マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

お知らせ

ながく、牧野紀之の仕事に関心を持っていただき、ありがとうございます。 牧野紀之の近況と仕事の引継ぎ、鶏鳴双書の注文受付方法の変更、ブログの整理についてお知らせします。 本ブログの記事トップにある「マキペディアの読者の皆様へ」をご覧ください。   2024年8月2日 中井浩一、東谷啓吾

御礼

2015年10月22日 | 読者へ

namasteさんへ

 「何なす」のロシア語原文とフランス語訳に付いての私の質問に対してとても好いご教示を下さいまして、ありがとうございます。助かりました。当面のことはこれで十分です。

 しかし、今後のことを考えて、この際、「レーニン三巻選集」のロシア語版とフランス語版を入手できないか、丸善に調べて貰っています。

 なお、私の「教えて下さい」の記事では当該個所を「第4段落の終わりの方」としましたが、間違っていました。「第5段落」が正解です。

 皆さん、ありがとうございます。今後もよろしく。

10月22日、牧野紀之
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お知らせ

2015年10月20日 | 読者へ

 クローチェのLebendiges und Totes in Hegels Philosophie及びその訳書たる『ヘーゲル哲学に於ける生あるものと死せるもの』(吉岡佐太郎訳、批評社、1928年)を、読者のご協力を得て「絶版書誌抄録」の「その他」にアップしました。

 前者は2つに分けて掲載してあります。

 「哲学の広場」→「絶版書誌抄録」→「その他」で入れます。

 2015年10月20日、牧野紀之
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

教えて下さい

2015年10月19日 | 読者へ

 今、「スーパー誤訳」というのを整理しています。これは「根本的な大問題で、内容の無理解」と結びつく程の大誤訳のことです。

レーニンの『何を為すべきか』の第1章(教条主義と「批判の自由」)の第1節(「批判の自由」とはなにか?)の第4段落の終わりの方に、国民文庫の和訳では「ところで、社会主義が全世界の面前でこのようにかぎりなく屈辱をこうむり、自分をはずかしめ、労働者大衆──われわれの勝利を確保することのできる唯一の土台であるもの──の社会主義的意識を堕落させたことに対する代償は、貧弱な改良の鳴り物入りの計画案であるが、その貧弱なことといったら、ブルジョア諸政府からさえそれ以上のものを獲得できたほどである!」となっている個所があります。問題は下線部の訳なのです。この和訳は「スーパー誤訳」だと思います。拙著『ヘーゲルからレーニンへ』の73頁以下に既に書きました。

 教えて欲しいのはこの個所のロシア語原文(下線部だけでなく、上に引いた部分全体)と出来れば仏訳です。原典を持っていたはずなのですが、見当たらないのです。仏訳の「レーニン選集」は初めから持っていません。
 
 独訳・Und als Entgelt für diese unsagbare Erniedrigung und Selbstbespeiung des Sozialismus vor der ganzen Welt, für die Korrumpierung des sozialistische Bewußtseins der Arbeitermassen ― das die einzige Grundlage ist, die uns den Sieg verbürgen kann ―, das Entgeld dafür gross aufgemachte Projekte armseliger Reformen, armseliger noch als das, was unter bürgerlichen Regierungen schon errungen werden konnte!

 独訳は正しく訳しています。

 英訳・And the reward for this utter humiliation and self-degradation of socialism in the face of the whole world, for the corruption of the socialist consciousness of the working masses ― the only basis that can guarantee our victory ― the reward for this is pompous projekts for miserable reforms, so miserable in fact that much more has been obtained from bourgeois governments!

 英語の名詞には格がないので、決定的なことは言えません。

 要するに、「我々の勝利を保障する唯一の土台(基礎)は「労働者大衆」(和訳)なのか、「労働者大衆の社会主義的意識」(独訳)なのか、ということが問題です。

 よろしくお願いします。

2015年10月19日、牧野紀之

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出所者の自立支援施設

2015年10月16日 | ハ行

 罪をつぐない、新しい人生を踏み出そうとする人たちの支援に、農業が一役かっている。就農につなげて自立させ、再犯を防ぐのが狙いだが、心の面でも良い効果があるという。

 茨城県郊外の畑で、雑草むしりに汗を流す男性たちがいた。刑務所を仮釈放され、保護観察中の人たちだ。茨城県ひたちなか市の「茨城就業支援センター」で共同生活を送り、農業訓練生として作業する。

 「地道にやれば返ってくる仕事。達成感がある」。30代の男性は、強盗罪で4年近く刑務所に収容された。「飽き性だったけど、我慢強くなった」という。

 同センターは国の事業で2009年に、水戸保護観察所ひたちなか駐在官事務所内に設けられた。仮釈放された成人男性の社会復帰を支援し、再犯防止につなげるのが狙いだ。「犯罪白書」(2012年)によると、保護観察中の再犯率は、職に就いていた人が7・4%だったのに対し、無職は36・3%だった。

 センターで6ヵ月間受け入れ、野菜の栽培や収穫方法、出荷などについて教える。宿泊費や食費、訓練費は不要。12人の定員に対し、年間約80人が入所を希望するため、自立意欲の高い人たちを優先する。約90人が訓練を受け、6割近くが就農したという。

 大日向秀文統括保護観察官は「自然に触れながら日々の仕事をやり遂げるうちに自信がつき、態度に落ち着きが出てくる」と、「農業効果」を説明する。Tシャツ姿で作業していた20代の男性は「社会に迷惑をかけた分、今度は自分の力を役立てたい」と話す。約3年刑に服した。訓練を終えたら、地元で農業関係の仕事に就きたいという。「腰の高さだったトマトが背丈を越すまで成長し、収穫してお金になる。目に見えて形になることにやりがいを感じる」

「いかに素直になれるか」

 野菜農家の近沢行拝さんは、これまでに約90人の農業訓練生を指導してきた。就農しても1週間でやめてしまう人もいれば、独立した人もいる。「違いは、いかに素直になれるかどうか」という。他人に対して心を閉ざしがちな訓練生が多いという。

 近沢さんは「農業は自分で考え、動き、初めて成果が出る仕事。気付いた人はガラッと変わる。自分の生き方ができる人が、少しでも増えて欲しい」と話す。

 駒沢大学の桐原宏行教授(社会福祉学)は2014年から、各地で農業訓練を受けた出所者から聞き取り、効果を調べている。まだ調査数は少ないが、訓練後は、自分から社会との関わりを持とうとし、人間関係への不満感も軽減されている傾向があるという。桐原教授は「少なくとも出所後の不安定な時期において、農業は社会復帰の契機としての有効性がある」と話している。(岡田昇)
 
 「人の心安足させる力ある」

 NPO法人「農スクール」(横浜市)は、神奈川県藤沢市でホームレス向けの体験農園を運営する。週1回、畑でジャガイモやニンジンなどを育てる。最初は人付き合いが苦手でうまく話せない人が多いという。小島希世子代表は「野菜を育てた達成感で自信を取り戻し、積極的に人と関われるようになる人が増えた」と話す。参加者の3割が農業法人や土木関係の仕事に就いたという。

 石川県加賀市の一般社団法人「百笑(ひゃくしょう)の郷」は3年ほど前から、農作業を通じて引きこもりに悩む若者の社会復帰を支える。林昌則代表は「心が疲れている時には土に触れて体を動かすと元気が出やすい」と話す。

 農林水産省の担当者は「農業には人の心を安定させる力かある。こうした取り組みを通じて農業の担い手不足解消にも期待したい」と話す。(渡辺洋介)

  (朝日、2015年10月10日、夕刊)

  感想

なぜこういう施設や取り組みが全ての都道府県に無いのでしょうか。その方が異常だと思います。農業だけでなく、牧畜も有意義だと思います。所内で「高度な工芸品」を作って、通販とかで売り出している所もあるとか、先日の新聞に出ていました。とにかく、出所者を世の中に放り出して「自分で職を探せ」は酷すぎると思います。だから、折角立ち直ろうと思って出所した人が、生活に困って、「又刑務所に入りたい」と思って犯罪を犯すという悲しい例が絶えないのだと思います。

 予防は治療の10倍の価値を持つ。これは全ての分野で言えるでしょう。老人の施設や診療所でも、インフル対策に乾布摩擦とか交代浴(温冷浴)を励行するようにしたら、大いに効果があると思います。ワクチンより費用対効果で上だと思います。

 この記事のような施設でも、お金は掛かるでしょうが、これで再犯率が下がれば経費が少なくなると思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

活動報告、2015年10月15日

2015年10月15日 | カ行

 未知谷版『小論理学』に付ける付録の中の中心的な論文の準備をしています。この本はヘーゲルを理解するに最も適当なものですし、人気もありますので、それに相応しい論文を書こうと思っています。題名は、最初は「哲学書を哲学的に読む」としようと考えていましたが、今では「ヘーゲルを活かす」でどうかな、などと考えています。

 精神現象学関係では、やはり金子武蔵の『ヘーゲルの精神現象学』を取り上げるのが適当と判断しました。その「現象学の目的」と「現象学の方法」が手掛かりとして適当だからです。ずいぶん新しい事に気付きました。ゆっくりやるのは好いものだな、と思いました。

 その内の1つは、金子は「現象学の目的」として、ヘーゲルの思想的成長過程における「現象学」の意義、狭義のヘーゲルにとっての意義しか考えていないという事です。当たり前じゃないか、と思うかもしれません。しかし、人が本を公刊する場合、売って印税を稼ぐという学問外の「目的」は言わないとしても、読者に読んでもらって考えて貰いたいという「目的」があると思います。逆に言うと、読者はどういう「目的」をもってこの本を読むかということです。これを検討しなくて好いのでしょうか。これこそ最も大切なことでしょうに。

 もう1つは、私は、意識が自分に「絶望」する事を介して上の段階に進むという事の意義、つまり「絶望の意義」を全然考えていなかった事に気づきました。大反省をしました。教師は、生徒に「絶望」させなければならない、という事に気付いていなかったことを反省したのです。

これと関連しますが、全ての人が絶対知に達する訳ではないのは自明でしょうが、実際には、あたかも全ての人が絶対知に達するかのように書かれているのではないでしょうか。では、途中で終わる人はなぜそうなるのでしょうか。金子自身は、自分は絶対知に達していたと思っていたのでしょうか。その証拠は何処にあるのでしょうか。金子は私の論文(日本哲学会の機関誌に載った「ヘーゲルにおける意識の自己吟味の論理」)をなぜ無視したのでしょうか。「絶望」を恐れたからではないでしょうか。詳しくはいずれ出たら読んで下さい。

 続いて、許萬元の処女論文「ヘーゲルにおける概念的把握の論理」を又々読み返しています。今回はかなりの「未熟さ」に気付きました。評注を付けるか、あるいは「改作」にしようかと考えながら読んでいます。現時点では、評注と改作との2本建てにする方向に傾いています。

読んでは考え、又読んでは考え、と少しずつ進むのが私のやりかたです。「鈍足のマラションランナー」が「牛歩のマラソンランナー」に成ってきましたが、前進はしています。今後もよろしく。

2015年10月15日、牧野紀之

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「能力不足」職員の分限免職

2015年10月05日 | カ行

 大阪市、職員条例を適用 大阪市は9月30日、指導や研修を重ねても仕事上のミスが改善されないとして、職員2人を民間の解雇にあたる「分限免職」にしたと発表した。橋下徹市長の主導で制定された職員基本条例の処分要綱に基づく分限処分は初めて。不祥事での懲戒処分などが理由の分限免職ではなく、「能力不足」での免職は異例だ。

 市によると2人は、都市整備局の男性職員(43)と港湾局の男性職員(33)。パソコンでの数字の入力間違いなど初歩的なミスを繰り返したり、昼休みの時間を守らないなどの問題があったとされ、5段階の人事評価で2013年度から2年連続で最下位の区分だった。

指導してきたが改善がみられなかったとしている。港湾局の女性職員(46)も上司への報告を行わないなどの問題があるとして条例に基づき、降任処分とした。

 条例では、人事評価で最下位区分(全体の5%)が2年続いた職員らを対象に、職場での3ヵ月間の指導▽処分の可能性を伝える警告書の交付や1ヵ月の指導観察──などを段階的に実施。その上で仕事上の問題が改善されなければ分限処分にすると定める。

  感想

 基本的には「分限処分」に賛成です。実際、無気力公務員はどうしようもありません。段階を追った慎重な対処をした上ならば、分限処分をするべきです。実情から見て、それは少な過ぎる位だと思います。

 この事は特に教師(校長などの行政職を含む)について言えると思います。教師については「分限処分」の基準を厳しくするべきだと思います。

 教師については「降格」は何を意味するのか知りませんが、一般行政職に移らせる事を考えるべきだと思います。この道がないから、処分がしにくいのだと思います。とにかく、無能教師で被害を受けている生徒が沢山いるという事実を重く受け止めるべきです。

 更に問題なのは校長です。優秀な先生が校長に成りたがらないようです。そのため、年俸1000万円超で仕事は部下に丸投げの消化試合校長が沢山生まれているのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米核開発と先住民 切り捨てられた側の叫び

2015年10月03日 | ア行

                明治大学教授〔地理学〕、石山 徳子(のりこ)

 70回目の広島原爆の日を、米西部ワシントン州を流れるコロンビア川沿いの町リッチランドで迎えた。原爆開発を推進したマンハッタン計画の拠点の1つで、第2次世界大戦中から冷戦期にかけてプルトニウムを生産し続けたハンフォード・サイトに接している。地元レストランには「プルトニウム」「半減期」「ガイガーカウンター」という名の地ビールが並び、公立高のスポ-ツチームの名は「リッチランド爆撃機」、マスコットはキノコ雲だ。砂漠の田舎町は核開発の歴史で重要な役割を果たすと同時に、経済的な恩恵にも浴し、これを誇りにしてきた。

 長崎原爆の原料を生み出したB原子炉を、米国人観光客とともに見学した。見学前に流される映像資料は、原爆投下が第2次大戦の終結を導いたという定説を強調。ガイドは当時の先端的な科学技術と関係者たちの愛国心をたたえ、キノコ雲の下の惨禍に触れることはなかった。

 見えなくされているのは被爆者の辛苦だけでなく、同サイトが世界最大級の核汚染の現場であり、周辺地域に健康不安を与えてきたという「不都合な真実」だ。この場所には1949年のグリーン・ラン実験で大気中に大量の放射性物質を故意に放出し、70年代初めまで原子炉の冷却水を川に垂れ流したという歴史がある。今も放射性廃棄物貯蔵・処理施設の設計上の不備などが懸念されるなかで、除染作業が続いている。

 マンハッタン計画の開始時に強制過去にあい、今は同サイト上流の集落に住む先住民族ワナパムのリーダー、レックス・バック氏に会った。核開発の前線に置かれた彼らは国家権力による土地の収奪、生活基盤の喪失、社会・文化・環境の破壊との闘いを強いられた。バック氏は「私たちは全てを失ったが、ここを離れるという選択肢はありません。土地とのつながりを回復し、生き抜かなければならないのです」と語る。ワナパムは川の下流や支流沿いに住む他の部族とともに、除染とその後の長期管理計画に関わるべく連邦エネルギー省と交渉を重ねている。

 米国の核開発の現場、すなわちウラン鉱山、核実験場、高レベル放射性廃棄物の永久処分場や中間貯蔵施設の候補地の大半もまた、先住民族の歴史的生活圏と重なる。国の安全保障を掲げた核開発計画と関連産業は、国家によって切り捨て可能とされた社会的弱者や、周縁化された土地の存在があったからこそ成立したともいえよう。先住民の多くは汚染現場を昔の環境に戻し、奪われた土地を返してほしいと訴えている。その声は、核開発と民主主義がそもそも共存しえるのか、という根本的な問いかけのように聞こえる。
  (朝日、2015年09月17日。私の視点欄)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする