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山田詠美『晩年の子供』

2006-08-13 16:44:32 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は「晩年の子供」です。
 「チューイングガム」で究極の愛を描いてしまった彼女は、その後いろいろな制限を自分に課して、それに挑戦し続けているように思えます。「トラッシュ」では初の長篇、「色彩の息子」には短編の色を先に設定しそれに合う短編を書くこと、そしてこの「晩年の子供」では、すべて主人公を親から独立していない人物にした短編集を書いています。
 全部で8つの短編からなっているのですが、私が特に面白かったのは第四話の「桔梗」と第八話の「ひよこの眼」でした。
 前者では、いろんなものが流れてくる古い家の庭の小川を眺めるのが好きだった7歳の少女が、隣の家まで流れて行ってしまった桔梗の花を隣の若い色の白い女性に拾ってもらいます。その女性は男の人と様々な愛の行為を行いますが、妻子あるその男の人に別れ話を持ち出され、ある日首を吊ってしんでしまう、という話です。
 後者は、転校生の男の子がよくする遠くを見る眼を、どこかで見たことがあると思った中三の女の子は、彼と親しくなり好きになりますが、ある日、彼の眼が以前飼っていて死んでしまったひよこの死の直前の眼と同じであることに気がつきます。そして、その2、3日後に、彼は一家心中にまきこまれて死んでしまう、という話です。
 どちらの話も不思議な色彩を放っていて、これまでの詠美さんの作品には見られない、彼女の新たな面を見たような気がしました。詠美さんの作品では珍品の部類に入る、価値ある作品だと思います。