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三重県(01、実力)

2008年08月14日 | マ行
 東海道線も新幹線も名神高速道路も三重県を通らなかった。だが、古来の東海道が通っていたのはこっちだ。現在では5本の高速道路が四通八達、日本の東西物流は距離の短い当県経由が主流となりつつある。

 とりわけ亀山市から奈良県天理市までの70㌔を無料の4車線自動車専用道路(名阪国道)が結ぶのは強みだ。天理市に拠点を置くシャープが、亀山市に液晶工場を新設したのはその効果の象徴でもある。

 電機に限らず、自動車、化学などの発展も著しい。1990~2005年度の工業出荷額の伸び率26%は大分に次いで全国2位。2005年度の人口当たり工業出荷額も愛知に次いで2位と、日本屈指の工業県に成長した。

 だが、最新鋭で生産性の高い、つまり人をあまり雇わないエ場が多いため、工業従業者数は最近期でも微増にとどまっている。1990~2005年度で見れば1.5%の減少だ。新設工場の近隣にも飲み屋街などは見当たらず、四日市、津以下の県内都市では軒並み、市街地の空洞化が進んでいる。

 鳥羽の小さな老舗旅館。若おかみが目の前の炭火で焼いてくれたイセエビのすり身をいただいて、本場の本物には底知れぬうまみ成分が凝縮していることを知った。彼女が仲間と始めたエコツアーガイドの会社は離島で海や島民の人情に触れるコースが人気となり、年々急成長している。

 当県の面積に占める自然公園の比率35%は全国3位。滝原宮や熊野古道な幽邃な自然と歴史が交感するスポットも多い。あわびに松阪牛と高級食材の宝庫でもある。これらを若い人にもっと活用してもらい、街並みや観光産業を再生できれば、2本目の柱が立つのだが。

  (朝日、2008年07月26日。
  地域経済アナリスト・藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)