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授業アンケート(03、木下哲生氏の意見)

2008年08月18日 | サ行
 この欄で、大学の授業評価についての大学の先生と学生との双方の意見を興味深く拝見した。お互いの主張にすれ違いが見られるようなので、私見を述べるとともに、問題点を再度整理しておきたい。

 授業評価は、授業の改善に非常に有効なものである。私は大学が行う授業アンケートに加えて独自に記述式アンケートを行い、それにより毎年授業内容の変更や改定を行っている。

 大学の授業では高度な研究内容を扱うため、「難しすぎる」という声には、説明や資料に常に工夫を加えている。昨年度の授業アンケートでは「リポートの採点基準を明確に示してほしい」という要望があったので、今年度の授業ではそれに対応することにしている。

 教員の意識も教え方も変化している。防衛大では私を含め、授業の達成度に問題がありそうな学生に対する自主的な補講をする教官が増えている。教師の方から手を差し伸べることで、多くの学生に学びのきっかけをつかんでもらおうと努力を重ねているのだ。

 また、近年、防衛大では学校執行部よりシラバス(授業概要)の充実も求められており、講義ごとの内容や扱う教材・資料、テストやリポートの有無、成績評価の対象と割合、学生が研究室を自由に訪ねることができる「オフィスアワー」の時間帯、教員の電話番号やメールアドレスなどを明記することになっている。したがって、学生との約束違反はすぐに露見し、たちまち授業評価に反映されることになる。

 ただ、私自身の経験から言うと、授業評価の最も大きな問題は、匿名性に便乗した学生の悪口と言葉遣いである。「声がうるさい」「聞くに堪えない」「くだらない」「リコールがないのをいいことに学生をしごく」「浅薄な内容」──これらはいずれも私の授業に対する学生の記述である。

 理由や根拠も述べずにこのようなことを書くのは悪意そのものである。教師を尊敬しろとは言わないが、このような切り捨て方には傷つく。私が授業評価を必要だと考えていながらも、決して好きにはなれない理由はこれである。

 もっともこれが私への学生の回答のすべてではない。しかし、無記名である以上、教師は反論の機会がない。「授業評価は記名制にし、成績との相関を考慮して」というこの欄に載った先生の主張は、教員の優位な立場を守ろうというのではなく、そのような一部の学生の態度を理由に、授業評価が行われなくなることをむしろ恐れての意見だろう。

 授業の欠点や問題点を理由つきで誠実に述べてくれるのなら、無記名でも私は構わない。しかし、匿名性に便乗した悪口が私自身の勤務評定の資料として用いられるとしたら、それはちょっと待ってくれ、と言いたくなるのが人情だろう。

 先日の大学生の意見では大学の教員に免許制度がないことが問題の一つとして挙げられていた。だが、大学の教員は論文や他大学での教育実績などの審査を受けて採用され、昇任する。その際には職場の長ら推薦者も必要となる。そのイスは決して安楽なものではないのである。

 大学の教員は、研究面・授業面共に、まじめに自らを高めることを目指している。それを志さない教員は論外である。学生の皆さんも、まずは授業を分かろうと自ら努力した上で、誠実に評価を行ってほしい。

  (朝日、2005年08月12日。きのした・てつお。防衛大学校助教授、日本語学)

     感想

 木下さんは根本前提を誤解しているのではないでしょうか。最後の方で「大学の教員は、研究面・授業面共に、まじめに自らを高めることを目指している。それを志さない教員は論外である」と言っていますが、あたかも「論外教員」が例外かのようです。

 しかし、授業アンケートなどが出てきた背景は「論外教員」が沢山いるどころか多すぎる、という事実なのです。昔から「乞食と大学教授は3日やったら辞められない」と言われてきました。教授職はそれほど楽で旨味のある商売だと思われてきたのです。そして、これはほぼ事実でしょう。

 従って、出発点は「論外教員」がどのくらいいるのかの確認です。それが出来ないなら、自分はそれをどのくらいと推定するのかを述べてから、あれこれ言うべきでしょう。

 私見では、大学教員の2割は精神異常、6割は学力低下教員、1割5分が普通(可もなく不可もなし)、最後の5%が優秀、です。

 つまり、大甘に見ても「論外教員」は2割、厳しく見れば8割だと思います。

 研究について見ると、私見では、准教授は自著が1冊以上必要でしょうし、教授は3冊以上必要でしょう。しかし、この条件を満たしていない教授が沢山います。

 木下さんには自著が1冊(「ことばの探検」)あるようですから、辛くも合格です。

 しかし、防衛大学校のホームページの「教官名簿」欄の名前の色は変わっていません。人間文化学科の「全教官紹介」欄に最低の説明がありますが、これでは情報公開が不十分だと思います。