Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Franklin Micare

2006-07-10 | AOR
■Franklin Micare / Franklin Micare■

 前回の投稿で名前を出してしまったので、今日は Franklin Micare が 1978 年にリリースしたファーストアルバムをご紹介します。 ほとんどの人がこのアルバムを彼の唯一の作品だと考えていると思いますが、なんと今世紀に入ってからセカンドアルバムを発表しています。 その CD については、いったん後回しにしますね。

 一般的には AOR としてカテゴライズされることが多いこのアルバムですが、AOR というよりは普通にキャッチーで POP なアルバムです。 未だに CD 化されてはいないものの、中古レコード店でよく見かけますし、数百円で買えるようなものです。
 アルバムを語るのに重要な事項としては、ジャズ界の巨匠プロデューサーである Joel Dorn がプロデュースしている点があります。 あまりにもジャズ界での仕事が有名なために、ポピュラー界ではあまり多くの仕事をしていませんが、僕の愛聴盤である David Forman のアリスタ盤も彼のプロデュース作品です。 クレジットを見ると、Elliott Randall , Allan Schwartzberg , Will Lee などの NY セッションマンが参加しており、いい時代のニューヨークの匂いを感じることもできます。

 アルバムは、同じテイストの曲「Nobody」と「Delectable Love」でスタート。 このたたみかけるメロディ展開とインスト・パートのないアレンジを勝手に Micare 節と呼んでいますが、この曲調には若気の至りというか、ちょっと気恥ずかしさすら感じるものがあります。 ちなみに、後者には Kenny Vance がコーラスで参加しています。 つづく、「If You Love Me , Love Me Right」はアルバムで最も好きな曲のひとつ。 ここらでメロウなバラードが来ないと息切れしてしまうと思った矢先に始まるので、リスナー的には大満足でしょう。 トロピカルなアレンジと余裕のある歌いまわしも良いです。 Micare 一人による「Hot Jazz」は大人の味わい。 そして、テンプスの大名曲カバーとなる「I Can’t Help Myself」は、オーソドックスなアレンジにも Micare 節を感じます。
 B 面は、Micare 節の「Instant Electricity」、アフリカンっぽいリズムの「Rhythm」と続き、アルバムの中でも印象的なメロではピカいちともいえる「So Nice (Whatever It Is)」へと流れていきます。 この曲も典型的な Micare 節なのですが、Micare 節の特徴はクセのある短いリピートを多用する点にあるといえるでしょう。 とはいいつつ言葉では表現するのはこれが限界です。 ちょっとマイナー調の「The Feelin’ Of Love」には、女性コーラスのなかに、Googie Coppola の名前を発見。 ラストの A 面ラストと同様にカバー曲となる「Mack The Knife」。 これは、ニューヨークのライブハウス「Brandy’s」でのソロ・ライブ録音となっていますが、リラックスした雰囲気のなか、お客さんの手拍子や歌う本人の笑い声なども聴け、盛り上がっている様子が伝わってきます。

 こうして、アルバムを通して聴いてみると、Frankiln Micare の本質的にやりたい音楽は、僕が表現してきたMicare 節のポップソングではなく「Hot Jazz」や「Mack The Knife」のような、アダルトでジャズ寄りのサウンドだったのだと感じます。 ライブで聴かれる「Mack The Knife」と冒頭の「Nobody」が同じ人物とは思えません。 そうしたことから、Joel Dorn 、Franklin Micare そして多くのアレンジを手がけている Elloott Randall などの間で、微妙な力関係が生まれてこのようなアルバムになったのだと思います。 とはいえ、全体的な曲のクオリティも高いし、時々聴きたくなる「If You Love Me , Love Me Right」や「So Nice」があるので、このアルバムは大切な一枚になっています。

 さて、冒頭にセカンドアルバムの話をしましたが、そのタイトルは「You’re The Reason」というもので、半分くらいがスタンダードのカバーだったように思います。 普通に Bobby Caldwell が年をとったのと同じようなものです。 
 ところが、今日現在、苦労して買ったこのセカンドCDが行方不明になってしまっています。 パソコンにも入れていないので、ちょっと悲しいですが、それほど焦ってないのも事実で、じつはオーソドックスすぎて退屈な作品だったのです。
 ネットで検索したら、近影をみつけることができました。 その中に書かれていたキャッチ・コピーです。 真ん中の人は知りませんが、褒めすぎです。

Harry Connick Jr. meets Desi Arnez meets Van Morrison!



■Franklin Micare / Franklin Micare■

Side-1
Nobody
Delectable Love
If You Love Me , Love Me Right
Hot Jazz
I Can’t Help Myself

Side-2
Instant Electricity
Rhythm
So Nice (Whatever It Is)
The Feelin’ Of Love
Mack The Knife

Franklin Micare : vocal , acoustic guitar , electric guitar

Drums : Rick shlosser , Allan Schwartzberg , Gary Mure
Bass : Bob Babbit , Will Lee
Guitar : Elliot Randall , Bruce Foster , Jon Stroll
Piano , Keyboards : Pat Rebillot , Kenny Ascher , Kenny Ascher ,Larry Harlow
Percussion : Jimmy Maelen , Pablo Rosario , Bruce Foster
Conga : Jody Linscott , Milton Cardona , Rick Shlosser
Synthesizer : Philip Namanworth

Produced by Joel Dorn for the Masked Announcer
All Songs by Frankilin Micare
Except ‘ I Can’t Help Myself’ by Holland-Dozier-Holland
‘Mack The Knife’ by Weill-Brecht-Blitzstein

All Tunes Recorded and Remixed at Regent Sound Studios , New York

Private Stock Records PS7005


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