「太宰治は2月の男」
送られてきた「旅の友」を開くと雪景色、そのなかを走る汽車は津軽鉄道ストーブ列車。車内
はストーブ完備らしい。わたしが津軽を訪ねたのは2004年5月だったので寒くはなかった。
このツアーは羽田から飛行機で秋田へ。鯵ヶ沢温泉に1泊、翌日、十三湖から竜飛崎、そして金木へ。太宰治の生家「斜陽館」を見学したのち津軽鉄道名物・ストーブ列車に乗る。今頃はさぞ寒いだろう。斜陽館に展示されていた太宰治の直筆は五月でも寒そうだった。彼は2月の男か。
斜陽の館 五首 松井多絵子
白い壁、白いテーブルその上のメモには何も書かれていない
読まれないとき本棚の本はみな直立不動、太宰治も
あの冬のきりりと冷えた夜だった『斜陽』の扉をひらいたときは
力なき字にて書かれた原稿が「斜陽の館」に曝されている
われを乗せ金木駅より「メロス号」走れば津軽平野も走る
今夜は東京でも雪が降るかも、寒さが太宰治を私に近づけます。
2月4日 松井多絵子