ブレイディみかこ氏の著作を読むのはこれで4冊目になります。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でブライトンのカトリック系の小学校から地元の底辺中学に入ったばかりの息子は、続編の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』では中2になり、授業でのスタートアップ実習、ノンバイナリーの教員たち、音楽部でのポリコレ騒動、ずっと助け合ってきた隣人との別れ、そして母の国での祖父母との旅などの「事件」を通じてその豊かな感受性で傷ついたり、後ろめたさを感じたり、不条理に感じたり、「ライフってそんなものでしょう」などと何か悟ったりして成長して行きます。
このエッセイは『波』2019年5月号~2020年3月号に掲載されたものです。
本書の魅力は何か。それはただの中学生の成長物語ではないところ。
イギリスの下層労働者階級が多く住む地域で生きる日本語を話せない日系少年の日常が語られることから、それを通してイギリス社会が見えて来るところ。
母親目線ではあるものの、「母ちゃん」と息子の対話がきちんと描かれ、「母ちゃん」も息子に刺激されていろいろ考えたり、気づいたりして成長して行くところ。
「父ちゃん」はあまり変わらないけど、古き良き労働者の考え方を継承しているため、息子の現在との対比が興味深い。