「立春の初雪」
昨日の関東地方に昼過ぎから雪が降った。立春の日の初雪である。気象庁によると強い寒気を伴った気圧の谷が東日本付近を通過した影響らしい。夕方から木々は雪化粧しはじめたが、今朝はいつもと変わりない。雪はどこにも残っていない。昨日の雪は幻のようだ。雪の名歌は多いが、わたしの雪の歌は少ない。歌集『えくぼ』『厚着の王さま』から6首を抄出。
☁ 雪を脱がない山 松井多絵子
めざめれば辺りの緑は消えうせて雪の白さがからだに沁みる
雪の日はひねもすマナーモードにて炬燵をはなれることができない
こんなときもし八本の腕あらば四面に顔があらば、あれかし
雪の日の地下街をめぐりいて思う縄文杉の根のゆく先を
晴れたなら明日は会えないかもしれぬ雪にて作りし「考える人」
まだ雪を脱がない山を引き寄せて引き離してゆく高速バスは
雪国のみなさま 雪は美しく恐ろしいですね。
2月5日 松井多絵子