ドイツでは核廃棄物処理に関する原発事業者と国の役割分担とその資金調達方法が今年1月にあまり公の注意を惹くことなく最終決定しました。その法的根拠となる廃棄処理基金法(Entsorgungsfondsgesetz)、正式名称「原子力廃棄処理資金調達のための基金設立に関する法律」(Gesetz zur Errichtung eines Fonds zur Finanzierung der kerntechnischen Entsorgung)といい、その第7条第2項に基づいて、本日、RWE、エーオン、EnBW、ヴァッテンファルの原発事業者4社が約240億ユーロを核廃棄処理基金へ振り込みました。
2017年1月27日版では、この振り込みが7月1日に実行されることが定められており、後になって、その日が土曜日であることが判明したので、慌てて(?)振り込みに関する追加政令を定めて、月曜日、すなわち7月3日に振り込んでもいいことになりました。ただし、利子の計算には、その金額が7月1日土曜日に入金されたかのように扱うことになっているので、欧州中央銀行(ECB)の定めるマイナス金利0.4%が1日から3日の間理論的にかけられることになり、526,000ユーロの利子をECBに払うことになるのですが、実際には入金がないので、その扱いにはまだ不明のところがあるようです。
また240億ユーロという金額の振り込み自体にも金融技術的な問題がありした。というのは、振り込みに使用されるソフトウエアが小数点以下2桁を含めてトータル11桁しか扱えないからです。このため原発事業者らは9億9900万ユーロずつに小分けして振り込む羽目になったそうです。そういう奇妙な手間があったにせよ、原発事業者4社は、たったそれだけの金額で済んで、笑いが止まらないと言ったところでしょう。これを払うことで、核廃棄処理の責任の一切が国へ移譲されることになるのですから。
この振込金額は廃棄処理基金法の附記2に原発ごとに定められており、総額173億8900万ユーロにリスクプレミアム35.47%を加えて、235億5600万ユーロとなっています。これは概ね去年の原子力委員会の採択(拙ブログ「ドイツの脱原発、核廃棄物の処理費用は結局納税者持ち~原子力委員会の提案」を参照してください)に沿ったものです。
振込金額の内訳は:
エーオン 約100億ユーロ
RWE 68億ユーロ
EnBW 48億ユーロ
ヴァッテンファル 18億ユーロ
一括払いにすることで、原発事業者4社は、分割払いの際の利子年間4.58%を節約することになります。
各原発の廃炉・解体は、原発事業者4社が責任を持って行うことになっています。2022年までにドイツ国内の原発が全て停止することになっていますが、廃炉・解体にかかる期間が最終的にどのくらいになるのかは誰にもわからないし、そこから出る核廃棄物の最終処理方法などはまるで決まっていないため、その処理にかかる費用がどのくらいになるのかは全く予測不能です。
核廃棄処理基金の運営に関しても不明な点がまだ多い状態です。「脱原発」の優等生のように称賛されるドイツですが、その脱原発の行方はまだまだ不透明と言わざるを得ません。
参照記事:
ZDF heute, Atomkonzerne überweisen 24 Milliarden Euro, 04.07.2017
Die Welt, Das sind die dunklen Seiten des deutschen Atomfonds, 03.07.2017
出典法律:
BFE(ドイツ連邦原子力廃棄処理局), Entsorgungsfondsgesetz, 27.01.2017
Bundesregierung(ドイツ連邦政府広報), GESETZ IN KRAFT GETRETEN: Finanzierung des Atomausstiegs sichern, 19.06.2017