徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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レビュー:こやまゆかり著、『バラ色の聖戦 The Future is in our Hands!』全20巻

2019年12月04日 | マンガレビュー

義妹からお勧めだからと全巻セットを送ってもらい、さっそく一気読みしたばかりでなく、二度読みしてしまうほど面白いマンガでした。30歳の専業主婦が読モをやったのを機にモデルを目指して戦う物語。
主人公の年齢が30歳で二人の子持ちであるということを除けば、平凡(以下)からスタートした主人公がなにかの分野で才能を発揮し、意地悪な敵や世間の冷たい風を受けて紆余曲折しながらも心強い味方もいて、結局大成するという割とよくあるストーリーパターンかと思います。すぐに思い浮かべられるものだけでも、美内すずえの『ガラスの仮面』(演劇)、一条ゆかりの『プライド』(歌)、山岸涼子の『舞姫テレプシコーラ』(バレエ)、中村佳樹の『スキップ・ビート』(演劇)などがあります。
しかし、この作品は主人公・真琴が既婚者(のちに離婚しますが)の専業主婦であることから、少女漫画では重点を置かれない「大人の女性の自由と生きがい」がコアテーマとなっており、理解のない夫、子育て、働く母親としての葛藤がきめ細かく盛り込まれているのが特徴的です。その意味でまさに「大人の女性に贈るマンガ」と言えますね。
しかし、こういうマンガに登場するライバルその他の人を陥れようとするエネルギーやその手段ってえげつないですよね。まあ、こういう毒があるからこそ主人公の強さやしなやかさが際立つのですけど、やっぱりすごいなーと感心せずにはおれません。どうしてそういうことにエネルギーが使えるのかなあとか、常にいらいらとしてて疲れるのに、ご苦労様みたいな。
この作品の悪役メインキャスト紗良はまさにイライラの塊ですが、そのイライラの原因は子供を自分の見栄の道具としてしか見ない母親から認められたいという渇望と認められない不安と絶望にあって、強烈ですがなかなか悲しいキャラでもあります。
紗良は分かりやすい悪役キャラですが、人としての底知れない怖さを感じたのは真琴の元夫・敦司の再婚相手・陽子ですね。絵に描いたような夫を立てる家庭的な専業主婦で敦司の理想の相手として登場しますが、敦司が脳出血で倒れ、後遺症で元の仕事に戻れなくて今後を真剣に悩んでいるときに見せた「収入を確保するのはあくまでも夫の役割で自分はそのためのサポート」という割り切りが逆に怖いような気がしました。妙に納得した面もありますが。夫の横暴をにっこり笑って許していたのはこのためだったのか!と。😅 
なんというか真琴のモデルの世界も異世界ですが、ママ友・主婦友の世界も私には無縁の者なので、いろいろと興味深くて勉強になりました。

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