黒磯北中事件についてはもう1つ考えるべき事があります。
この事件では、その後、殺された女教師の夫君(この人も教師)が、市(黒磯市?)に対して、「安全対策を怠った」として損害賠償を求める裁判を起こしました。結局、市がその非を認めて、2000万か3000万円くらいの慰謝料を支払うということで和解したはずです。
私はこの裁判とその結末を、報道されただけ読んでいましたが、少し違うのではないかなと思っていました。というのは、訴えた夫君は、訴えやすい相手を選んで訴え、市は1日も早く終わらせたかったので金を払った、と思えたからです。
逆に言いますと、絶対に必要だったことが、つまりなぜこうなったかの失敗学にもとづいて、誰に何%の責任があったかという分析が、結局なされなかったからです。交通事故ではこれが行なわれているのに、学校での犯罪ではなぜこれが行なわれないのでしょうか。
私の知るかぎりでは、誰もこれを問題にしなかったようです。校長はダンマリで押し通し、新聞もジャーナリストも、誰もその分析をしようとしなかったのです。
先日、愛知県知立(ちりゅう)市の知立中学の卒業生(現在18歳のフリーター)が、中2の時の担任の「指導」に恨みを持って、その担任を殺意を持ってナイフで刺すという事件がありました。幸い、死には到りませんでしたが、大怪我をしたようです。
又、北海道の稚内市の高校2年生が、学校で3時間も説教されて、停学処分を受けた時、「お前は死に値する」と言われた、停学処分は重すぎる、と書き残して、自殺しました。学校は、「そんな事は言っていない」と主張していますが、証拠はありません。
確かに、ナイフで刺すという報復は認められませんし、自殺は気の毒です。しかし、それらの元に「教師の指導」の問題(それが不法でなかったかの問題)があります。
もちろん、その「指導」の対象となった行為も問題です。稚内の高校2年生の場合は、その子が同級生についてネットの掲示板か何かに、それこそ「死ね」とか書き込んだことが問題だったようです。これは確かに問題です。
しかし、だからといって、教師ないし学校の「指導」や「説教」がそれで全て認められるというわけでもありません。3時間もの「監禁」状態での説教は人権侵害でしょう。どこかの政党の「査問」とやらも同じです。
何か、いつも生徒の方ばかり問題視されるような感じです。それはやはり違うと思います。私見では、教師と生徒の間に問題が起きた場合、8割は教師側に問題があるのが普通だと思います。
関係する事柄を全て考慮して分析し、それぞれの行為にどの程度の責任があるかを考えなければならないでしょう。これをしないでうやむやにして済ましている限り、同じ問題はいつまでも形を変えて起きるでしょう。