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石井裕也監督『茜色に焼かれる』その2

2022-07-12 06:23:38 | 日記

昨日の続きです。

 熊木との結婚を意識するようになった良子は、風俗店の店長・中村(永瀬正敏)に店を辞めたいと切り出しました。熊木に何やらよからぬものを感じ取ったのか、中村は「風俗店に勤めていたことを言えないような男なんだろう? 大丈夫か?」と心配しました。
 良子は意を決して、自分は風俗で働いていることを熊木に正直に打ち明けたうえで好きだと告白しました。ところが、熊木は態度を豹変させ、実は妻とは離婚していないことを明かしました。熊木は「もっと気楽な関係でいようよ。風俗に勤めていたのならうまいんでしょ」と体の関係を求めてきました。
 良子はケイにそのことを相談しましたが、実はケイもまた壮絶な人生を歩んでいることを知らされて強く衝撃を受けました。ケイはヒモのような男(前田勝)と同棲しており、その男から度々暴力を受けていたのです。ケイは男との子を身籠ったのですが、男から堕ろすよう強要され、その際に子宮頸ガンを患っていることが発覚したのです。しかもケイのガンはかなり進行していました。良子はケイを励ますように、いつかカフェを再オープンしたらその時は手伝ってほしいと声をかけました。
 その帰り、良子は公営団地の自室から火の手が上がっていることに気付きました。火は消防車に消し止められ、純平も無事でしたが、この火災は純平をいじめていた同級生による放火でした。しかし、良子は火災の原因もろくに調べてもらえず、しかも団地の人々からは周囲に迷惑をかけていると責められ、団地を追い出されることとなりました。良子は「今日だけは母親だかなんだかということを忘れさせて」と純平に告げ、カバンの中に包丁を隠し持って外に出ました。
 良子が向かった先は、神社で待っていた熊木の元でした。いつものように悪びれず近づいてきた熊木でしたが、次の瞬間、良子は包丁を取り出して熊木に襲い掛かりました。
 良子の後をつけていた純平は近くの公衆電話から風俗店に電話をし、良子から包丁を取り上げました。それでも良子が熊木と揉み合いになっていると、純平から知らせを受けた中村とケイが駆け付けてきました。中村は熊木を殴り倒し、「あとは(中村と繋がりのある)ヤクザに任せてくれ」と告げて熊木を連行していきました。
 ケイは良子と純平に牛丼をご馳走してくれました。そこに中村から電話がありました。中村はヤクザの他にも弁護士の成原とも繋がりがあり、良子の一件を揉み消してくれたうえで熊木とは“ヤクザのルール”で全てカタをつけたからもう心配はいらないと告げました。純平はケイに感謝し、ケイは「今度、純平くんをデートに誘ってもいいかな」とはにかんでみせました。
 ケイがこの世を去ったのは、それから間もなくのことでした。葬式に参列した良子と純平は、中村からケイは薬を飲んでビルの屋上から転落したと伝えられました。純平は「事故ですよ。ケイさんは僕とデートする約束をしていたんですから」と自殺ではないと強調しましたが、中村はケイから預かっていた封筒を渡すと、ケイはこの封筒を預けたあと自殺したのだと語りました。封筒の中には札束が入っていました。
 良子は純平を自転車の後ろに乗せ、夕暮れの中を駆け抜けていました。良子は「なんだかいつまでも夜が来ない。ずっと茜色が続いている」と語りかけ、「俺、負けそう」と弱音を吐く純平に「わたしも」と応えました。純平は良子に「大好きだ」と伝えました。
 良子は義父が入所している老人ホームに掛け合い、演劇のオンライン公演をさせてほしいと頼みました。この老人ホームでは、コロナ禍でも入居者に楽しんでもらおうと音楽のミニコンサートなどがリモートで催されていました。純平もネットを通じて良子の一人芝居を観ました。良子は動物のぬいぐるみを陽一に見立て、彼に対する恨みと愛を告白する芝居を披露していました。純平は「母さん、わけがわからないよ」と呟きながらも、母の逞しい愛情をひしひしと感じ取っていました。」。

 度々字幕で主人公たちの暮らしにかかる金額が示されていました。この作品も叙情的な映画でした。