えくぼ

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「私の折々のことば」 ②

2017-01-26 09:26:38 | 歌う
         「私の折々のことば」②

 哲学者、鷲田清一さんの朝日1面コラム「折々のことば」にならった作文コンテストで、「朝日中高生新聞賞」の中学部門入賞は★犬塚杏子さん(14歳)大田区立麹谷中2年。

        ☀ 大きくなったねえ
               周りの大人の人たち  犬塚杏子

 「大きくなったねえ」と数カ月会わないだけでも言われる。でも実際にはほとんどのびていない。良くても数㍉だ。だから毎回思う。たいしてのびていないのになあ。人は少し会わないと会った人を昔の記憶とすり替えてしまうようだ。だから、言われると人の記憶っておもしろいなあとおもう。でもおもしろいだけではない。温かい言葉だ。私をきっと小さい頃から見てくれているということの表われだと思う。
 だから、私はこの言葉を大切にしたい。そして大人になったら言ってあげたい。「大きくなったねえ」と。どうしてだろうと思われてもいい。私はあなたの事を見守っているよ。心のなかでそう伝えたい。
 
 ※ わたしも中学生の頃、「大きくなったねえ」と度々言われたことを、この作文を読みながら思い出しました。大きくなるとは成長するということですから、言われたらうれしいですね。「このひとは、私の成長を楽しみしてくれている」と。でも私は「大きくなったねえ」とあまり言わないことに改めて気づきました。たった「ひと言」なのにねえ。
 
「犬塚さんは親戚や親の友人と久しぶりに会うたび「大きくなったねえ」といわれてきた。小学生の頃は身長が伸びるのがうれしくて、ちょっと照れくさいけれどうれしい言葉だった。相変わらず「大きくなったねえ」と言われるので「あれっ」と思っていた。
 現在の身長はおよそ159㌢。自宅の壁には、身長を測るために父親が手作りしてくれた目盛りのついた紙が張ってある。友人が遊びに来ると、測って名前と日付を記憶する。その紙を眺めながら、この言葉が思い浮かんだ。
 親も犬塚さんのいとこたちにこの言葉をかけているし、気がつけば、自分も小さい子供たちに同じ言葉を言うようになっていた。「温かくて、ずっと大切にしたい言葉です」
 
   ✿もっと大きく咲きたかろうに切り取られ葉牡丹は居間にあわき紫

              1月26日 松井多絵子