「その後」の説明
ブログ前号で私の意見は今までにない反響でした。ありがとうございます。
その後、私はその「暗唱主義」のための教科書にもなれば、独習の参考書ともなる小冊子の執筆にかかりました。これを「星の王子さま」の独訳を使って作っているのです。最初の三つの節だけにするつもりですが、そこだけでも文法的な問題が結構出てきて、英訳や仏原典を見る必要に迫られた箇所がいくつかあります。時にはこれまでの和訳も見てみました。そうしたら何となく疑問を感じた所があるだけでなく、明らかに「誤訳」と言わざるをえないものもあることに気づきましました。
一番ひどいのは第2節で「僕」が「王子」の言葉で起こされて、「えっ?なんとおっしゃいました?」と聞いて、王子が再度「羊を描いてください」と言うのを聞いて、びっくりしてとびあがる場面です。
岩波少年文庫(内藤訳)は「なん度も眼をこすりました。あたりを見回しました」と訳していますが、この「あたり
見回しました」が完全な誤訳なのです。
同じ間違いを、いずれ文化勲章を受けることが確実と思われる池澤夏樹も集英社文庫の中で犯しています。これはとても意外でした。
そもそも「見回す」という動作は音声を発した主体は誰か、あるいは何かが分かっていない時に、その主体を眼で探す時に使うものだと思います。「えっ、何とおっしゃいました?」と聞き返すのは発生主体を見て、意味ではなく言葉を確かめる問いですから、今は発生主体自身は眼で捉えているるのです。この状況が分かっていたら「見回す」という訳は出てこないでしょう。
仏原文は j' ai bien regardeですから bien の意味を詳しく考えないで素直に訳すなら「よくよく見た」(管啓次郎約訳、角川文庫)とか「しっかり見た」くらいが穏当でしょう。
しかし、ここでは私は独訳の genau hingeschaut に感心しました。日本語にすれば「ジーと見た」です。説明はここでは省きます。これは多分関口文法の不定冠詞論のなかにしか書かれていないとおもいます。英文学者にも仏文学者にも関口文法の勉強をおすすめする所以です。
またまた興奮して脱線がひどくなりました。
要するに、私は「星から来た王子」を全部訳すことにしたのです。ということは、「許萬元のへーゲル研究」の出版はさらに先になった
ということです。すみません。
しかし、この間に、最新のコピー機は2萬円前後で買えることを知って、購入しました。まだ「使いこなしている」とはいえませんが、近所の方々の応援を得てがんばっています。