マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

朝日新聞のジャーナリズム(その2)

2016年08月23日 | ア行

1、朝日、静岡版。2016年07月25日の記事

──完工の防潮堤に植樹。浜松・篠原工区で園児ら

 県と浜松市が遠州灘沿岸の浜松市域に造っている防潮堤のうち、篠原工区の本体工事の完工報告会と記念イベントが24日、現地であった。県や市、それに県に300億円を寄付した一条工務店グループの幹部らが出席。小学生やこども園の園児らと、堤にクロマツの苗木を植えた。

 県と浜松市は寄付などを元に、天竜川河口から浜名湖の今切口までの17・5㌔を四つの工区に分け、標高13㍍の防潮堤を造っている。そのうち、南区と西区にまたがる篠原工区は最初に工事が始まり、5月までに4・5㌔で本体工事が終了。まだ1㌔弱残っているが、大どころが終わったため、市民の防潮堤に対する関心を高めるべく報告会を開いたという。

 保安林伐採などに時間を要し、他の工区も含む全体の工事は遅れており、県の担当者は「2020年3月の完成を目指す」と話した。

 2、牧野の感想

 これを一言で評するならば、「事実ではあるが、真実ではない記事の見本」ということになると思います。

 この事業はもともと「津波の被害を防ぐ、あるいは軽減するための対策をしなければならない」という考えが前提となっていたと思います。

 そこに一条工務店が300億円の寄付を申し出てくれたわけです。そのために、この金をどう使うかという問題に具体化されたのです。

 その時、県知事や浜松市長にとっては「巨大防潮堤で津波を抑え込むのは当然」だったようです。そのため、どの程度の巨大防潮堤をどうやって作るかだけが問題になったのです。それ以外の方法は検討もされなかったようです。

 結局、クロマツを主とする「保安林」を一部削って、海岸沿いに巨大防潮堤を作ることになったのです。

 しかし、人々の頭の中には「クロマツ防潮林」信仰が残っています。また、他の一部の市民の中には宮脇昭の「その土地の潜在植生の混植・密植こそが最良の方法」という説を信奉している人も少なからずいます。

 私には好くは分からない経過を経て、上記の巨大防潮堤の北側の裾に幅1メートルくらいの「防潮林」を植えても好いことになりました。行政派はクロマツを植えることになりました。上の記事で紹介されているのはその活動の一環です。

 宮脇派は行政の許可を得た限りで、広葉樹の混植・密植を着々と進めています。巨大防潮堤の裾だけでなく、そこから百メートルくらい北側に前からある「小さな防潮堤」の上(裾ではありません。「上」です)にも植えています。

 朝日新聞と中日新聞は行政派の「クロマツ植樹」の時だけ切れ切れですが、報道しています。静岡新聞は6月13日の宮脇派の植樹活動を報道しました。

 事態の全体像が分かるような「真の報道」は今の所どこにもないようです。

関連項目

朝日新聞のジャーナリズム
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和食文化

2016年08月16日 | ワ行

 1、朝日新聞の記事

5月10日、東京・銀座の日本料理店「銀座小十」。全8席のカウンターに9人の客が座っていた。「5月は春でしょうか。初夏でしょうか」と、店主の奥田透さん(46)が問いかけた。悩む客たち。

 「私は、その両方だと思います。春から夏へ変わる季節をどう表現するか。献立に最も悩むのが5月なんです」と奥田さんは言い、前菜にあたる「先八寸」を並べ始めた。

 端午の節句にちなみ、ショウブや青モミジの葉を散らした漆塗りのお盆。初ガツオのたたき、蒸しアワビと焼きなすのあんかけ、鯛のちまきずし、稚鮎のから揚げ、うすい豆の茶わん蒸しが並ぶ。

 ミシュランガイドで最高の三つ星を7年連続で獲得した同店。通常のランチはコースで2万1600円だが、この日は別。なぜならこれは、「授業」だからだ。

 奥田さんは、今春開校した「東京すし和食調理専門学校」(東京都世田谷区)の教育顧問を務める。客は料理人を目指す生徒たち。授業の一環で食事体験に来たのだ。

 なぜショウブの葉を使うのか。ちまきを食す理由は。奥田さんは、2000年以上前の中国の歴史をひもとき解説した。「料理だけでなく、食材や器、一つ一つに意味がこめられている。和食の奥深さに改めて気づいた」。生徒の岩野匡晃さん(18)は語った。

 この学校は、和食とすしに特化し、国の認可を受けた全国初の調理専門学校だ。設立の背景には危機感があった。近年、調理専門学校ではフランス料理やイタリア料理、製菓の履修者が大半で、和食は少数派なのだと渡辺勝校長(58)は話す。

 同じく和食文化の継承に危機感を抱いていた奥田さんや、ミシュラン三つ星のすし店「鮨よしたけ」の吉武正博さんら、第一線のプロとカリキュラムを考案。調理実習や栄養学などの授業のほか、日本酒や和包丁、和食器を学ぶ実習、市場見学、漁業体験研修なども盛り込んだ。

 「国籍や世代を問わず、内外で活躍する料理人を育てたい」と渡辺校長。1期生49人の年齢は18~46歳、国籍は中国、ベトナム、モンゴルと多岐にわたる。

 調理実習も「即戦力を育てる」ことにこだわる。「このつみれ、上品に食べるには大き過ぎるよ」。5月13日、煮物の調理で、専任講師の長谷川哲也さん(41)から厳しい一言が飛んだ。

 使った後、調理台に放置された布巾。ランチョンマットの上での、鍋から皿への盛りつけ。長谷川さんは、NGな場面を見つけるたびに注意を繰り返した。

 韓国・釜山のホテルの日本料理店で勤務経験がある韓国出身の金完圭さん(31)は「職場では先輩を見て学ぶだけだったが、なぜそうするのか、理論的に分かるようになった」。

 卒業生の受け入れ予定がある料亭「分とく山」(東京都港区)の野崎洋光さん(63)は「知的好奇心やクリエーター意識を持ち、お客様に『この人の料理を食べたい』と思われる人を採りたい」とエールを送る。

 ★1 京都の大学、学科新設

 和食文化は、料理人だけでは守れない。伝統野菜をブランド化して販路を開拓するビジネス人材、日本料理店の海外出店を手がけるプロデューサー、食文化の歴史を考える研究者──。こうした人材を育てようと、京都府立大(築山崇学長)は2019年春にも和食文化の学科を設ける。

 和食の総本山とも言える京都に和食文化を学べる高等教育機関がなかったのは意外に思えるが、「食は日常の営みであり、学問の研究対象にはなりにくいと受け止められてきたのでしょう」と、同大京都和食文化研究センター・和食学科準備担当課の福原早苗課長は分析する。

 新学科のカリキュラム編成に向け、昨年度から「和食の文化と科学」と名付けたプログラムを開講している。今年度は「和食文化論」「フードビジネス論」など約30科目を開講。一部は京都工芸繊維大や京都府立医科大と単位互換でき、履修者は3校で計1200人にのばる。(前田育穂)

 ★2 東京すし和食調理専門学校数育顧問・奥田透さんの話

 ワインに詳しい日本人はたくさんいます。では、毎日飲むお茶がどこでどう作られ、どうすればおいしくいれられるか、きちんと知っている人はどのくらいいるでしょうか。習う機会がないのは、教育の問題だと思います。

 日本はこれから人口がどんどん減る。和食文化を守り、伝えていかなければ、いずれは廃れてしまいます。影響は食材の生産者や料理人だけでなく、食器やのれん、日本建築など、和食を取り巻く様々な伝統産業にも及びます。

 日本の文化を知れば、好きになり、伝えたくなるはず。そんな気概を持った料理人を目指して欲しいです。

 ★3 漬物・みそ汁、減る頻度

 家庭の献立も、和食離れが進む。首都圏の約1000世帯の食事データを30年以上分析している調査会社「マーケテイング・リサーチ・サービス」のMRSメニューセンサスによると、1日3食の献立に漬物が登場する頻度は、1979年は100世帯あたり148回だったが、2012年には66回に。みそ汁も、94回から51回に減った。

 和食離れを食い止めるには、幼い頃から親しむことが欠かせないと指摘するのは、味の素広報部の焼石健久さんだ。「人は年齢を重ねても、食べ慣れた献立を好む。和食好きにするには、家庭や学校など、様々な場所での取り組みが欠かせない」と語る。

 (以上、朝日、2016年05月29日)

2、牧野の感想

 遅きに失した感はありますが、ともかくこういう動きの出てきたことは喜ぶべき事でしょう。

 給食のあり方の再検討とか大学の学食の再検討も必要でしょう。

 お茶にしても、「お茶の淹れ方」の講習などでは「煎茶」、それも「高級煎茶」の淹れ方の講習がほとんどだと思います。私見では、番茶についての講習の方が先だと思います。いや、二者択一ではなく、お茶の講習では両方をやると好いと思います。
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