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盤洲干潟(ばんずひがた)

2008年08月19日 | ハ行
 葦原を抜けると、眼前に干潟が広がる。洗濯板のように砂浜が波打つ。自然が織りなす芸術だ。

 千葉県木更津市の小櫃(おびつ)川河口の盤洲(ばんず)干潟。1400ヘクタールの広さは東京湾最大で、国内でも最大級だ。絶滅危惧種の渡り鳥コアジサシが飛来し、キイロホソゴミムシが生息する。

 8月初旬、大潮の日に干潟を訪れた。潮が引いた砂浜によく目をこらすと数ミリの小さな穴が無数に開いている。そこから、小指の爪の先ぐらいのはさみが手招きしている。チゴガニだ。

 「カニや貝が汚れた東京湾の掃除を引き受けてくれる。そして干潟の砂が汚水処理場です」と高校理科教諭で小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会の御簾納(みすのう)照雄事務局長(59)。

 「戦後間もない頃まで、白砂青松の楽園だった」。かつての網元で「盤洲干潟の防人」の名で知られる桐谷新三さん(81)は言う。だが、戦後しばらくすると付近に製鉄所や化学工場ができ環境は激変。砂浜沿いの松林は枯れ、特産のノリの生産量も減っていった。

 1997年には東京湾アクアラインが完成。橋は、干潟を分断するように架けられた。「これで潮の流れが変わってしまった」と桐谷さんらは言う。

 これまで干潟だったところに水が無くなって葦原となり、別の場所では砂浜が削られていく。潮位の変化も激しくなり、かつて海辺に群生していたハママツナも姿を消しっつある。

 干潟に目をこらすと、アサリの稚貝の死骸が無数に浮き上がり、海岸を白く覆う。さらに、アオサが無数に浜辺に打ち上げられ、腐臭を放っていた。

 小櫃川上流一帯の山砂採取や産廃処分場~。干潟を取り巻く問題は枚挙にいとまがない。干潟を守る連絡会は、ラムサール条約登録を目指し、環境省に申し入れ活動を続けている。

 「盤洲干潟は守るすべのない裸の状態。何らかの保護規制をかけないと」と御簾納さんは力を込める。

 08月17日には、一般向けの観察会を開く。申し込みと問い合わせは、守る会事務局(0439・27・2245)へ。

  (朝日、2008年08月13日。坪谷英紀)