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五十嵐貴久『フェイク』

2007-06-20 15:51:44 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「最後のどんでん返しが面白い」と評した五十嵐貴久氏の「フェイク」を読みました。以下、ネタバレしてますので、ネタを知りたくない方は読まない方がいいかもしれません。
 老人ホームがあるため地上げに反対する西村区議を貶めて地上げしようとする沢田は、どうしても東京芸大に入りたいが実技はともかく学科試験がどうしようもない息子の昌史をたぶらかし、カンニングをさせ、それを世間に暴露して、西村区議を辞任に追い込みます。実際のカンニングに手を貸した私立探偵の宮本は職を失い、東大生の加奈は退学させられます。宮本は復讐を決意し、沢田が経営するカジノで西村に沢田とポーカーで勝負させ、10億円を奪う計画をたてます。。カジノのポーカー台に盗撮カメラを仕掛け、西村と宮本が交信できるようにし、相手の手を見ながら、宮本が西村に指示を出すというものでした。対決は始まり、こちらはフルハウス、向こうはフラッシュという局面で二人は勝負に出ます。10億ずつ賭けたその勝負は、何と西村の負け。沢田はロイヤルストレートフラッシュでした。西村はイカサマだ、と叫びますが、沢田はこっちも盗撮していることを知っていて、奥から昌史が出て来て、沢田がまた芸大に入れてくれるというので、すべてこちらの計画を沢田にしゃべったと言います。悄然として帰る西村。沢田は現金を入れた金庫を開けますが、中は空です。蒼白になる沢田。何と、西村と加奈と昌史は、カジノのある階の一階下のフロアに、沢田のカジノと寸分違わないカジノを作り、エレベーターを操作して、その階に降りさせて勝負させ、金庫の裏に穴を開けておいて、そこから勝負している間に現金を盗み出していたのでした。沢田の執念深さを知っている加奈は、宮本に2億の現金を渡して、海外に逃げるようにチケットを渡します。加奈も車で町の中に消えて行くのでした、という話です。
 ミステリー、謎解きが苦手な私としては、それなりには楽しめましたが、その程度でした。ただ、かなり整理されたストーリーなので、読みやすい小説だと思います。ミステリーファンの方なら、かなり楽しめるのではないでしょうか。

ジョン・カンペンター監督『ゴースト・オブ・マーズ』

2007-06-19 17:29:13 | ノンジャンル
 WOWOWでジョン・カーペンター監督の'01年の作品「ゴースト・オブ・マーズ」を見ました。
 近未来の火星。凶悪犯ウィリアムズを含む囚人を護送するため、刑務所を列車で訪れた警官達は、囚人たちの惨殺死体や多くの生首の串刺しを発見します。車中にいた囚人は自らノドをかっ切り、白塗りの顔をした首領のもと、顔にペイントをして自らの体を傷だらけにした炭鉱夫たちは殺人鬼と化しています。刑務所にいた学者は、埋もれていた火星の先住民の霊が解き放たれ、人間に乗り移っていると言います。メラニー副隊長は残った囚人を連れて鉄道で脱出することを試みます。列車が来るまで施設の中で籠城しますが、殺人鬼たちは侵入してきて、壮絶な殺戮戦が繰り広げられます。メラニーたちは列車に乗り込むのに成功しますが、メラニーは戻って奴らを全滅させなければいけない、と主張し、実行します。超大型爆弾で奴らを全滅させるのに成功しますが、生き残ったのはメラニーとウィリアムズだけでした。ウィリアムズは捕まるのが嫌で、途中で下車します。都市の安全な場所で休んでいたメラニーに、奴らがまた都市に攻め込んで来たという情報が届きます。バタンと開けられたドアのところには、武装したウィリアムズがいました。メラニーとウィリアムズはいつ終わるともしれない戦いへとまた赴くのでした、という話です。
 シーンは夜ばかり、バックには常にデスロックが流れ、殺戮に次ぐ殺戮。まさにジョン・カーペンターのオハコと言っていいでしょう。B級アクションが好きな人にはオススメです。それにしてもジョン・カーペンターって、私が学生の頃からもう映画を撮っていて、今までずっとスタンスをかえる事無く、B級に徹しているというのは、何か偉いなあ、と思ってしまう私なのでした。

原りょう『愚か者死すべし』

2007-06-18 15:28:10 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が推薦していた原りょう氏の「愚か者死すべし」を読みました。
 別所という男が銀行で銀行員と暴力団鏑木組組長を撃ちます。伊吹という男が自首しますが、その娘の啓子が父は別所の身代わりで出頭したので、助けてほしいと私立探偵の沢崎のところへ来ます。沢崎は警察で不審なレンジローバーを見かけ監視していると、そこから出て来た男は伊吹と彼に付き添う東海林という刑事に発砲し、刑事を殺します。沢崎は自分とともにレンジローバーを追跡していた車の主人の家を訪ねると、そこには別所と、別所が銀行で発砲した日に同じ銀行で失踪していた老人の設楽が監禁されているのを発見します。
別所は事件の直後に誘拐されたといい、改めて自首します。設楽は政界の裏情報を仕切る実力者で、犯人は自白剤を注射し、助けられる前に多くの政治的スキャンダルの情報を設楽から得ていました。犯人は得た情報の一部をマスコミに流し、政界にパニックになります。もっと情報を流すぞ、と脅し、犯人は7億円を要求し、設楽の娘から沢崎はそれを運ぶのを頼まれます。犯人が携帯で出す指示通りに運転し、7億を渡すと、謎の男が現れ、犯人を射殺します。沢崎は伊吹と東海林を撃った犯人は、伊吹ではなく東海林を殺すのが目的だったのでは、と調査すると、東海林が奥多摩で警察の幹部が犯罪を犯しているのを目撃し、地元の巡査に報告すると巡査は急死してしまい、その警察の幹部から、今回のことを見逃してくれれば将来は保証する、と言われた事実をつきとめます。そして東海林が上司から娘の縁談を持ち出された時、東海林が拒否したのが、今回の射殺につながったらしいことも分かります。すべては警察内部の犯行であり、沢崎は事務所に戻ると警察の筒見課長が来て沢崎を殺そうとしますが、建物がパトカーに囲まれると彼は拳銃自殺します、という話です。
 実はもっと多くの人物が登場し、多くのエピソードがあり、人間関係が複雑で読むのに非常に苦労しました。もともとミステリーが苦手な私としては、かなりきつかったです。複雑に入り組んだストーリーのミステリーがお好きな方にはオススメです。

アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶

2007-06-17 16:50:25 | ノンジャンル
 WOWOWで'03年の作品「アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶」を見ました。
 アンリ・カルティエ=ブレッソンは、20世紀の初頭から活躍した写真家で、ロバート・キャパが呼び掛けて作った報道写真家集団「マグナム」の創始者の1人でもあります。
 番組はブレッソンが自分の撮影した写真を見ながら話をするシーンが中心で、それ以外にも女優のイザベル・ユペール、写真家のフェルディナント・シアナ、写真家のエリオット・アーウィット、作家のアーサー・ミラー、写真家のジョセフ・クーデルクロらがやはりブレッソンの写真を見ながら語ります。
 ブレッソンの写真は大きく分けて、人物写真、風景写真、歴史的瞬間を撮った写真に分類できますが、特にすばらしいのは人物写真と歴史的瞬間を撮った写真で、前者は多くの文化人、それに市井の人々の写真を撮っているのですが、撮られた人の人間性が見事に映されていて、感動ものでした。
 また、歴史的瞬間を撮った写真では、そうした事件が起こる時なぜか彼はそこにいて、そうした写真を撮ることに成功している訳で、その運の良さは天賦の才だと思いました。
 そして本人ですが、私のこれまでの印象だと、とても芸術的な写真を撮る人なので、きっと気難しい人なのだろうな、と思っていたのが、映像で見ると、とても穏やかで、人の良さそうなおじいさんなので、この点でも意外でした。
 ブレッソンは芸術写真の人という私の固定概念を見事に壊してくれたこの番組、ブレッソン・ファン以外の人でも写真の好きな人なら、とても楽しめると思います。いつかご覧になる機会がありましたら、見る事をオススメします。

小川勝己『あなたまにあ』

2007-06-16 18:05:12 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が面白かったという小川勝己氏の「あなたまにあ」を読みました。7つの短編からなる本です。
 第一話し「蝦蟇蛙(がまがえる)」は、都会から田舎に引っ越して来た垢抜けた少女は蛙が苦手なのを知って、蝦蟇蛙を捕まえて目の前に出すと、驚いた彼女の口の中に蛙が入り込み、しばらくして会った彼女に声をかけると、眼球が飛び出し、大きく口を開け、その目の穴と口の穴の中にはこちらをじっと見つめる無数のガマ蛙が私をじっと見つめていた、という話。
 第二話「聖夜」は、高校を卒業した時、結婚してほしい、と言った彼女に煮え切らない態度で接した僕に愛想をつかした彼女はスカウトされて東京に出て、一旦はスターになるも、落ちぶれて故郷に帰って来ます。そして僕と再会した彼女は、僕にずっと会いたかったと言い、僕らは結婚します。そして結婚して僕は彼女の相談に乗ってあげることもしなくなり、僕の父の介護に疲れ果てた彼女は父を殺す、という話。
 第三話「春巻き」は、学生のころは美沙に弱い自分を守ってもらっていた夏子は、今ではずうずうしいおばさんになり、美沙が憧れていた編集者にまでなって、美沙の家に昼を御馳走してもらいにしばしば来ます。美沙はうっとうしくてたまりません。ある日、夫が夏子の写真を見て自慰をしているのを見て、美沙は夫を殺し、死体を解体し、警察に捜索願を出します。そして夏子に夫の肉で作った春巻きを食べさせ、いつまでも友達でいようね、と言う、という話。
 第四話「壁紙」は、離婚した妻と息子のためにお金が必要だった俺は殺しを引き受け、12年服役する。12年後、妻は会ってくれない。しばらくすると、妻から電話で入院したので500万を貸してくれと言われ、俺はまた殺しを引き受ける。標的を待っているとき、チンピラにからまれ、ナイフで首を刺される。薄れ行く意識の中で、家族に迷惑がかからぬよう、携帯の待ち受けに使っていた息子の写真を拳銃で撃つ、という話。
 第五話「諧謔の屍」は、教師の三上は教え子の篠原に久しぶりに会いたいので、遊びに来てくれと言われる。行くと、篠原は三上が以前殴った子が精神に異常を来たし、今だ直らず、三上の妻と子どもの生首の写真を見せられる。と、「ドッキリカメラで~す」とビデオカメラをかついだ大関教諭と何人かの生徒が出て来た。学園祭の出し物にするのだと言う。三上は大関に踊りかかり、篠原を殺してしまう。三上は刑事からすべて夢だったのだ、というが納得できない。三上は次第に狂気の世界へ入っていく、という話。
 第六話「蘆薈(ろかい)」は、女性が生理的に嫌いな私は、少女と仲良くなるが、久しぶりに会った彼女が「女」になっているのに失望し、彼女を殺します。大切な部分だけ切り取りアロエの鉢に埋め、他の肉体は捨て、彼女の肉体の栄養を吸っているアロエを食べると幸福になります。しばらくして刑事が家宅捜索に入り、アロエの鉢に埋められた白骨化した死体を見つけますが、頭蓋骨にはアロエの根がびっしりとからみついていたのでした、という話。
 第七話「あなたまにあ」は、小二の佐奈は空想が好きですが、高校生ぐらいのお兄ちゃんが「今物語りはどうなってるの?」と聞いて来て、教えてあげると、佐奈の想像通りのの動きをしてくれます。それから加奈はお兄ちゃんと遊ぶようになり、ある日、お兄ちゃんちで遊ぶ事になります。お兄ちゃんちには、佐奈が捨てたガム、髪の毛、加奈が使った紙コップやストローやティッシュペーパー、爪、佐奈の家のゴミ袋から持ち出した歯ブラシ、靴下、下着までがありました。佐奈のすべてを手に入れたいが、殺したくはないので、佐奈を作った母と父の睾丸を手に入れた、と言います。佐奈が家に帰ると、家の電気はついていませんでした、という話。
 どれも救いのない話で、異常な人間、無気味な人間、不幸な人間のオンパレード。話は猟奇的なものが多く、そういう趣味を持っている人は楽しめるのでしょうが、私は気持ち悪いだけでした。猟奇殺人、それに類するものがお好きな方にはオススメです。