『テルマエ・ロマエ』は義妹が日本から予告もなく送ってきてくれたマンガですが、独特のおかしみがあり、ずいぶんと笑わせてもらいました。
ローマ帝国はハドリアヌス皇帝の治世下の紀元後128年、浴場技師として働くルシウス・モデストゥスは浴場設計のアイデアに悩みながら風呂に入っているうちに排水口と思しき穴から激しき吸い込まれ、ようやく出たところは現代日本の銭湯だったーという具合に風呂または池などの水を介して日本のどこか(「平たい顔族」の国)の風呂にワープして、そこからアイデアを持ち帰ってそれをできる限り再現することを繰り返すうちに皇帝自身のお抱えとなってどんどん奇抜な浴場施設を開発していきます。
このローマと日本の入浴文化をつなげる発想も面白いですが、まじめ一徹で始終しかめっ面で眉間にしわを寄せているルシウスが日本の入浴文化の些細なことを真剣に調べ、驚き、「なぜ下等に見える平たい顔族がローマの文明にはないものをこうもやすやすと発明・使用しているのか」と悔しがる様の滑稽さが魅力的です。
私が特に気に入っているエピソードは、ローマで成金趣味の派手な風呂を作るように依頼されてうんざりしているルシウスが、日本にワープしてそこで「ローマ風の浴場」をクライアントに依頼されてまじめに調べていたのに、実際にはローマ風とはかけ離れた成金趣味のものがクライアントの希望でうんざりしていた日本の建築家と共感しながら芸術的完成度の高い浴場を作り上げるという3巻に収録されているものと、6巻に収録されているルシウスが日本で惚れてしまったラテン語を話す女性の祖父が古代ローマにワープして、マッサージ師の能力を発揮してとりあえず金を手に入れ、しまいにはハドリアヌス皇帝の寿命を2か月ばかり延ばすような施術をして褒美をもらって帰るエピソードです。このおじいちゃんの動じないところがすばらしいと思いました。マッサージの需要はローマの浴場でもあるわけで、そこにひょっこり出てしまったおじいちゃんが言葉は通じなくとも体を見れば状態が分かるので効果のあるマッサージを施し、彼の前に行列ができてしまい「しかたねえな」と治療し、終わってから「なんだかわからねえが、銭は手に入った」と今度は外に出て服屋で服を買い、飯屋で飯を食って、他の労働者と美味しい食べ物を通して通じ合うシーンとか、異世界での淡々としたおじいちゃんの反応が魅力的ですね。そして、ハドリアヌス帝のもとに連れていかれて、じじい同士眼力だけで語り合っているところがすごいですね。😅
このマンガのすごいところは、これだけ登場人物がしかめ面のおっさん・爺さんで占められてシリアス風なのに、ところどころ吹き出してしまうようなユーモアが盛り込まれているところです。
最終巻の終わりに続編の新連載がスタートするようなことが告知されていたのですが、単行本化はされていないようですね。残念です。