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群馬県(01、実力)

2008年08月30日 | カ行
 東京を出た上越・長野新幹線が群馬県にさしかかる頃、広大な関東平野の北西端が見えてくる。その先には上越国境の大山塊。ここへの降雪が利根川を下り、世界最大の都市集積・首都圏の生活を支えている。

 東京台頭のはるか昔、上代から関東へのメーンルートだった碓氷峠の麓の当地こそ東国の最先進地域だった。江戸時代より盛行した養蚕から、明治期に製糸や紡職が発達。繊維機械関係の技術力が戦前の中島飛行機、戦後の富士重工業を生んだ。人口当たり工業出荷額は、東日本では栃木(全国5位)に次ぐ(7位)。

 古代よりの馬産地としての伝統か、「かかあ天下」と称される女性自立の気風からか人口当たり自動車保有率86%(2006年度)、運転免許保有率69%は全国一。早くからの車社会化が、ヤマダ電機、カインズ、ベイシアなど、郊外立地型量販チェーンの雄を生んだ。他方で、人口当たりガソリン販売量の多さ(2位)が家計を圧迫、人口当たり交通事故死傷者数も多い(2位)。中心市街地の解体が進み、個性のない郊外景観ばかり目立つのも残念だ。

 県文化再生の動きはしかし、草の根から立ち上がっている。からっ風吹く年末のある夜、高崎市の群馬音楽センター。何百人もの市民が、心と声を一つに練習する光景に心が温まる。伴奏は、市民オーケストラとして発祥し、音楽文化の旗手へと成長した群馬交響楽団。恒例の「第九」の大合唱だ。スポーツではサッカーJ2の「ザスパ草津」。
人口8000人の草津温泉から育ち、カインズ、ベイシアなど地元企業の支援も得て、今季は健闘が目立つ。

 進取の気性を失わない先進地域の将来はどうか。

  (朝日、2008年08月09日。
  地域経済アナリスト・藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)