夫に送ってもらって美容院へ。 前にやってもらったことのある男性だった。
最初からべちゃべちゃしゃべるのもなんだし、黙って通すのもなんだし・・。
「二度目なんですよ、前にはさみ捌きが・・あなたのことブログに書かせていただいたんです」
「そう言えば思い出しました! 僕にそんなことおっしゃられましたよね」急に笑顔になった。
未婚だが、3年つきあっている彼女とは家庭や子育てのことは自分の希望と合うような気がするから
反面、結婚してもうまくやって行けるかなあと思うようになって来たんですと言った。
「今の世の中分からないでしょう、親が子供を子供が親をとかね、信じられないが大変な世の中、
家族になる、家族を作るって大変なことでしょう」と言う。
そんな風な家庭の話の中で、ひとつの夫の父親としての出来事を話した。
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次女が幼稚園の時、仕事仲間の看護婦さんから”ぱんだうさぎ”をもらった。 名前は”ぱんだちゃん”
子供たちはたいそう可愛がった、特に次女は妹でも出来たようにおなかに乗せたりそれは可愛がった。
半年経ったある夕方、買い物から帰宅した私は動かないパンダウサギを発見した。
(わ~どうしよう! 子供たちショックだろうなぁ・・どうしよう、死んだなんて言えないわ・・)
「お盆前で田舎に帰るしね、うさぎ死んじゃうし返しに行ったよ」とりあえず帰った子供たちに言った。
「お別れがしたかったのに」と寂しそうに言ったが、何の疑いも無く私の言葉を信じた。
遅く帰宅した夫に話すと「子供たち起こしなさい、本当のことを言わないと、子供たちの為にならない」
夫は起きてひざを合わせて座る眠そうな3人の子供たちを前にパンダウサギが死んだことを伝えた。
そして生き物を飼うことは大変なこと、責任や愛情の大切なこと、死について諭すように話した。
話す夫も、聞く私や3人の子供たちも涙をぼろぼろ流し何度も手をぬぐいながら聞いた。
みんなで反省をしながら、うさぎを埋めてやろうと綿で包み箱に入れ弔いに向かうように、
みんなで近所の公園へ行った。 夜の11時を過ぎていた。
穴を掘って土をかけようとして「土をかけないで!」と何度もうさぎにとおせんぼをしたのは次女だった。
みんなが泣きながら、少しづつ砂をかけて埋めてやった。 小さな手を合わせた悲しい別れだった。
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あの時の一部始終、話す辛そうな夫の顔と声、泣きじゃくる3人の子供たちの顔、はっきり覚えている。
忘れられない夫のあの時の毅然とした対処には、私は感動さえ覚えた。
可愛そうだから言えない、隠そうとした私は恥じ入る思いだった。 それでは子供には何も伝わらない。
もうひとつの出来事も話した。 これは彼への願いも込めて。
夫としては色々あったが、父親として、ここと言う時にはきちんと対応してくれた夫だったように思う。
母親の目先にとらわれた考えではとうてい、夫のお陰で今があると思っている。
「今こんな父親がいると思うと、嬉しいです。 僕もいい家庭が作れるようにがんばります。
美容院では旦那さんの愚痴は言っても、讃えた話は始めてです、今日は感動しました」
「またどうぞ、お待ちしております」 マニュアル通り外まで見送り深々と頭を下げたが、
こんな話でも、若い人の家庭作りの父親としての立場、少しでも参考になればと思い
「ありがとう」と頭をさげながら、彼の未来の家庭が明るく楽しいものであることを願った。