人間を怖がっている
▲ 目の前の鴉がガバッと飛び立った羽の裏まで真っ黒である 松井多絵子
黒い服は究極のお洒落だ。色とりどりの服のパーティで目立つのは黒いドレスの女、美しく知的に見える。でも私たちは何故かカラスを嫌う。昨日の☀読書欄・売れている本は「カラスの教科書」、著者の松原始は大学院の博士課程までカラス研究を貫いた動物行動学者。
「何もしていないのに急に」襲ってくるイメージを持つ人は多いが、カラスはむしろ人間を怖がっている。巣や雛を狙う敵とみなした人間を威嚇するまでに段階を踏む。「カア、カア」と激しく、とまった枝をくちばしで叩き始め、それでもダメなら頭をかすめるように飛んでみる。ようやく気付いた人間は「急に襲われたとカラスを煙たがる」。
カラスは一生を終えるまでに70個ほどの卵を産むとされるが、繁殖するのはごくわずか。
古い文献に記されたカラスと日本人の蜜月は微笑ましい。私たちはもう少し「カラスの言い分に耳を傾けるべきである」と。
▲ われの持つゴミの袋に鴉らの視線が集う「福袋だぞ」
正月が終わり生ごみの収集日にはカラスが私に寄ってくる、ような気がする。でもカラスに嗅覚がほとんどないそうである。「一撃で獲物を仕留める爪をもっていないので、獲物の首筋を必死につつくなどして殺める。物足りない攻撃力が残虐なイメージを増幅させるという悪循環なのだ」と。この著書をライター・武田砂鉄は面白く紹介している。
「むしろ人間を怖がっている」のはカラスだけでない。犬が吠えるのは人間を怖れている時、熊が人間を食べるのも人間を異常に怖れているからだと聞いたことがある。トランプ大統領が過激な発言を繰り返すのも人間が怖いからかもしれない。本当に怖いのは、沈着冷静、怒ることなく優しい人こそコワイ、などと思うとますます寒くなってくる。
2月6日 松井多絵子
▲ 目の前の鴉がガバッと飛び立った羽の裏まで真っ黒である 松井多絵子
黒い服は究極のお洒落だ。色とりどりの服のパーティで目立つのは黒いドレスの女、美しく知的に見える。でも私たちは何故かカラスを嫌う。昨日の☀読書欄・売れている本は「カラスの教科書」、著者の松原始は大学院の博士課程までカラス研究を貫いた動物行動学者。
「何もしていないのに急に」襲ってくるイメージを持つ人は多いが、カラスはむしろ人間を怖がっている。巣や雛を狙う敵とみなした人間を威嚇するまでに段階を踏む。「カア、カア」と激しく、とまった枝をくちばしで叩き始め、それでもダメなら頭をかすめるように飛んでみる。ようやく気付いた人間は「急に襲われたとカラスを煙たがる」。
カラスは一生を終えるまでに70個ほどの卵を産むとされるが、繁殖するのはごくわずか。
古い文献に記されたカラスと日本人の蜜月は微笑ましい。私たちはもう少し「カラスの言い分に耳を傾けるべきである」と。
▲ われの持つゴミの袋に鴉らの視線が集う「福袋だぞ」
正月が終わり生ごみの収集日にはカラスが私に寄ってくる、ような気がする。でもカラスに嗅覚がほとんどないそうである。「一撃で獲物を仕留める爪をもっていないので、獲物の首筋を必死につつくなどして殺める。物足りない攻撃力が残虐なイメージを増幅させるという悪循環なのだ」と。この著書をライター・武田砂鉄は面白く紹介している。
「むしろ人間を怖がっている」のはカラスだけでない。犬が吠えるのは人間を怖れている時、熊が人間を食べるのも人間を異常に怖れているからだと聞いたことがある。トランプ大統領が過激な発言を繰り返すのも人間が怖いからかもしれない。本当に怖いのは、沈着冷静、怒ることなく優しい人こそコワイ、などと思うとますます寒くなってくる。
2月6日 松井多絵子