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マイケル・ギルモア『心臓を貫かれて』

2011-02-12 07:51:00 | ノンジャンル
 朝日新聞のノンフィクション特集で紹介されていた、マイケル・ギルモアの'94年作品『心臓を貫かれて』を読みました。'76年に2日連続で2人を殺し、自ら銃殺を望んだことで、全米で10年間行われていなかった死刑を復活させたゲイリー・ギルモアの実弟が書いたノンフィクションです。
 まず、家庭と殺人を扱った活劇の歴史を持ち、暴力が神に選ばれた解決の手段とされ、重婚や複数の神と天国を持つという理由で実際に迫害を受けてきたモルモン教について語られ、そのコミュニティの中で反抗的に母は育ったことも語られます。母の育った家庭は祖父によるDVが吹き荒れ、家族で絞首刑の見学に行き、祖母は降霊術を行い、妹は無残な事故死を遂げます。父は自分がフーディーニの私生児と思い込み、幼い頃はほとんど寄宿学校に預けられ、親の愛を受けずに育ちます。母と知り合った頃には広告詐欺で生計を立て、引っ切りなしに引越しをし、長男のフランクと次男のゲイリーは、母とともに父の激しいDVにさらされます。やがてゲイリーは盗癖を身に付け、睡眠障害に悩むようになり、周囲に対する暴力をエスカレートさせ、空き巣や自動車の窃盗で少年院に入ることになります。その後は憎悪を増幅させ、少年院の脱走を繰り返し、厳しい懲罰を自ら求めるようにもなります。少年院を出ると以前にも増して父と激しく反目するようになり、家族が唯一集まる夕食時にはケンカが絶えず、そんな中、ゲイリーは窃盗をエスカレートさせ、16才の時、強盗で刑務所に入ることになりますが、その際、末の弟である僕に「殴られてもじっと耐えて、生き延びろよ」と言います。やがて長兄のフランクは未来へ期待する気持ちを父によって奪われていき、三男のゲイレンは飲酒癖と盗癖を身に付け、父はガンで亡くなります。フランクは父が軌道に乗せていた仕事を継ぎますが、ゲイレンのトラブルで金銭を失い、ゲイリーは武装暴力強盗で15年の刑に服することになります。ゲイレンはやがて失踪し、フランクは徴兵に取られるも命令不服従で刑務所に送られ、僕は大学入学を期に家を出ます。ゲイレンはやがて人に刺された傷が元で死に、反抗的なため鎮静剤を大量に打たれたりしたゲイリーも、一時は才能を認められて美術学校に通うまでになりますが、結局脱走して再び武装強盗で逮捕されます。母は薬物の大量使用で吐血して家から出られなくなり、ゲイリーは仮釈放されますが、恋人にふられた怒りから例の殺人を犯し、自ら望んで死刑となります。その後、母は死に、フランクは失踪し、僕は音楽ライターとなって結婚しますが、2年後には離婚、鬱病になり、失恋も経験します。そしてフランクを探し当て、この本を書くための取材の結果、フランクが母の浮気によって産まれた子であることが明らかになります。そして現在も悪夢にうなされる僕の姿で、この本は終わります。
 2段組の600ページという厚い本でしたが、あっと言う間に読めてしまいました。昨年、こうした種類の本を散々読んできたので、暴力描写に関しては耐性ができていたのか、激しい暴力描写に関しても、何とかついていけたような気がします。DVに興味のある方には特にオススメです。