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打海文三『灰姫 鏡の国のスパイ』

2009-01-03 16:06:42 | ノンジャンル
 大晦日の紅白歌合戦のミスチル、見ました。バックの画面では、北京パラリンピックの国枝選手や、中国のハードル選手で故障した人など、今一つ日の当たらなかった人が大きく映し出されていました。さすがミスチル、という感じでした。

 さて、打海文三さんの'93年作品「灰姫 鏡の国のスパイ」を読みました。
 ロシアのウラジオストクで、日本の海外情報調査会社・東亜調査会の社員・蓮見が、拷問を受けた瀕死の状態で発見され、数日後に息を引き取ります。その死因の調査を上司から命令された東亜の社員・小林は、元の同僚や知り合いから事情を聞き出し始め、次のようなことを知ることとなります。
 東亜を創設した丹野は、戦前満州で諜報活動を行ない、その間現地に住む日本人女性と恋に落ち、娘を一人もうけますが、満州軍に娘と離ればなれにされ、日本に帰国します。娘は母の死後、丹野の部下をしていた朝鮮人のキムが預かり、二人は日本に渡りますが、70年代の北の帰国事業に誘われ、娘だけが北へ戻ります。キムは娘と通信を保つために、娘にコードブックを渡しますが、北の実情に幻滅した娘・灰姫は、北の情報部に勤めながらも北の反政府勢力の一員となり、父・キムに北の情報を流します。それを知った丹野は、その情報をCIAに売って商売とするため、東亜調査会を創設します。そして'77年、ユーゴのベオグラードで日本人拉致の仕事をしていた灰姫に丹野とキムは接触し、日本への帰国を説得しますが、灰姫は断り、それ以降コードブックを刷新し、灰姫はキムではなく、東亜の社員・蓮見を通じて情報を流すことにしますが、CIAが灰姫と蓮見が北のスパイではないかと疑い始めたため、東亜は蓮見がCIAのスパイだという偽の情報を北に流し、北に蓮見を処刑させることによって、灰姫が北のスパイであるという疑惑を晴らす策に出たのでした。
 打海さんはこの作品が横溝正史賞優秀作となって、メジャーデビューを飾ったようですが、文体はとても饒舌で、固有名詞もやたらに多く、最初は読むのに疲れ、投げ出したくなりました。内容も「狂熱の季節」といった言い回しで分かるように、変にセンチメンタルで、感情移入しにくく、魅力的な人物が全く出て来ない小説でした。ただ、実際の政治状況を踏まえた、ドラマチックなストーリーには少し惹かれました。打海さんは「裸者と裸者」が割合に面白かったので、この作品を始めとして、一通り読んでみようと思っています。政治サスペンスが好きな方にはオススメかも。