Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Chris Ducey

2006-05-01 | AOR
■Chris Ducey / Duce Of Hearts■

 今日のレコード、ジャンルを AOR にしていますが、どちらかというと Pre-AOR 的な気持ちを込めてジャンル分けしたものですので、SSW でも良かったかとは思います。
 そんな Chris Ducey の唯一のソロ「Duce Of Hearts」は 1975 年に Warner Brothers からリリースされた未 CD 化作品です。
 普通の感覚では、こんなジャケットでは購入意欲が湧かないものですよね。 このレコードも昔は 500 円くらいの箱にふつうに入っていたものです。 しかし、10 年くらい前からアナログ市場に巻き起こった「David Foster買い」のようなムーブメントの影響で、比較的注目されるようになったアルバムです。 クレジットには、盟友 Jay Graydon も参加しており、「AIPLAY」より 5 年も前にこの 2 人が参加しているという現象面からも一部のマニアの間では重要アルバムと考えられたようです。 

 さて、そんな一枚ですが、このアルバムは 1 曲目「Duce Of Hearts」に尽きますね。 他の 8 曲が束になってかかっても、僕はこのアルバム表題曲 1 曲の価値の方を重んじます。 そんな理由から、アルバムを通して聴いたのは本当に久しぶり。 日頃は、1 曲目もしくは A 面のみで終了していましたので。 この「Duce Of Hearts」は本当に決定的な名曲で、Chris Ducey のボーカルは若かりし頃の Boz Scaggs のような魅力をもち、Ira Herscher の広がりのあるピアノと相まって、ダイナミックな曲に仕上がっています。 このような曲ばかりであったら、このアルバムはもっと有名になり、CD にもなったことでしょう。 しかし、そうは問屋が卸してはくれませんでした。
 2 曲目「Blue-Eyed Blues」は、やはりピアノのバックがきらびやかなミディアムな楽曲。 続く、「Carmelita’s Kharma」は、エキゾチックな感じの曲です。 1975 年にしてはかなり洗練されており、その洗練というつながりでいくと Steely Dan の「Pretzel Logic」の持っている雰囲気に近いものを感じます。 「Hula Rocka Hula」は、ボーカルが Van Morrison のように聴こえます。 A面ラストの「Drive Back The Shadows」は、最もスワンプな楽曲。 Jay Graydon のギターソロも聴くことができます。
 B 面は 4 曲しかないので、それだけで物足りません。 「March Of The Ants」は、どこがアリの行進なのかわからない、やや暗めの曲。 David Foster の弾くARP らしき音が聴ける「Seeds」も中期の Steely Dan 的なサウンドですが、曲が弱いです。 「Sundance」もちょっと考えすぎのような展開が、Jay Graydon のねちっこいギターでやや救われる楽曲です。 ラストの「Skyboat」は、5 分 59 秒もある大作。 ピアノの弾き語りのうえに哀愁を帯びたボーカルが重なり、次第にハードに展開していきます。 これもスワンピーな王道路線といってもいい楽曲でしょう。

 全 9 曲のこのアルバム、後世に残るような名盤とはいえませんが、僕は「Duce Of Hearts」 1 曲だけは、何度も聴き続けるでしょう。 この曲の唯一の欠点は、終わり方なのですが、そこもずいぶん前から気にならなくなってきました。 この路線で、1977 年あたりにもう 1 枚でもアルバムを残したら、大バケしてたのではないかと思わせる Chris Ducey ですが、その後の足取りは不明です。 音楽シーンから遠ざかったものと思われます。

 最後に参加ミュージシャンのクレジットに関して補足しておきます。 アルバムのクレジットには、David Foster は、D.Foster といったように名前が略されて印刷されています。 そこでこのブログでは、ネットで調べてフルネームを記入しております。 ちなみに、このアルバムのサウンド面で最も気になる参加ミュージシャンは、Ira Herscher だと思います。 残念ながら David Foster のアルバムへの貢献はほとんど認められません。  Ira Herscher は、Jack Conrad との共同プロデューサーでもある David Herscher とは兄弟のようですが、この二人ともそもそもラテン系のミュージシャンで、このアルバムのようなロック系の作品にはあまり登場しない人物のようです。

 次回は、Chris Ducey がこのアルバムの前に参加していたユニット「Prairie Madness」をご紹介する予定です。



■Chris Ducey / Duce Of Hearts■

Side-1
Duce Of Hearts
Blue-Eyed Blues
Carmelita’s Kharma
Hula Rocka Hula
Drive Back The Shadows

Side-2
March Of The Ants
Seeds
Sundance
Skyboat

Produced by Jack Conrad and David Herscher
Recorded at A&M and Warner Bors. Recording Studios L.A.
All Selections Written by Chris Ducey

Jay Graydon : guitar and ARP
Richard Bennett : slide guitar
Jack Conrad and David Herscher : bass
Jim Horn , Chuck Findley , Don Menza ; horns
David Foster : organ and ARP
Ira Herscher : piano
Ritchie Hayward , Russ Kunkel , Harvey Mason : drums
Steve Foreman : percussion

Warner Brothers BS2841


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