、(間違いだったらすいません)それは何故なのでしょうか? ネット通販などでも入手もしやすいですが、CD化されそうにもありません。 時々、こんなぽつんと孤立したアルバムがあるんですよね。

■Richy Snyder / Richy Snyder■

Side-1
Starting All Over Again
King Of Siam
Coat Of Armor
Don't It Feel Good
Back On The Streets

Side-2
When You Fall In Love For The First Time
I Want You
Oora Oora
California
If She'd Take Me Back

Rhythm Section:
Andy Newmark , Willie Weeks , Hugh McCracken , Jean Roussel
Hiram Law Bullock , Tom Griffith , Emil Richards , Dwayne Smith
Horns:
Peter Christlieb , Charles Findley , Slyde Hyde , William Perkins
Background Vocals:
Polly Cutter , Cynthia Bullen , Jon Joyce , Fred Freeman
Maxine Willard Waters

Produced by Don Rubin & Caroline Rubin
Co-Produced by Richy Snyder

Horn Arrangements : Hugh MaCracken
Engineer : Neil Brody
Recorded at The Village Recorder
Cover Illustration & Photography : Ruby Mazur

Manhattan Island Records MR-LA924-H

Jon Keyworth

2006-03-04 | AOR
■Jon Keyworth / Keys■

先日行われたスーパーボールのハーフタイムショーでは、あの Rolling Stones が登場したようですね。 さすがに世界最大級のイベントです。 Rolling Stones の今度の来日には全く興味ありませんが。


さて、今日ご紹介するのはそんなアメリカンフットボールの名選手であった Jon Keyworth が1978年に発表した唯一のアルバムです。 ネットで調べたところ、Jon Keyworth はデンバー・ブロンコスの名RBとして活躍したプレイヤーのようです。 1974年から 1980年まで RB として稼いだヤードは 2,653ヤードということで、この数値はきっとすごいんでしょう。 その Denver Broncos で現役選手として活躍していた Jon Keyworth が残したアルバム「Keys」は、AOR/MOR ファンが密かに探している名盤なのです。 現役のスポーツ選手がレコードを出すなんて、日本では増位山とか巨人の柳田を思い出しますが、ともに現役ではなかったかような気がしますね。 Jon Keyworth は、きっとかなりの人気選手だったんでしょう。 そんなこともあってか、このアルバムは、それほど見つけにくいアルバムではありませんし、高価なプレミアもついていないと思います。 気になる方は早めに探してみてください。

内容はといえば、ジャケットのごつい感じからはちょっと意外に思えるやさしいJonのボーカルが、洗練されたアレンジのなかを軽やかに駆け巡るような感じです。ちょうど 1978年といえば、AOR の絶頂期とも言える時代です。 この時代のアメリカは、ロッキー山脈のふもと、コロラド州でもサウンドのムーブメントは AORだったんですね。

このアルバムのハイライトは涙の名バラード、「Cryin' in the Middle of the Night」と「Love Won't Wait」の2曲です。 特に前者はバックの女性コーラスのはまり方も含め、心地よさはたまりません。 他にも捨て曲がないアルバムですので、AOR ファンの方は覚えておいて損はないですよ。

最後に情報を少々。レーベルは Aspen Records という地元ローカルレーベルからのリリース。品番は AP-2701 となっています。


■Jon Keyworth / Keys■

SIDE-1
Make Way Miami
Carnival
Love Somebody
Cryin' in the Middle of the Night
We Were In Love
You Bring the Love

SIDE-2
Don't Let Love Stand in Your Way
Love Won't Wait
Let Your Song Shine Through
Brand New Day
Remember Me Tonight

Arranged and Produced by Beau Hill for Aspen Records
Recorded and mixed at Applewood Studios, Golden , Colorado

Jon Keyworth : Lead vocal
David Zajicek , Sam Broussard : electric guitar
David Sisson : Piano , Electric Piano
Dennis Parker : Bass
Gary Hodges : Drums
他は省略

Special Thanks To the Broncos appear on the cover and sleeve photo

Aspen Records AP-2701